BBNJ協定とは? 公海を守る世界初のルールで何が変わるのか
この投稿を読むとわかること

2026年1月17日、世界の海の約64パーセントを占める公海に、初めて包括的な国際ルールが生まれました。「国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」と呼ばれるこの条約は、20年以上の交渉を経て発効した歴史的な合意です。何が変わるのか、なぜ重要なのかをグリーンピースの活動の歩みとともにわかりやすく解説します。
「誰のものでもない海」を守る世界で初めてのルール
地球の表面のおよそ7割を覆う広大な海。そのうち、国や地域で管理できるのは、海岸の基線から約370キロ(200海里)以内の排他的経済水域(EEZ)などに限られます。残された世界の海の64パーセントにあたる沖合の海面とその海底(深海底)は「公海」と呼ばれ、法律的にどの国にも属しません。

この誰のものでもない海は、これまで長い間、人間の活動による影響を受け続けてきました。魚を獲り過ぎても、海底を掘り起こしても、汚染しても、それを包括的に止められるはっきりしたルールが存在しなかったからです。
しかし、2026年の1月17日、長い道のりの末、ついに公海を守るための国際的なルール「BBNJ協定」が発効しました。
国連公海等生物多様性協定──BBNJ協定とは
たゆみない努力の末に発効した地球規模の海洋条約は、「国連公海等生物多様性協定(以下、BBNJ協定)」と名付けられました。パリ協定以来の重要な環境法制といえるこの協定によって、批准国は以下の内容について、国際ルールの法的拘束力の下、手続きの仕組みを利用できるようになります。
- 公海・深海底の海洋生物から得られる遺伝資源の研究利用の申告と、その利益の国際的な分かち合い
- 海洋保護区などの特定海域の設置
- 工事や採掘に際しての環境影響評価の実施
- 途上国への海洋調査技術と知識の移転と支援
環境保護の観点で特に注目したいのが、「2. 海洋保護区の設置」で、BBNJ協定の最大の特徴ともいえる内容です。これによって、公海の1パーセント未満にしか適用されてこなかった海洋保護区の対象海域を、国際的な連携で計画的に拡大できるようになります。
注:グリーンピース・ジャパンでは、国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定)の発効以前、正式な条約名が決定するまでの過去の記事やプレスリリース、メールにおいて、「海洋保護条約」などの呼称を使用していましたが、これらは現在のBBNJ協定を指しています。
海洋保護区の拡大──BBNJ協定が変える公海の未来
いま公海は、水産資源の乱獲、プラスチックごみなどによる汚染、気候変動による海水温の上昇や海水の酸性化、深海採掘など、数多くの脅威にさらされています。生態系はバランスを崩し、海洋生物の10パーセント近くはすでに絶滅の危機にあるとされています。
こうした脅威から、公海とそこに生きる生き物たちを守る最も効果的で、科学的に実証された方法が海洋保護区の設置です。BBNJ協定の発効によって、世界で初めて国際的な法的根拠のもと、海洋保護区の設置と拡大ができるようになりました。

グリーンピースが2019年に行なった、イギリスのヨーク大学・オックスフォード大学と1年に及ぶ共同研究によって、保全上重要な場所をつなぐ一定以上の計画的な海洋保護区の設置によって、人為的な影響から野生生物とその生息地を守り、生態系を修復し、海本来の再生力を取り戻すネットワークを構築できることがわかっています**。
5大陸13か国のアーティストが公海保護を祝うアートを公開
BBNJ協定の正式発効を記念して、世界各地でアーティストたちがグリーンピースとコラボレーションし、ストリートアートで海の回復の始まりを祝いました。

グリーンピースによるコーディネートで実現したこのアートプロジェクトでは、スロベニア、オーストリア、フィリピン、メキシコ、モーリシャス、セネガル、ドイツ、オーストラリア、英国、カナダ、オランダ、米国の5大陸13カ国で、海洋保護をテーマにしたストリートアートが続々と公開されています。

日本からも、ドローイングアーティスト村山大明さんによる作品が公開されました。本来、境界線を持たない自然界の一員であることを体感できるような作品づくりを目指す村山さんは、「あらゆる生き物を包み込むその海の壮大さとその重要性を表現したかった」と語ります。
世界中で次々と公開されたアーティスト、先住民族、活動家、地域コミュニティが手がけたカラフルな壁画や、彫刻、キネティックアート(動く作品)などから、一部の作品を以下よりご覧いただけます。






グリーンピース20年の活動──BBNJ協定発効までの歩み
BBNJ協定の発効は、世界の海の30パーセントの保護実現に向けた2030年までのカウントダウンが始まったことを意味します。
グリーンピースはこれまで長年の間、公海の保護を重要な課題として掲げ、国際社会への働きかけを続けてきました。その取り組みは20年以上にわたります。

調査航海や科学者との協働によって、2030年までに世界の海洋の30%を保護することの意義と、「30×30(2030年までに世界の海の30%を保護区にする)」目標が現実に実行可能であることを世界に示し、国連交渉の現場では各国政府に直接働きかけました。世界の500万以上、日本からも1万6千以上の人々がグリーンピースが掲げた「30×30」目標に賛同し署名に参加しています。
国連での協定合意が実現してからも、協定発効の条件である60カ国の批准を一刻も早く実現できるよう世界中の市民と連帯して、各国政府への働きかけを続けました。
年表で振り返る日本での取り組み
日本でも、世界の動きと連携してさまざまな活動を行なってきました。その一部を年表で紹介します。


海を守るために今私たちにできること
海は、炭素を吸収貯蔵し、私たちが吸う酸素の半分を生み出し、気候を調整しています。食糧、エネルギー、生計といった人間にとってなくてはならない恵みをもたらす命綱なのです。
BBNJ協定によって、今、私たちは気候危機を緩和し、生物多様性の崩壊を阻止し、数十億の人々の食料安全保障を高める切り札を手にしています。
2030年までのあとこの切り札を有効に使い、各国の政府の速やかな行動を促し、協定下での最初の海洋保護区設置に向け、具体的な取り決めを進めなければなりません。
あなたの応援で、グリーンピースは海を守るための活動をより大きく、力強く展開することができます。これまでに構築してきた強い国際ネットワークを活かし、迅速かつ計画的な設置の呼びかけ、専門性を活かした提言を行なっていきます。