グリーンピース・ジャパンのデジタル戦略を支える二人のスタッフ、I・SさんとR・Lさん。かつてはIT企業や外資系企業で活躍していた彼女たちが、なぜNGOというフィールドを選び、その専門性をどのように活かしているのか……その軌跡に迫りました。
NGOや社会課題に関心を持ちながらも「自分のスキルがどう活かせるのか」と悩む方に、ぜひ読んでほしいインタビューです。

現在の担当業務について、それぞれ教えてください

I・Sさん(エンゲージメントマネージャー):

現在、ウェブサイト、SNS、メールなど、グリーンピース・ジャパンのデジタルメディア全般の運用管理を統括しています。チームと共に、コンテンツ制作から分析までを一貫して行い、より多くの人たちが環境課題を「自分ごと」として捉えていただくための、効果的な情報発信や仕組み作り(エンゲージメント)が私の役割です。

2025年からは、デジタルでグリーンピースへのサポートを広げることを目指し、R・Lさんをチームに迎え入れて、連携を深めています。

(c)Chiaki Oshima/Greenpeace

R・Lさん(デジタルファンドレイザー):

私はデジタルファンドレイジング*の担当として、オンラインで活動を支えてくださる「支援の輪」を広げる仕事をしています。具体的には、SNS広告で新しく寄付者になってくださる方を募集したり、メールを通じてサポーター皆さまに、さらに一歩踏み込んだご支援をお願いしたりしています。

環境問題やグリーンピースに興味を持ってくださった方が、どのようなきっかけで共感を深め、「寄付」というアクションに踏み出されるのか、その「ジャーニー」を設計し、最適化していく仕事です。I・Sさんのチームが作るエンゲージメントを、活動を継続するための「支援」という目に見える形に繋げるのが私の役割です。

*デジタルファンドレイジング:WebやSNSなどデジタル技術を活用して、活動資金(寄付)を募る仕組みづくりこのこと

これまでのキャリアの中で、現在に活かされている経験はありますか?

I・Sさん:
前職は、IT業界でB2B(法人向けビジネス)のマーケティングに従事していました。そこで「データを見ながら改善していく」「PDCAサイクルを回していく」という経験とスキルは、現在の仕事でとても活かされていると感じます。グリーンピースは世界中に拠点を持つグローバル組織なので、海外の成功事例を日本社会にどう落とし込むかという点でも、前職の経験が活かされています。

R・Lさん:
私は外資系のECプラットフォームを運営する企業でマーケティングに従事していました。業界もマーケティング対象となる規模も前職とNGOは異なりますが、ユーザーがどのような体験をして、どういうふうに納得して行動してくださるのか?という点では、「寄付」というアクションも、ある意味では似ていると思います。前職で培ったA/Bテストや、データを見てユーザーの心理を分析し改善していく手法は、そのまま今の現場で活用できています。

社会課題を意識したきっかけと、入職の決め手を教えてください。

I・Sさん:
ドイツで育った私にとっては、幼い頃から身近に環境問題への意識がありました。大学で日本語と経営学を学んだ縁で日本で就職活動を行うことを決意し、日本のIT企業でマーケティングの仕事に携わってきました。一方でプライベートでは、人種差別やジェンダー、食糧問題などさまざまな社会課題に関心を持ち、独学で学び続けていた中で、これらの課題がすべて環境問題と深く結びついていることに気づきました。大きな転機となったのは『インターセクショナリティ(交差性)*』という概念に出会ったことです。


*複数のアイデンティティ(女性×障害者など)が原因で、差別が複雑に絡み合っている状態。「複合的な生きづらさ」

また、仕事は人生の多くの時間を占めるもの。だからこそ、自分がこれまで培ってきたスキルを、世界をより良くするために使いたいと考えるようになり、転職を意識し始めました。人材紹介会社を通じて出会ったのがグリーンピースの求人で、ビジョンやIDEALという行動方針に深く共感して応募を決めました。

R・Lさん:
学生時代はデジタルマーケティングを勉強し、社会問題や気候変動に関心があったことから、マーケティングとTechの「拡散力」を活かしたいと考え、在学中にプラスチックごみ削減のスタートアップでITチームに加わり経験を積みました。卒業後は、より大きな組織でこそ社会を変える力も大きいと思い、外資の大手企業に入社しました。

新卒でありながら、大規模プロジェクトに携われる環境は、とても恵まれていましたが、実務を通して、低コストで「無限の成長」を追う資本主義のサイクルと、持続可能な社会の両立に強い違和感を抱くようになりました。

「何か行動を起こしたい」と考え、友人たちと社会や気候変動課題に取り組むコミュニティを立ち上げたり、ソーシャルセクター向けの人材紹介会社に登録したりする中で、グリーンピースで自分のデジタル・マーケティング経験を活かせるポジションがあることを知り、自分のキャリアと価値観の両方を活かせると感じて入職を決めました。私はフランスで育ちましたが、現地でグリーンピースは誰もが知る有名な団体です。でも、まさか将来、自分がスタッフとして働くことになるとは、夢にも思っていませんでした。

チームとして大切にしている価値観や「支え」になっているものは何でしょうか

I・Sさん:
チームとして重視しているのは、「データ」と「役割分担」です。自分たちの発信に対して、何人が反応を示し、どの程度の寄付につながったのかを客観的なデータとして把握することは大切で、これらを継続的に改善していくことが、結果として大きな数字を動かすことにつながります。また、役割分担を明確にすることで、メンバー同士がより協力しやすくなると考えており、実際にR・Lさんの分析スキルにはとても助けられています。

組織のあり方としては、グリーンピースではJEDIS(正義・多様性・公平性・包摂・安全性)という価値観を非常に大切にしており、多様なバックグラウンドを持つスタッフが、お互いを尊重しながら議論する文化があります。自分とは違う視点を持つ仲間と、国境を越えて連帯しているという感覚が、私にとっては大きな刺激になっています。

R・Lさん:
環境問題のニュースには、胸が苦しくなるようなものも多くあり、一人で向き合っていると孤独を感じてしまうことがありますが、ここには同じ課題に向き合いながら、それをどう変えていこうかと前向きに動いている仲間がいます。これまで重視してきたのは、自分の世界がインスパイアされることでしたが、オフィスに同じ志を持つ同僚がいるという連帯感は、仕事を続ける上での大きな心の支えになっていて、ありがたく感じています。

最近の取り組みで特に印象的だったエピソードを教えてください。

R・Lさん:
デジタルの話ばかりでしたが、実は「オフラインで集まること」の大切さと価値を再認識する機会がありました。
2025年秋に開催したドラッグクイーンとのチャリティイベントでは、会場全体がこれまでにないポジティブな熱量に包まれていました。アートの力を通じて、参加者の方々が私たちの話をスマホも触らずに真剣に聞き、一緒に盛り上がっている。その光景を目の当たりにして「これこそがインパクトなんだ」と圧倒されましたし、私自身、大きなパワーをもらいました。

デジタルは情報を素早く届けるのに欠かせないツールですが、ああやって同じ空間で志を同じくする人たちと場を共にし、直接的な反応を肌で感じることで生まれる連帯感は、何物にも代えがたいなと実感しました。

そして、今の仕事で何よりの支えになっているのは、私の隣にいるI・Sさんのように、心から尊敬できる同僚と出会えたことです。違う専門性を持ちながらも、同じ未来を見据えて一緒に走れる仲間がいる。それは、私にとって一番の財産だと思っています。

I・Sさん:
ありがとうございます。私も、このチャリティイベントにはとても感動しました。みんなが登壇者とともにその場を楽しみ、盛り上げる空気が生まれて、本当に「一体感」のある時間になりましたね。ドラッグクイーンのパフォーマンスを楽しみながらも、アートによる環境保護活動についての真剣に耳を傾け、時に拍手で応援してくださる観客の皆さんの姿は、表現者の努力やアートの力が成せるものだと感じました。

実はこのイベントに、以前からグリーンピース・ジャパンのSNSをフォローしてくださっていたインターナショナルスクールの先生が足を運んでくださいました。デジタルによる発信がきっかけでイベント会場に足を運んでくださり、対面でお話しできたことが、後日の学校への出前講座の実現につながりました。 こうしたつながりから新たなつながりが生まれていくことは、対面イベントならではの醍醐味かもしれないと感じました。 

また、R・Lさんのように志を同じくする仲間と一緒に働けることは、私にとっても日々の大きな支えになっています。

学校への出前講座を実現できたことは、対面イベントならではの醍醐味かもしれないと感じました。

©Kasey Weilnböck / Greenpeace

100年後の未来に向けて、今後の目標や挑戦したいこと

I・Sさん:
デジタルを通じて一人でも多くの人の関心を呼び起こし、それがいつかリアルの場で繋がって、大きなうねりになる。そのきっかけを作り続けたいです。

R・Lさん:
サポーターの方との絆を、デジタルとリアルの両面で深めていきたい。私たちの仕事が、未来に繋がっていると信じて、これからも最高の仲間と一緒に挑戦していきたいです。

【編集後記:採用担当者より】
今回のインタビューで何より印象的だったのは、データという客観的な指標を大切にしながらも、お二人の視線の先にはいつも「人とのつながり」があったことです。
ドイツとフランスという異なる場所で、それぞれの価値観やキャリアを育んできた二人が、東京で出会い、今ではお互いを心から信頼できる仲間と呼び合っている。そんなお二人のやり取りを見ていると、こちらまで温かな気持ちになりました!

互いを尊重しあえる仲間がいれば、一人では想像もできなかったような明るい未来を、きっと一緒に形にしていける。お二人の姿を見て、そんな確かな希望を感じました。