4月1日に施行される「プラスチック新法」。施行を前にすでに様々な解説記事が出ていますが、グリーンピース・ジャパンは、この「プラスチック新法」で本当にプラスチック危機を解決できるのか?に注目し、内容を紐解きながら、主な問題点を説明していきます。

結論からいうと、この法律の対策は、循環をうたった「リサイクル」に偏っており、海洋汚染や気候変動に深刻な影響を及ぼしているプラスチック危機を根本から解決するために必要な「リデュース・リユース」への対策が不十分になる可能性があります。詳しく見ていきましょう。

プラスチック新法とは?

「プラスチック新法」または「プラスチック資源循環促進法」と呼ばれているのは、「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」のことで、去年6月に国会で可決され、今年4月から施行されます。

中心となる考え方は、製造から廃棄までのプラスチックのライフサイクルを通して、プラスチックを資源として循環させようというものです。そして、使い捨てプラスチックを、2030年までに、これまでの努力を含めて累積で25%削減するという目標を「プラスチック資源循環戦略」で提示しています。

プラスチック新法の内容は?

プラスチック新法では、大きく3つのアプローチで、プラスチック危機へ対策しようとしています。

1. プラスチック製品を長持ちする or リサイクルしやすい設計に

 できるだけ使用するプラスチックを減らす、 丈夫で長く使えるようにする、単一素材を使う、など、長持ち・リサイクルしやすいデザインの指針が定められ、メーカーには、指針に沿った製品設計が求められます。また、使う原料については、木や紙、バイオプラスチック、再生プラスチックへの切り替えが推奨されます。

さらに、製品の環境負荷を総合的に評価することや、部品の交換や修理について情報を発信し、交換や修理に対応できる体制を整えることなども示されています*

2. 特定のプラスチック製品の排出抑制(合理化)をする

フォーク・スプーン・テーブルナイフ・マドラー・ストロー・ヘアブラシ・くし・かみそり・シャワーキャップ・歯ブラシ・衣類用ハンガー・衣類用カバーの12種類が、特定プラスチック使用製品に指定され、削減することが求められます。

例えば、コンビニのスプーンやフォークを有料にする、ホテルの歯ブラシやくしは必要な人だけがフロントなどで受け取るなどの削減の対策や、木製のスプーンや歯ブラシ、紙のかみそり、バイオマスプラスチックのストローなど、プラスチックではない使い捨て素材への切り替えが見込まれます*

3. 回収・リサイクルを促進する

使用済みプラスチックの店頭回収や、事業ごみの分別収集、市区町村での家庭プラスチックごみの分別収集へ、協力が求められます。

プラスチック新法の5つの問題点

プラスチック問題に関心の高い方は、ここまで読んですでに気になる点があったかもしれません。実は、太字で斜体の箇所は、グリーンピースを含めた環境NGOネットワークが、見直しが必要と指摘する点です。

プラスチック新法の主な5つの問題点を解説していきます。

プラスチック新法の問題点1: 目標が明確ではない&低い

2030 年までに使い捨てプラスチックを、これまでの努力も含めて累積25%削減という目標は、非常にあいまいです。

いつと比べて25%削減するのか、基準年や基準数値が示されていないため、使い捨てプラスチックの排出を総量として何トン減らすのか不明です。基準を明確に示し、目標を数値化することが必要です。

そして、目標をさらに引き上げる必要があります。韓国では2022 年までに1回用品(使い捨て品)を35%以上減らすことを目標にしているなど、海外ではより高い目標が示されています

プラスチック新法の問題点2:  リサイクルに頼りすぎている

プラスチック新法では、「まずは発生抑制等の使用の合理化をした上で、必要不可欠な使用については、再生プラスチックや再生可能資源 (紙、バイオプラスチック等)に適切に切り替え、 徹底したリサイクルを実施」とされています。

3Rの順番がリデュース・リユース・リサイクルであるように、そもそもごみを処理する必要がないように、リデュース・リユースを、リサイクルや代替え素材への切替えよりも優先する必要があります。

プラスチック新法の問題点3: スプーンやフォークだけでは足りない

削減対象として、スプーンやフォークなどの12種類が指定されていますが、家庭ごみの約半分を占める、小袋や容器、ペットボトルなどのプラスチック容器包装は、プラスチック新法では排出抑制(合理化)の対象外です。野菜や果物の袋、発泡スチロールトレイなど、本来は不要なプラスチック容器包装を、有料または提供禁止としなければ、削減効果は限定的です。

フランスでは、毎年10億個以上のプラスチック包装を削減するために、今年1月から野菜や果物のプラスチック包装は禁止され、違反した場合は、最大で 1 万5,000 ユーロの罰金が科されることになりました。

プラスチック新法の問題点4: 有料化や提供禁止にはならない

プラスチック新法では、例えばコンビニがスプーンなどの提供を有料にすることは、義務ではなく、ポイント還元や木製スプーンへの代替などと並んだオプションの一つに過ぎません。

レジ袋の事例では、一部のスーパーがポイント還元などをインセンティブにしてレジ袋削減を推奨していた際には、辞退率は横ばいでした。しかし、有料化によって辞退率は倍増しました。また、全国で初めてプラスチック製レジ袋を禁止した京都府亀岡市では、マイバックの持参率がほぼ100%に上っています。スプーンやフォーク、ストローなどの特定プラスチック製品についても、有料化を義務とする、または、提供禁止とすることが必要です。

プラスチック新法の問題点5: 紙やバイオマスでも結局は使い捨て

プラスチック新法では、プラスチック以外の素材への代替や、バイオプラスチックの利用を促進するとしています。プラスチック資源循環戦略でも、2030年までにバイオマスプラスチックを約 200 万トン導入というマイルストーンが示されています。

200 万トンという量は、2018 年の42.5 倍。代替素材の生産を急拡大させることで、新たな環境・社会問題を発生させる可能性があります。バイオマス以外の代替素材についても、急激な生産拡大に伴い同様の懸念があります。

代替素材への切替えを検討する前に、必要不可欠ではないプラスチックを大幅に削減することが必要です。

解決策はリデュース&リユース!

日本は、一人当たりの使い捨てプラスチック消費量が世界で第2位。現在の日本では、スーパー、コンビニ、カフェ、どこにいっても(相当気をつけている人でない限り)使い捨てプラスチックごみだらけになってしまいます。

たとえばオーストリアでは、2025年までに飲料の25%を繰り返し使えるリユースパッケージで提供することをめざす法律を制定しました。ポルトガルでは、2030年までに、流通するすべてのパッケージの30%をリユース可能なものにしなければならないとしています。

日本でも、リサイクルを前提にせず、繰り返し使えるリユースの仕組みを急速に広めて不要な使い捨てプラスチックを大幅に削減するルールが必要です。

私たちにできること

私たち生活者の環境意識が高まるにつれて、様々な商品に「環境に優しい素材を使った製品です」「バイオマスプラスチック配合」などとかかれるようになりましたよね。

もしかするとその言葉は、生活者に安心感を与えて、消費を促進するための”脱プラウォッシュ”なマーケティングかもしれません。

そもそも、他の商品と比べて過剰なパッケージではないか?使い捨てなしで買う方法はないか?一度手を止めて考えてみましょう。

そして大切なのは、企業が、法律で求められる以上に、抜本的な「リデュース・リユース」の取り組みを始めるように、私たち自身が働きかけることです。

グリーンピース・ジャパンでは現在、業界のリーダーでもある大企業に、リユースの取り組みを取り入れることを求める2つの重要なキャンペーンを行っています。ぜひあなたも、この署名に参加して、普通に暮らしていても無駄なごみが出ない社会を、一緒に実現しませんか?

【署名】スターバックスさん、
コーヒーと地球が
好きな私たちからのお願いです