「グリーンウォッシング」とは、企業や製品が環境に与える影響を実質的に削減することなく、環境に配慮しているように見せるために用いられるPR戦術のことです。企業が良いことをしているように見せかけながら、これまで通りのビジネスで利益を上げ続けることを可能にします。「SDGs」や「エシカル」がビジネスのキーワードになっている今、グリーンウォッシングの事例とともに、その問題点をみていきましょう。

私たち市民の地球環境への意識が高まるにつれて、「エコ」や「グリーン」であることを売りにしり、「SDGs」に取り組んでいることをアピールした企業の広告が増えています。

エシカルビジネスは世界中で成長しています。例えばイギリスでは、エシカル支出は2019年から2020年にかけて24%近く上昇し、その市場規模は今や1,220億ポンド(約12兆円)に達しました*

なるべく環境へのインパクトが少ない商品・サービスを選びたいと考えている私たちにとっては、「価値観に合った商品が増えた!」と喜びたくもなりますが…。

それは本当に「エコ」でしょうか?「グリーン」とは具体的にどういう意味で、「SDGs」にどう貢献しているのでしょう?

グリーンウォッシングとは?

「グリーンウォッシング」とは、企業や製品が環境に与える影響を実質的に削減することなく、環境に配慮しているように見せるために用いられるPR戦術のことです。

近年では、2019年に、ファストファッションのH&Mが「サステナブルファッション」として、天然素材やリサイクル素材を使ったコレクションを発表しましたが、その含有量など具体的に何が「サステナブル」なのか情報が開示されていないことから、ノルウェー消費者庁が「グリーンウォッシュである」と判断したことが話題となりました*

自然や健康を連想させる画像、「サステナブル」などの環境に配慮した流行語が並ぶ広告は、よく調べるとほとんど意味をなしていないこともあります。漠然とした「グリーン」などの言葉が、私たち消費者の誤解を招きます。

グリーンウォッシングの目的は、企業のパブリックイメージを高め、我々の価値観に合致していると思わせることで、売上を伸ばすことにあります。

なぜグリーンウォッシングが問題なの?

グリーンウォッシングは、企業が良いことをしているように見せかけながら、これまで通りのCO2や廃棄物を大量に排出するビジネスで利益を上げ続けることを可能にします。これでは、地球の資源を奪い続け、許容できる以上のCO2を排出し続ける社会・経済システムを変えることはできません。

そして、本当に環境への影響を減らしている企業が注目されず、その取り組みが広がるよう支援する機会を見逃してしまうことにもなります。

グリーンウォッシングの事例を3つ見ていきましょう。

グリーンウォッシングの事例:「ペットボトルは100%リサイクル」

スーパーマーケットに並ぶ大量のペットボトル(2019年11月)

世界最大の飲料メーカーであるコカ・コーラは、廃棄物ゼロの未来を目指して、「2030年までに販売した自社製品と同等量のPETボトルを回収」するとしています*

しかしグリーンピースの調査では、コカ・コーラなどの使い捨てプラスチックを多用するメーカーが、リサイクルを隠れ蓑にしてプラスチック業界のプラスチック増産を助長していることが明らかになりました*

1980年後半からアメリカでは、使い捨てプラスチックを規制しようという流れに対して、プラスチック業界が数百万ドルをかけ、「プラスチックはリサイクル可能で、使い続けてよいもの」と納得させる大規模なPRキャンペーンやロビー活動を展開し、コカ・コーラなども同様の活動を世界中で行ってきたと報告されています。

プラスチック業界団体の元会長であるラリー・トーマス氏のこの発言*からも、「リサイクル」という言葉を盾に、使い捨てプラスチックでの商品の販売を増やしたいという意図が明らかです。

「一般市民が『リサイクルは上手くいっている』と考えれば、環境問題をそれほど気にしなくなります。何しろ、業界はバージン材(新しいプラスチック)を売りたいわけですから、リサイクルにはあまり金も労力もかけたくなかったのです」

グリーンウォッシングの事例:「ゼロエミッション火力」

石炭火力発電所前で、再生可能エネルギーへのシフトを求めるメッセージを掲げるグリーンピース(2014年3月)

日本最大の電力会社で、日本の全排出量の10%を排出する*JERAは、「CO2が出ない火を作る」というキャッチコピーを掲げ、「ゼロエミッションの石炭火力発電」をめざすとしています*。本来石炭火力発電は、最もCO2を排出する発電方法なので、温暖化を1.5℃までに抑えるという目標を実現するため、世界的に脱石炭が進んでいます。

JERAが主張する「ゼロエミッション火力」とは、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアを石炭に混ぜて燃料とすることでCO2排出を減らそうというものです。2050年までにアンモニア100%に移行することをめざすとしています。

アンモニアは水素からできており、確かに、燃焼時にはCO2を排出しません。しかし、ほとんどの水素は石油や天然ガスなどの化石燃料からできているので、結局は化石燃料に頼り続けることになります。化石燃料を使った水素やアンモニア技術は、カーボンニュートラル技術とは言えません。そして、再生可能エネルギーで作った「グリーンアンモニア」はまだほんの少量しか作られておらず、ほとんど実用化されていません。

グリーンピース・ジャパンは、JERAのアンモニア混焼について分析を発表し*、JERAの言う「ゼロエミッション火力」は石炭火力発電所を延命させるためのグリーンウォッシュだと結論づけています。

グリーンウォッシングの事例:「ネットゼロのステーキ」

森林伐採でつくられたアマゾンの牧場。背後には、放火・伐採されたばかりの森から煙が立ち上る(2021年9月)

ニューヨーク・タイムズ紙に、世界最大の食肉企業であるJBSが全面広告を出しました。

そこには、「ネットゼロ・エミッションのベーコン、手羽先、ステーキ。それは可能です」というキャッチコピーが掲げられていました*。畜産業は世界の温室効果ガス排出量の15%近くを占めているので、これはかなり大胆な表現です。

しかし、この広告だけでは、ネットゼロのベーコンやステーキがどのように生産されるのか、詳細はわかりません。

グリーンピースの2009年の調査で、JBSをはじめとする大手食肉企業が、アマゾンでの違法伐採に関連する数百もの牧場と結び付いていることが明らかになり、JBSは世界的な批判に直面しました。その後JBSはサプライチェーンにおける森林破壊防止に取り組むことを約束しましたが、2020年の追加調査では、10年以上たっても、同社が違法伐採を続けていることが明らかになっています。

このJBSの広告以外にも、デンマークの食肉会社が、気候変動への影響を小さく見せる「気候コントロールラベル」を商品に貼って販売していることも、グリーンピースの調査で明らかになりました*

JBSに肉牛を卸していたことが明らかになったこの畑は、違法に放火・森林伐採されてつくられたものだった (2020年8月)

本当の解決策を実現するために

実際には環境への影響を減らしていないにもかかわらず、環境にいい企業・商品であるかのように見せかけるグリーンウォッシングにだまされないために。まず大切なのは、「エコ」「グリーン」「サステナブル」などのあいまいな言葉をうのみにしないことです。

グリーンウォッシングを行った企業に異議を申し立てる

まずは消費者の私たち一人ひとりが、この商品はどの点が「エコ」「サステナブル」「グリーン」なんだろう?と考えることが大切です。

表現に疑問を持つ広告や、誤解を招く広告を見つけたら、グリーンウォッシングではないですかと尋ねてみましょう。さまざまな方法で企業に声を届けることができます。

  • SNSでその企業にタグ付けする
  • 「お客様の声」から意見を提出する
  • 署名に参加する
  • 広告監視機関に意見を提出する

普段から、環境問題の情報に触れる

グリーンピースのインスタグラムなどをフォローして、環境問題の情報に日頃から触れる機会を作りましょう。環境問題に関するキーワードに慣れておくだけで、グリーンウォッシングの広告に触れた際に、「これは本当に環境にいいのかな?」と疑問を持つことができます。

NGOとともに、企業により良い行動を促す

グリーンピースは、特に影響力のある企業の環境インパクトを調査して明らかになった事実をもとに、本当の解決策となる行動を促しています。本当の意味で気候変動・プラスチック汚染の解決策となる企業を増やすために、私たちと一緒に活動しませんか?

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