プラスチックや紙の使い捨てコーヒーカップは、海や街を汚染するだけでなく、リサイクルも困難なためほとんどが焼却されています。コーヒーは仕事や勉強を頑張る力や豊かな時間をくれる欠かせない存在ですが、その一方でどれくらいのカップがごみになってしまっているでしょうか?

グリーンピースの調査で、日本の9つの大手カフェチェーンによって、年間3億6,950万個、1日100万個の使い捨てカップが消費されていることがわかりました。すべて積み上げれば、東京スカイツリー6万本の高さになる量です。最も多くの使い捨てカップを消費していたのは、スターバックス、タリーズ、プロントの3社でした。

使い捨てカップの消費量が多いカフェチェーンは?

コーヒーは、仕事や勉強を頑張る力や豊かな時間をくれる欠かせない存在です。月曜日の朝や疲れてきた午後に、手元にコーヒーを持っているだけで、少しやる気が出るから不思議ですよね。

でもいつの間にか、コーヒーを使い捨てカップで飲むことが当たり前になりました。私たちの暮らしを明るくしてくれるコーヒーですが、その一方でどれくらいのカップがごみになってしまっているでしょうか?

実は、日本のカフェ業界における使い捨てカップの正確な消費量は公表されておらず、はっきりとわかっていません。

企業が使い捨てごみの削減にコミットするために必要なのは、まず自社がどれくらい使い捨てごみを出しているか、把握すること。

そこでグリーンピース・ジャパンは、現場調査や最新のデータを用いて、国内の大手カフェチェーン9ブランド:スターバックス、タリーズ、プロント、ドトール、ベローチェ、エクセルシオール、上島珈琲店、カフェドクリエ、コメダ珈琲の使い捨てカップ消費量を推定しました!

1日に100万個の使い捨てカップ

調査の結果、この9つのカフェチェーンだけで、1年間に3億6,950万個=1日100万個の使い捨てカップを消費していることがわかりました。すべて積み上げれば、東京スカイツリー6万本の高さになるほどの量です。

この中で、1年間の使い捨てカップ消費量が最も多かったのはスターバックスで、その数は他の8社の合計よりも多い2億3,170万個に上ります。スターバックスが2020年に使用した使い捨てカップを全部並べたら、東京からスターバックス本社のあるシアトルまでの距離の3倍以上になります!

スターバックスの次に使い捨てカップ消費量が多かったのは、タリーズとプロントです。カフェの市場シェアで言えば、ドトールの方が上なのですが、タリーズ・プロントの方が使い捨てカップを多く消費しているのには理由がありました。

スタバ・タリーズ・プロントは、店内でも使い捨て

調査の結果、使い捨てカップの消費量が多かったスターバックス、タリーズ、プロントでは、店内でドリンクを飲んでも使い捨てカップが使用されることが多いことがわかりました。スターバックスは10個中9個、タリーズは10個に7個、プロントでは10個中6個の店内の飲み物が、使い捨てカップで販売されていました。

売上ではドトールの方がタリーズとプロントよりも多いにもかかわらず、店内で使い捨てカップの使用が多いことによって、使い捨てカップ消費数では2社を上回っているのです。

もしこの9つのカフェチェーンで、店内の飲み物を繰り返し使えるマグやグラスで提供するようになれば、1億5,860万個の使い捨てカップを削減できると推定されます。

使い捨てカップの環境への影響は

2020年の「国際海岸クリーンアップ」の報告書によると、世界各地の海岸で見つかるもののトップ10に、プラスチックのリッド(ふた)、カップが入っていました。 

日本では、使い捨てプラスチック・紙カップの大半が、焼却されています。焼却されるとCO2が排出されて気候危機の悪化に繋がるだけでなく、燃やされてしまった貴重な資源はもう戻ってきません。

紙自体は技術的にはリサイクル可能ですが、東京都環境局の報告書によれば日本ではほとんど再利用されていません。海外でも、英国0.25%、米国1%未満と、紙カップはほとんどリサイクルされていないのです。

プラスチックの使い捨てカップも、リサイクルには適していません

お店が変わらなければ使い捨てはなくならない

日本の大手カフェチェーンは、どこもテイクアウト飲料向けの広く普及したリユースシステムを持っていません。現状、使い捨てカップを減らす取り組みは、タンブラーを持参する、店内でマグカップをリクエストするというお客さんの行動に委ねられていることになります。

グリーンピースが2020年に実施した調査では、「カフェにタンブラーを持ち込む」と答えた人は、4.2%しかいません*。残りの人には、お店が決めた方法で提供されるので、お店側が、リユースできるカップで提供することのインパクトがよくわかりますよね。

もしもお店が

  • 店内での飲み物の提供を繰り返し使えるマグカップやグラスにしたら
  • 使い捨てテイクアウトカップを有料にしたら
  • タンブラーを持っていない人でも使える返却式リユースカップを取り入れたら

使い捨てコーヒーカップは大幅に減るでしょう。使い捨てごみを出さないサステナブルな方法で、コーヒーのある素敵な暮らしを続けることは可能です。

返却式リユースカップと使い捨てコーヒーカップ。

あなたの声が企業を変える

消費者の声で、企業が脱・使い捨てに向かったサクセスストーリーは、日本や近隣の国や地域で、グリーンピースが関わったものの一部だけでも、ここ数年でこれだけあります。

これまでの成功事例

2022年 コカ・コーラが、全世界で2030年までに25%の商品をリユース容器での販売に切り替えることを発表

2022年   台湾のファミリーマートが、総店舗の10%にあたる400店舗で、コーヒー用の返却式リユースカップを導入することを発表

2021年  台湾のセブンイレブンが、2050年までにすべての使い捨てプラスチックの使用を廃止する計画を発表し、毎年10%の削減を目指す

2020年 韓国の大手スーパー・ロッテマートが、アジアで初めて、2025年までに使い捨てプラスチックを半減させることを発表

今回の調査で客観的に明らかになったデータをもとに、グリーンピースは、スターバックスをはじめとした大手カフェチェーンに、使い捨てカップから脱却するための3つの行動を求めます

  1. サプライチェーン全体で発生するごみの量を把握、公開し、具体的な使い捨て削減目標を立てる
  2. 店内では使い捨てカップでの提供からマグやグラスに移行する
  3. 使い捨てカップの有料化や、タンブラー持参の割引料金アップなどを通じて、容器持参のインセンティブを高める。また、タンブラーを持っていない人が使える「返却式リユースカップ」の導入・全国的な拡大に向け、他社とも協力する
© Sawako Obara / Greenpeace

グリーンピースだけではなく、実際のカフェのお客さんであるみなさんの力が必要です。あなたが変わってほしいと思うカフェに署名で声を届けて、グリーンピースの企業への働きかけを後押ししてください!

1日100万個の
使い捨てコーヒーカップ
をなくしたい

こうした独自調査やその結果をもとにした企業への働きかけは、グリーンピースが企業から財政的に独立しているからこそできる活動です。これからもこの活動を続けるために、あなたも寄付サポーターとして参加していただけませんか。

調査の手法:

  • 調査会社から入手できる最新のデータを用いて分析
    • 日本のカフェ業界の規模、売上実績、消費トレンドなどカフェチェーンの市場シェアのデータ
    • 各チェーン400枚以上のレシート購入データから得られる情報で、各チェーンの消費形態(イートイン、テイクアウト、ドライブスルー、オンライン注文)と飲料の種類(ホットコーヒー、アイスコーヒーなど)の傾向を分析
  • グリーンピースの独自調査
    • 各チェーン店舗で、商品の注文と受け渡しを観察し、提供されるカップの種類と、マグやグラスなどのリユースカップの使用についての各チェーンの方針を調査
    • カフェチェーン9社すべてから集めた使い捨てカップとリッド(ふた)の重量を測り、フーリエ変換赤外分光測定により素材とそのポリマーを分析

グリーンピース・ジャパン調査報告書『日本のカフェ業界における 使い捨てカップの現状』