今週末は環境G7

今年、広島でG7が開催されるのは多くの人が知ってますね。その前、今週の土日に、北海道札幌市でもG7があるんです。G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合、といいます。
その名の通り、争点は環境問題。とくに今回は何が中心的に話し合われるのでしょうか。
G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合とは

G7気候・エネルギー・環境大臣会合は、G7サミットに関連して開催される会合のひとつ。
パリ協定で合意された「世界の平均気温の上昇をできる限り1.5℃に抑える」という目標をもとに、化石燃料など資源の浪費に依存した経済・産業構造を、再生可能エネルギーを中心にした循環型経済(サーキュラー・エコノミー)に変えていく政策について議論します。
参加国は日本、カナダ、フランス、欧州連合(EU)、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカに加え、招待国のインド、インドネシア、アラブ首長国連邦。
関連のイベントも同時に催され、参加国の環境関連の閣僚だけでなく、世界各国の関連企業や自治体や市民団体も集結、いま世界が直面している環境破壊にどう立ち向かっていくか、それぞれの立場での意見交換や情報共有が行われます。
グリーンピースももちろん、現地に入ります。
注目の議題はエネルギーの安定供給の確保
なんといってもいちばんの議題は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとするエネルギー市場の混乱への対策です。
ロシアは原油の生産量で世界第3位、天然ガスは第2位という化石燃料産出大国。*軍事侵攻による経済制裁で供給量が減少、エネルギー価格が世界的に高騰しています。

その反面、欧米の石油大手5社のうち4社は、2022年、過去最高の利益を上げています。
どれくらい儲かったかというと、おおよそこれぐらいです(1ドル=132円として)。
- アメリカ・エクソンモービル:557億4000万ドル(約7兆3600億円/前年比2.4倍)
- アメリカ・シェブロン:354億6500万ドル(約4兆6800億円/前年比2.3倍)
- イギリス・シェル:423億900万ドル(約5兆5800億円/前年比2.1倍)
- フランス・トタル:205億2600万ドル(約2兆7000億円/前年比28%増)
- イギリス・BP:276億ドル(約3兆2500億円/約3200億円の赤字)*
石油の価格が高騰すれば石油企業の利益が増えるのは当たり前かもしれませんが、軍事侵攻を背景にして収益を増やしていると批判する声もあります。
エネルギー市場の混乱で燃料価格や電気料金が値上げされただけでなく、物価もどんどん上がり、市民の財布は厳しくなる一方。
なんだか釈然としませんよね。
石炭火力大国・日本に求められていること

今回の議長国である日本は、昨年のG7以来、石炭火力発電の廃止時期の明示を要求されています。政府は段階的な廃止に結論づけたいと考えているようですが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は「2035年に温室効果ガスを2019年比で60%削減することが必要」とする報告書を発表しています。
期限は残り12年。
温室効果ガスを最も多く排出する石炭火力発電を、日本は廃止どころか新設まで続けています。167基もの石炭火力発電所に加えて、さらに7基を計画・建設しているのです。
日本の電力の7割は化石燃料に依存していて、うち3割が石炭。
それを「段階的」に廃止していて「締め切り」に間に合うのでしょうか。
議長国であるなら、この機会に、誰もが安定した生活を保証された上で廃止できる方法を、すでに廃止した国に倣って真剣に検討してほしいものです。
石炭火力廃止を決めた国はイギリス(2024年まで)、イタリア(2025年)、カナダ、ニュージーランド、ドイツ、チリ(2030年まで)など。ベルギーは2016年に、オーストリアとスウェーデンが2020年、ポルトガルは2021年で廃止しています。
未来のための脱炭素への道

もしいま、わたしたちが温室効果ガスを削減できなかったら、何が起こるでしょう。
南極や氷河の氷が融けて、海面上昇によって世界各地で浸水被害が発生します。
住める場所が狭まるだけでなく、農耕地が被災し、食料の生産が滞ります。
大型台風や豪雨・豪雪、干ばつ、熱波といった異常気象による災害が頻発します。
生態系が破壊され、これまで通りの農業や漁業ができなくなり、世界中が食糧難に陥ります。
未知の病原体の拡散リスクが高まります。
そんな未来が、すぐ目の前に迫っています。
これが、いまの子どもたちが暮らす未来予想図です。
会合では、企業が社会全体の二酸化炭素削減にどれだけ貢献したかを評価するしくみや、電気自動車のバッテリーに使われるリチウムなど鉱物の供給網の整備についても議論します。
脱炭素が社会の未来を切り拓いていく鍵となったいま、政府だけでなく、企業や市民からも大きな一歩となる解決策が生まれていく時代がきています。