海に流出したペットボトル

「プラスチックが環境を汚染し、地球の危機を加速させている……」。そう聞いても、ありとあらゆるところにあふれているプラスチック。どんな点がどんな風に環境に悪いのか、解決のためには何をすればいいのか、頭の中はたくさんの疑問でいっぱいです。グリーンピースに寄せられた疑問から、マイクロカプセルやシリコン、塗料、プラ条約についてまで、具体的に詳しくまとめました。

▼この記事を読むとわかること

> グリーンピースに寄せられたプラスチックにまつわる疑問
> 柔軟剤などに使われるマイクロカプセルとプラ条約
> プラスチックの代替品としてのシリコンの評価
> 塗装、塗料にまつわるプラスチック問題
> 「国際プラスチック条約」と私たちにできること
> さあ、今すぐ署名に参加しよう!

グリーンピースに寄せられたプラスチックにまつわる疑問

身近だからこそ、多くの人が素朴な疑問や不安を抱える「プラスチック」の問題。この記事では、プラスチックにまつわる4つの疑問に詳しくお答えします。

世界的にプラスチックによる環境破壊が問題となっています。グリーンピース・ジャパンは、2023年6月8日に、プラスチックをテーマにしたオンラインイベント「環境のはなしシリーズ」を開催。解決に必要なこと、制定に向けた話し合いが進む「国際プラスチック条約*」のこと、グリーンピースが今取り組んでいることなどをお話しました。

ジョグジャカルタのビーチで行われたグリーンピースのボランティアによるビーチクリーン活動
ジョグジャカルタのビーチで行われたグリーンピースのボランティアによるビーチクリーン活動。インドネシア(2018年9月)

イベントでは、日常生活と密接にかかわるプラスチックのあれこれについて、参加者から多くの疑問が寄せられました。現在、国際的に法的拘束力を持つプラスチック規制のための条約、「プラ条約」の誕生に向けて、内容を決めるための話し合いが重ねられています。2023年11月13日からは、ケニアのナイロビで第3回目の国際交渉が始まります。

*国際プラスチック条約とは?

プラスチック問題の大きな転機といえる今、グリーンピースに寄せられた疑問の中から
・マイクロカプセルについて
・プラスチックの代替品としてのシリコンの評価
・塗装や塗料にまつわるプラスチック問題
・プラスチック汚染のない未来のために私たちにできること
上記4つを取り上げて詳しくまとめます。

(環境のはなしシリーズ第5回イベントの参加者からの質問と、グリーンピース担当者の回答を一部編集し、記事化しています)

マイクロカプセル、マイクロビーズとプラ条約

Q. プラ条約は、柔軟剤などに使われるマイクロカプセル(プラスチック)も規制することができるの?

マイクロプラスチックの一種で、ホームケア製品や洗濯用品、化粧品などに毎年何百万トンも使用されているマイクロカプセル*。マイクロプラスチックの環境への流出は、南極のオキアミ*からオーストラリアのイワシ*に至るまで、生き物の体内にも確認されています。プラ条約は、こうしたマイクロプラスチックを規制することができるのでしょうか。

洗濯洗剤、柔軟剤、歯磨き粉、化粧品などの多くに配合されたマイクロビーズ
洗濯洗剤、柔軟剤、歯磨き粉、化粧品などの多くに配合されたマイクロビーズが下水処理を通り抜けて海に流出し、生態系の食物連鎖に影響を及ぼしている*

【グリーンピースからの回答】

グリーンピースは世界中の仲間と一緒に、マイクロカプセルを含む、マイクロプラスチックとナノプラスチックの規制をプラスチック条約に含めるよう強く働きかけています。

グリーンピースが行ったドイツの約70の都市でマイクロプラスチックを含む化粧品類への注意喚起、購買を避ける方法などを共有するアクション
ドイツの約70の都市でマイクロプラスチックを含む化粧品類への注意喚起、購買を避ける方法などを共有するアクションを行った。リューベック(2016年11月)

しかし、残念ながら現段階では、このような野心的な条約の内容に加盟国が同意するかどうかは不透明です。だからこそ、各国政府をさらに強く後押しする必要があります。あらゆる種類のプラスチックに関するルールと基準を持った条約実現のために、ぜひ署名に参加してください。

プラスチックの代替品としてのシリコンの評価

Q. シリコンという素材はプラスチックに含まれる? シリコン樹脂が、プラスチックより環境によいのかどうかを知りたい。

プラスチックの代替品として、注目を集めつつあるシリコン素材。現在までにその特性や機能を生かした数多くの製品が開発されていて、その用途は幅広く多岐に渡ります*シリコンをプラスチックの代わりに使うことで、環境への負荷はどのように変わるのでしょうか。

柔軟で耐久性があり、さまざまな用途に使用されているシリコーン
柔軟で耐久性があり、さまざまな用途に使用されているシリコーン

【グリーンピースからの回答】

シリコーン*とプラスチックは、組成も性質もまったく異なる素材です。

*シリコンとシリコーン 厳密には、シリコンとシリコーンには違いがあり、一般的に「シリコン(silicon)」は、ケイ素を指し、「シリコーン(silicone)」は、ケイ素と酸素からなるポリマーを指すものです。ここでは、「シリコーン」についてお話しします。

シリコーンは、ケイ素、酸素、炭素、水素の原子からなる一方、プラスチックは、炭素と水素、酸素、窒素、塩素などの元素の長い鎖で構成されています。シリコーンと、ある種のプラスチックは同じポリマーです。しかし両者は化学的に異なっていて、特性も異なります。別々に製造され、通常、お互いを構成要素として含むことはありません*

シリコーンはプラスチックより環境に良い素材なのか 

プラスチック製品の多くが使い捨てであるのに対し、シリコーン製品は複数回使えるように設計されています。寿命が長いため、繰り返して使い続けることができます。例えば、ラップの代わりに、柔軟性のあるシリコーン製の蓋を使えば、使い捨てを減らすことができます。

再利用できるシリコーン製のラップ
再利用できるシリコーン製のラップ。使い捨てのプラスチックラップやフィルム、アルミホイルの代わりに繰り返し使用することができる

また、シリコーンは、海を汚染し、水生生物に重大なリスクをもたらす有害なマイクロプラスチックに分解されることもありません。ただし、シリコーンにも懸念点はあります。

◇シリコーンの懸念点

  1. プラスチック同様、シリコーンにも再生不可能な天然資源が使われています。また、シリコーンを作る材料は自然界に存在しますが、それをシリコーンに変えるには石油や化石燃料のガスを使用します*
  2. シリコーンは生分解されません。放っておいても自然には分解されないのです。加えて、シリコーンのリサイクルは難しく、専門的な工程が必要です。そのため、毎年かなりの量のシリコーンが埋立地に捨てられています*
  3. 廃棄されたシリコーンを海洋生物や鳥類が飲み込んだ場合、プラスチック製品と同様に、窒息や消化不良を引き起こす可能性があります。
  4. シリコーンは人体に対して刺激性や毒性を示さないという研究結果もありますが、シリコーンの健康への影響についてはまだ十分な研究がなされていません。正確な影響は「まだ分からない」にもかかわらず、人体への悪影響はないと宣伝されている事例が多く見られます。

シリコーンの現状はプラスチックが夢の素材として登場した時と同じ構図であるようにも思われます。十分な情報がないまま、素材を置き換えるだけで問題解決を図ろうとする選択には注意が必要です。シリコーンはプラスチックと比較して優れた点がある一方で、その限界や環境に与える影響に留意しなければなりません。代替品に頼るのではなく、リデュースが重要となることがわかります。

塗装、塗料にまつわるプラスチック問題

Q. 塗装に使われる塗料には原材料にプラスチック樹脂を使ったものが多くあります。塗装の目的は建物の寿命を延ばし、建物自体がごみになるサイクルを延ばすことにあります。それでも、塗料に含まれるプラスチックの悪影響を問題として捉えた方がよいのでしょうか?

建造物や設備の腐食を防ぐ効果を持つ塗料。しかし、同時に水路へのマイクロプラ粒子の流出が問題になってもいます。環境にとって、よい面と悪い面をあわせ持つ塗装についてお答えします。

さまざまな成分が含まれる塗料
さまざまな成分が含まれる塗料。性質や用途に応じて、複数のプラスチック成分が使用されている場合も

【グリーンピースからの回答】

残念ながら毎年、世界の海や水路に流れ着くマイクロプラスチックのうちの58%を塗料の粒子が占めています*。一方で、船舶や建物などのインフラに塗料を使うことで、素材を腐食や劣化から守り、より長期間の利用を可能にしています。どんなに環境に良い製品でも、環境負荷がまったくない製品は存在しません。塗料にも環境面のメリットとデメリットの両方があります。

剥げにくい塗料、より環境負荷の少ない原材料で作られた塗料が広く使用されたり、技術革新による製品寿命の延伸など、将来の展開に期待が持たれます。塗料に限らず、今の段階では使わざるを得ない領域はあるでしょう。塗装業に従事する質問者は、可能な限り、自然塗料や、漆喰、珪藻土などを選択しているそう。環境負荷を軽減するためのより良い選択です。

プラスチックによるさらなる汚染を止めるために大切なことはなんでしょうか。まずは、より深刻な環境への影響が考えられるポリマーや化学物質を早急に規制すること。そして、使い捨てパッケージ類を大幅に減らすこと。「蛇口を閉める」ための対策が必要です。

「国際プラスチック条約」と私たちにできること

Q. 効果的な「プラスチック条約(プラ条約)」の誕生のために、私たちができることは何?

プラ条約が、原料採掘、生産から使用、そして廃棄まで「サイクルの全体」を規制する内容となれば、世界のプラ汚染を根本から解決することができるかもしれません。真に効果的なプラ条約を誕生させるために私たちができることは?

グリーンピースが、世界の象徴的な建物やランドマークにメッセージを投影
パリで開催されたプラ条約の国際交渉(INC-2)に先立って、グリーンピースが、世界の象徴的な建物やランドマークにメッセージを投影した。東京(2023年5月)

【グリーンピースからの回答】

プラ条約が作られることはすでに決定しています。あとは「中身をどうするのか」です。しっかりとプラ問題を解決に導く条約内容にするために、私たち一人ひとりにできることは、「条約に求めている内容をきちんと伝える意思表示」です。

韓国のグリーンピースが行ったプラごみを作ったブランドの調査
韓国のグリーンピースが、バーコードを使った調査アプリをつくり、プラごみを作ったブランドの調査を行った。調査には約4000人が参加(2022年8月)

以下の6つのポイントが条約に反映されることが重要です。

① 新しい素材だけを使って作られた(バージン)プラスチックの生産量に上限を設け(2017年の水準に)、その後年々生産量を削減する。
② 各国は他のあらゆる対策の前に、プラスチックの使用を減らすため、使い捨てごみを出さないリフィル・リユースの取り組みを中心にする。まず最も不必要な用途と最も問題のあるポリマーからフェーズアウトし、削減とリユースについて法的義務を設ける。
③ プラスチックの生産、使用、輸入、輸出に、完全な透明性を担保できる仕組みをつくる。
④ プラスチックの原料採掘から生産、使用、廃棄、流出まですべてのサイクルにおける環境および社会的コストについて、生産者が責任を負う仕組みを整える(拡大生産者責任)。使い捨てをやめ、解決策への資金投入を促すために、環境配慮設計されていない製品に対して加重的な費用負担を導入する。
⑤ プラスチック汚染解決への課題に特化した資金制度を確立する。最も資金と必要なインフラを持つ国々が、持っていない国々が革新的なゼロウェイスト経済に移行するための直接的な財政支援を行う。
⑥ 先住民族や気候危機における影響を最も受けやすいコミュニティ、廃棄物の収集などに従事する労働者たちが、リユース経済への公正な移行の実現に向けて、発言権を持つことを保証する。

バージンプラスチック(新たに作られるプラスチック)の生産に上限を設けること、段階的に生産と使用を減らし、低炭素かつ廃棄物ゼロを目指すこと、そして循環するビジネスモデルに移行することがプラ問題解決の鍵になります。

さあ、今すぐ署名に参加しよう!

プラ条約は、スピード感をもってプラスチックの生産を大幅に減らし、汚染や環境破壊をストップさせる大きな可能性を秘めています。条約の締結は2025年まで行われる予定です。

仁川のマシラン海岸でビーチクリーンを行うグリーンピースのボランティアメンバー
仁川のマシラン海岸でビーチクリーンを行うグリーンピースのボランティアメンバー。韓国(2022年8月)

現在、プラ条約をどのような内容にするかを世界で話し合って決める段階にあり、これまで2回の国際会合(INC1〜2)が開催されています。INC2にはグリーンピースのメンバーも参加してきました。

そして、今まさに、11月13日〜18日までの期間、ケニアのナイロビでINC3が開催されています。効果的な条約の実現のために、とても大切なこのタイミングなのです。グリーンピースは、効果的なプラ条約を求め、署名を募っています。今すぐ署名に参加してグリーンピースと一緒に、プラ問題を解決させる条約を誕生させましょう。

「国際プラスチック条約」で
使い捨てにさよなら

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