「生物多様性と自然が本当にかつてないほど衰退している様子を記録した。衰退のペースや脅威の規模という意味で、人類史上このような現象はまったく前例がない」*1

米ミネソタ大学 ケイト・ブラウマン博士

 

時間は、いましかない

人間の活動によって100万種の動植物が絶滅の危機にさらされているという報告書は、簡単に読み終えられるものではありませんでした。 IPBESという国際組織が発表したこの報告書は、世界に衝撃を与えました。 動植物の約25%が絶滅にさらされていること、さらには、地球の平均気温が2度に達した場合、生物種の5%が絶滅リスクにさらされることを明らかにし、過去1000万年の平均より10倍から100倍速いスピードで多様な種が絶滅していると世界に警告したのです。 しかし、研究を行なった科学者たちは、いまならまだ多様な種の損失を防ぐことできるということも同時に教えてくれました。言い換えると、巨大なほ乳動物から小さな昆虫まで、地球上にある豊かな生態系を守る時間は、いましかないのです。 種の絶滅の危機は、広大な海にも迫っています。 海の生物多様性への脅威が増え続けている。それこそが、私がグリーンピースの船・エスペランサ号に乗っている理由です。私たちはいま、科学者グループとともに、グリーンランドとスヴァールバル諸島の間に位置するフラム海峡とへ向かっています。 科学者グループと一緒に行う今回の調査の目的は、北極圏で気候変動が海洋生物に与える影響についての理解を深めることです。具体的には、急激な気候の変化が、「水の華」とも呼ばれる、シロナガスクジラの餌となる大量の藻の発生現象に、どのような影響を与えているのかを調べます。 いまだに政治家や世界のリーダーに、北極圏の自然環境が壊れつつあることを証明しなければならないことは、やるせない思いです。彼らは、いますぐにアクションが必要だと理解していないように思えます。一方で、科学者が行っている調査をさらに学ぶことはおもしろくて、彼らが科学のために惜しみない努力を注ぐ姿を見ることが私を動かす原動力です。  

気候変動と海:大胆でシンプルな解決策

私の嘆きや人類が直面している課題はありますが、覚えておいて欲しいことは、いまならまだ、自然が完全に破壊されてしまうことをくいとめることができるということです。 グリーンピースの最新の報告書『30×30:海洋保護の未来図』が出した解決策は、世界の海の30%以上を、2030年までに保護することです。このいたってシンプルな方法で、私たちの生活と未来の海を守ることができるのです。 海洋生物の喪失は、主に気候変動と乱獲が原因です。IPBESの報告書にも、全海洋ほ乳類のうち3分の1が絶滅の危機にさらされており、さらに回復不可能な速さで、3分の1の水産生物が獲られ続けていると報告しています。報告書ではこのような警告が羅列されていますが、結論は明らかです。今私たちが目撃している生物多様性の損失は、私たち人類への脅威でもあるのです。 ここ北極圏では、気候変動の影響がすぐに現れます。先月は、平均気温より8度以上も気温が上がりました。北極海はいま「大西洋化」と呼ばれる現象が起きていて、温暖な大西洋の海水が海底から氷を溶かし始めています。これは、セイウチような北極圏で暮らす動物たちが、何千年も費やして適応した環境を変えはじめています 科学者は、北極圏の生態系破壊を防ぐもっとも効率的な方法は、人間の手が及ばない広大なエリアをつくることだと言っています。つまり、脅威にさらされている種が回復するためのエリア(海洋保護区)をつくる方法です。 このブログを書いている最中、ベルギーがイギリスについで2030年までに海の30%を保護する、というグリーンピースのキャンペーンに賛同することを表明しました。私は、海を守りたいと思っている人々、そしてたくさんの国を巻き込んだムーブメントを起こせるという希望を感じています。 しかし、この希望を確実なものにするためには、あなたの協力が必要です。 国連で海洋保護条約の締結にむけて、署名に参加してください。 署名に参加する >    *1: https://www.bbc.com/japanese/48182496 この記事は、エスペランサ号に乗るグリーンピース・ノルディックのHalvard Haga Raavandにより執筆されました。