「気候被害者」の93.2%が気候変動対策の更なる推進を望むーー熱中症・水害・農林畜水産物損害の経験者1000人を調査
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は9月29日、熱中症・水害・農林畜水産物損害の経験者(気候被害者)に対する全国調査『気候被害者が感じる気候変動』の結果を発表しました。この調査は、本人または家族が過去5年以内に熱中症・水害や土砂災害等による建物の浸水や倒壊被害・風水害あるいは極端な高温や小雨による商業用の農林畜水産物に損害を受けた経験があると答えた全国1000名に対し、気候変動について、感じ方、政策、温室効果ガスの高排出企業への受け止めなど7項目について尋ねた、気候被害者に特化した意識調査です。
調査の結果、「今よりさらに気候変動対策のための取り組みを政府や大手企業に進めてほしいと思うか」との問いには、「とてもそう思う」「そう思う」が合わせて93.2%に達したほか、身近な企業で温室効果ガスを多く排出する高排出企業の例として、トヨタ自動車を取り上げ、同社が日本全体の年間排出量の半分以上に匹敵する温室効果ガスを排出していることを踏まえて、「トヨタ自動車が総排出量を減らすことを打ち出したら、どう思うか」と問うたところ、約9割が「大いに支持する」「ある程度支持する」と回答しました。この結果も踏まえ、グリーンピース・ジャパンは、本日、トヨタ自動車に対して、同社が温室効果ガスの総排出量の削減を打ち出すことを応援するオンライン署名を開始しました(注1)。

<主な調査結果>
気候被害者が感じる気候変動
- 「現在、地球温暖化・気候変動についてどのように感じているか」との問いに、「強い危機感や不安を感じている」および「ある程度の危機感や不安を感じている」がそれぞれ4割を超え、合計89.2%に上った。
- 「今よりさらに気候変動対策のための取り組みを政府や大手企業に進めてほしいと思うか」との問いには、「とてもそう思う」「そう思う」合わせて93.2%に達した。
- 「あなたにとって、政府や大手企業の気候変動対策はどのようなものか」との問いに対する回答は、「生活の質を高めるもの」「どちらかというと生活の質を高めるもの」が合わせて73.8%だったが、気候被害経験者であっても、気候変動対策を「「生活の質を脅かすもの」「どちらかというと生活の質を脅かすもの」と捉えている回答者が全体の4分の1を上回った。
気候被害者の高排出企業(例:トヨタ自動車)についての受け止め
- 身近な企業で温室効果ガスを多く排出する高排出企業の例として、トヨタ自動車を取り上げ、同社1社で、日本全体の年間排出量の半分以上の温室効果ガスを排出したことに匹敵することについて、どのように感じるか尋ねたところ、「あまりにも多い」が47.5%と最多となった。「販売台数からしてその程度だと思った」は44.1%だったが、「思ったより少ない」は8.4%に留まった。
- 総排出量の削減と良好な経営の両立を軌道にのせることは、とても困難な挑戦となることが予想されるがと前置きした上で、「トヨタ自動車が総排出量を減らすことを打ち出したら、どう思うか」と問うたところ、「大いに支持する」「ある程度支持する」合わせて88.1%だった。
<調査概要>
対象:本人または家族について、過去5年以内に熱中症による搬送や医療機関の受診、水害や土砂災害等による「建物被害」、風水害や極端な高温、小雨による商業用の農林畜水産物への損害(「作物被害」)を受けた経験があるかを尋ね、回答者が1,000人に達するまで実施方法:グリーンピース・ジャパンが楽天インサイト株式会社に委託してオンラインで実施
時期:2025年9月11日(木)〜2025年9月16日(火)
グリーンピース・ジャパン プロジェクト・マネジャー、高田久代
「今年の夏も記録的な暑さとなり、北海道北見市で39.0度、群馬県伊勢崎市で日本の過去最高となる41.8度を観測しました。九州や東北では豪雨や洪水の被害が相次いだ一方、この夏全国で熱中症によって救急搬送された人は9万6,507人(注2)となり昨年を上回っています。日本でも恐怖を覚えるような高温や降雨などを各地で日常的に経験するようになり、気象情報は人命を左右するトップニュースの一つとなっています。
今回の意識調査は、日本で実際に気候災害にあった方やその家族が、気候危機への国や企業の取り組みをどう感じているかを調べることを目的に実施しましたが、回答者である『気候被害者』の93.2%が気候変動対策の更なる推進を望むと答えています。
今年7月下旬の記録的高温について、東京大と京都大の研究者らが『地球温暖化の影響がなければ発生しなかったレベル』と分析しているように(注3)、地球温暖化・気候変動は気象災害を激甚化させます。異常な高温・豪雨等による熱中症や、水害、農林畜水産物への損害などの被害は、『気候被害』として認識され、被害を軽減するために、原因となる温室効果ガスの排出削減に更なる緊急性をもって取り組むべきではないでしょうか。政府や自治体はもとより、1社で日本全体の年間排出量の相当量を排出するような高排出企業にも、パリ協定の1.5度目標に整合するよう、温室効果ガスの総排出量の削減を強く求めます」
以上
(注2)5月1日~9月14日に全国で熱中症によって救急搬送された人は9万6,507人(速報値)。消防庁「熱中症による救急搬送人員(9月8日~9月14日速報値)」、令和7年 都道府県別熱中症による救急搬送人員(3ページ)