国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は9月17日、気候変動に伴う高温リスクが日本の4つの農作物に与える影響を調べた報告書『秋の味覚が告げる気候変動の影響』を発表しました。気候変動の影響を「身近な食文化」を通して明らかにすることを目的として、代表的な「秋の味覚」としてサツマイモ(鹿児島県)、ナシ(千葉県)、ブドウ(山梨県)、米(新潟県)の4作物を対象に、主分析としてそれぞれの主要生産地における50年前と近年の平均気温データの比較分析と気候指標解析、生産者への聞き取り調査を実施しました。調査の結果、主要産地の気候が作物の健全な生育にとって限界を迎えつつあることや、気候変動が要因の異常気象が生産現場に深刻な負担を強いていることがわかりました。持続可能な農業を守るためには、個々の生産者の対応に依存するのではなく、生産者の被害の実態調査をはじめとした構造的・持続的な支援の強化を進めると同時に、気候変動をこれ以上深刻化させないために温室効果ガスの排出を大幅に削減することが急務です。

<主な調査結果>

  • 気象データの分析により、日本の秋を代表する味覚(サツマイモ、ナシ、ブドウ、米)の主要産地すべてにおいて、作物の健全な育成を損なう温度を超過する日数が過去約50年間で著しく増加していることが明らかになった。具体的には、作物の生育に悪影響を及ぼす30度以上の「真夏日」がサツマイモ産地の鹿児島(本圃生育期:6月〜10月)で23日、ナシ産地の千葉(果実発育・成熟・収穫期:6〜10月)で30.3日増加した。また、品質低下を招く基準温度(27度)を超える日数は、ブドウ産地の山梨(成熟期:7〜8月)で43日、米産地の新潟(出穂後の高温曝露をみる指標:8月)で18日増加している。
  • 日中の猛暑だけではなく、「夜間の高温」や「冬の温暖化」といった、作物の成長プロセスや品質に悪影響を及ぼす可能性がある気温上昇のリスクが増加していることがわかった。夜間の暑さがサツマイモの成長を抑制するリスク、冬の温暖化によってナシが春に正常に芽吹くための寒さが不足する発芽不良リスク、そして夏の高温が引き起こすブドウの着色不良や米の品質低下など、熱がもたらす障害が作物ごとに多様化している。
  • 全国の生産者へのアンケートと聞き取り調査から、気温の上昇だけでなく、「極端な猛暑による水不足」「不規則な雨」「病害虫の発生」といった複数の異常事態が複雑に絡み合い、生産者を極めて厳しい状況に置いている実態が浮き彫りになった。栽培する品種をより暑さに強いものに切り替えたり、作付する時期をずらすなど、適応策を模索している現状も明らかになった。

<調査概要>

本調査では①既存研究(学術文献)の概観、②科学的な気候データ分析、③農業現場への実態調査を実施した。

①既存研究(学術文献)の概観

  • 対象:各作物の気候変動による影響、生育・生理メカニズム、限界温度などに関する学術文献

②科学的な気候データ分析

  • 対象作物:サツマイモ、ナシ、ブドウ、米
  • 対象データ:各作物の主要産地における50年前(1966〜1975)と近年(2016年〜2025年)の「10年平均値」気温比較データほか

③農業現場の実態調査

  • 調査対象:国内の生産者および生産者団体
  • 対象作物:サツマイモ、ナシ、ブドウ、米
  • 調査方法:アンケート調査および個別ヒアリング調査
  • 実施期間:2026年5月〜2026年8月

「秋の味覚が告げる気候変動の影響 調査報告書」はこちら

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、豊田育生

「今回の調査では、過去50年間で激増した高温によって日本の『秋の味覚』である農作物の生育が環境的な限界を迎え、生産現場が極めて深刻な状況に直面していることが明らかになりました。生産者は気候変動の影響に適応するために、品種の選定や栽培方法の工夫など、様々な対策を講じています。しかし、さらなる温暖化を食い止めなければ、こうした個人の努力だけで対応し続けることは今後ますます困難になります。季節ごとの豊かな食文化や生産者の健全な栽培環境を守るためには、気候変動への適応策にとどまらず、その進行を食い止める社会全体での取り組みが必要です。

グリーンピースは政府に対して、気候変動が生産者にもたらす被害の実態調査をさらに進め、構造的・持続的な適応支援を強化することを強く求めます。同時に、気候変動の根本原因である化石燃料依存から早期に脱却するため、国や社会全体でエネルギーの無駄を省く『省エネと電化』を推進し、屋根置き太陽光発電をはじめとする地域共生型再生可能エネルギーの普及加速を求めます」