国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は11月13日、ブラジル・ベレンで開催されている国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)で、トヨタ自動車(愛知県豊田市)のブラジル法人が気候変動の解決策としてバイオ燃料を使用する試作車を発表するイベントを行うと発表したこと(注1)を受け、以下のコメントを発表しました。

サトウキビなど生物由来の原料から製造されるバイオ燃料は、2030年までに化石燃料よりも年間で7,000万トン多い温室効果ガス排出量(二酸化炭素換算)を出す可能性があると予測されており、気候変動対策として有用性が疑問視されています。11月6日にはCOP30開催に先駆け、憂慮する科学者同盟(Union of Concerned Scientists)の代表を含む、世界の科学者の約100名が署名した、増大するバイオ燃料需要のリスクを指摘した公開書簡が発表されており、科学者らは各国の指導者たちに対して、排出量の増加、森林破壊、世界的な飢餓の深刻化など、バイオ燃料がもたらす壊滅的な社会的・環境的影響について警告し、バイオ燃料の需要拡大を抑制するよう呼びかけています(注2)。

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、塩畑真里子

「世界最大級の自動車メーカーであり、世界のエネルギー由来の温室効果ガス総排出量の約1.5%を排出するトヨタが、グローバルサウスにおける新たな資源搾取や森林破壊などの環境リスクをはらむ技術を推進していくことに強い危機感を抱きます。同社は、気温上昇を1.5度に抑える達成経路に整合させることが難しいバイオ燃料の開発ではなく、すでに脱炭素技術として確立している電動化シフトを優先すべきです。10月27日にグリーンピースが発表した報告書『岐路に立つトヨタ(注3)』では、トヨタの現行のバッテリー電気自動車生産計画では2030年までに1.5度目標に整合しないことを明らかにしました。また、10月末に同社が公表した2024年の排出に関するデータによると、同社の排出量は2023年よりは微減したものの(注4)、バイオ燃料の推進でその削減の遅れを埋めることはできません。トヨタが、アマゾンの中心で開催されている地球上で最も重要な気候会議の場で、偽りの解決策を宣伝することは、気候危機を回避するために必要な迅速な脱炭素の取り組みを世界規模で妨げることを意味します。トヨタには、バイオ燃料を使用した内燃機関車の延命ではなく、確実に総排出量を削減できる技術の推進と1.5度目標に整合する総排出量の削減目標設定を求めます」

以上

(注1)Toyota do Brasil, press release (2025年11月5日発表)

(注2)“Open Letter to COP30: A Scientific Call to Confront the Risks of the Growing Global Biofuels Demand”(2025年11月6日発表)

(注3)グリーンピース・ジャパン報告書『岐路に立つトヨターー世界最大の自動車メーカーのBEV戦略と1.5度目標の整合性(日本語版)』(2025年10月27日発表)

(注4)グリーンピース・ジャパン プレスリリース「トヨタの2024年温室効果ガス排出量、5億8957万トンCO₂eにーーハイブリッド・EV割合高まるも排出量は変わらず」(2025年11月4日発表)