脱炭素の名の下の乱開発に強い懸念ーーグリーンピース提言、地域社会・自然と共生する再エネの推進を

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は本日9月5日、再生可能エネルギーについて、以下の声明を発表しました。気候変動の影響が深刻化する中、化石燃料による発電に代わる再エネの普及は長期的な解決策であり、それらを環境に負担のない形で導入することが、持続可能な社会の実現につながります。
グリーンピース・ジャパン事務局長、サム・アネスリー
気候危機が深刻化する中、破局的な事態を回避するためには、日本における再生可能エネルギー(以下再エネ)のさらなる拡大が不可欠です。グリーンピースは、地域や環境と調和する再エネの普及に向けた事業者や自治体、市民団体などの取り組みを支持します。一方で、再エネの拡大は、その過程における環境負荷や地域への影響を十分に考慮する必要があります。近年、再エネの導入を巡っては様々な声が上がっています。脱炭素の名の下に、企業利益 を優先し、自然環境や生態系を破壊したり、地域住民に被害をもたらすような再エネは、決してグリーンピースが目指す再エネのあり方ではありません。
適正な再エネのあり方についての視点の背景には、グリーンピースがこれまで一貫して掲げてきた理念があります。グリーンピースは50年以上にわたり、生態系豊かで、多様な命が育まれる平和な地球を目指し、世界各地で活動してきました。「多様な命」には、今を生きる私たちだけでなく、将来の世代や地球に暮らす動植物すべてが含まれます。私たちは、単に温室効果ガスの排出削減だけにとどまらず、人権の尊重や環境の保全、地域社会の健全な発展を目指しています。分断ではなく協力を、対立ではなく対話を通じて、誰もが安心して暮らすことができる社会の実現につながる脱炭素の取り組みを支持します。
現在、日本の主要な電力源は、化石燃料、原子力、再エネの3つです。化石燃料による火力発電は温室効果ガスを大量に排出し、原子力発電は過酷な事故のリスクと、数万年単位で有害な放射線を放出する廃棄物を排出するという問題を抱えています。いずれも燃料を輸入に依存しており、その運転に伴う汚染は、国境や世代を超えて影響を及ぼします。こうした負の影響を避けるために、グリーンピースは化石燃料と原子力の廃止を提唱し、再エネの推進を支持しています。再エネは、発電の過程で温室効果ガスや放射性物質を排出せず、太陽光や風力による発電は燃料を必要としないため、燃料の輸入にかかる莫大なコストを削減できます。また、比較的小規模な発電所を各地に分散して設置することで、地域資源の活用や経済の循環、雇用の創出にもつながります。
もちろん、再エネ発電所も、自然環境の中に人工物を作ることになる以上、環境への影響はゼロではありません。だからこそ、建設や運転にあたっては、初期段階から地元住民への情報・調査結果の開示、意思決定への住民の参加、地域の将来像についての議論と合意形成が極めて重要です(注1)。再エネは地球環境や暮らしを守るためのものであり、再エネを口実に、住民の多くが誇りを感じてきた自然環境を破壊するような開発に対して、グリーンピースは断固として異議を唱えます。
グリーンピースは、再エネ事業者に対しては、立地自治体や周辺の住民が、その土地の将来像に資するものだと感じられるような形での再エネ推進を求めています。政府に対しては、太陽光パネルのリサイクル義務化などの制度の整備を促し、快適で健康的な省エネと、持続可能な再エネが適切に広がる制度の整備を訴えています。再エネの普及には、再エネを選択する事業者や市民が正当に評価され、支援を受けることができる社会環境の整備も欠かせません。グリーンピースは、生態系豊かで、多様な命が育まれる社会の実現に向けて、政府や自治体、社会的影響力のある企業への働きかけを今後も続けていきます。
以上
(注1)参考:環境エネルギー政策研究所『地域にとって望ましい再生可能エネルギー・チェックリスト 太陽光・陸上風力 ver.1.0』