どれくらいの頻度で、お惣菜をテイクアウトしていますか?コンビニのお弁当を温めることはありますか?あるいは、冷蔵庫に残っていた作り置きを電子レンジで再加熱するだけの日もあるでしょう。その多くは、プラスチック容器や包装に入っているはずです。軽くて安く、扱いやすい、コストパフォーマンスに優れた素材であることは間違いありません。しかし、その利便性の裏側にあるリスクについて、私たちはどこまで理解しているでしょうか。

電子レンジ加熱で何が起きるのか

ドイツ製の化粧品から検出され、ろ過されたマイクロビーズとマイクロプラスチックの写真。

近年の科学研究は、プラスチック容器で食品を加熱すると、マイクロプラスチックやプラスチック由来の化学物質が食品へ移行する可能性があることを示しています。グリーンピース・インターナショナルが科学誌に掲載された24本の論文を分析した結果、電子レンジ加熱によってその移行が著しく増加することが確認されました。長期的な健康影響への懸念も高まっています。

本記事では、科学が示している事実、不確実な点、そして今後変えていくべき課題を整理します。

すでに人体から検出されている

マイクロプラスチックやナノプラスチックは、すでに地球の環境全体に広がっています。雪に覆われた山頂や北極の氷、土壌生物、さらに人間の血液、胎盤、肺、肝臓からも検出されています。

プラスチックには約16,000種類の化学物質が含まれていると推定され、そのうち約4分の1が有害と特定されています。加えて、食品に接触するプラスチック由来の化学物質1,396種類が人体から検出されていることも明らかになっています。

では、それらはどのように体内へ取り込まれているのでしょうか。

レトルト食品、テイクアウト用の容器、プラスチック包装からは、マイクロプラスチックや有害な化学物質が食品に溶け出す可能性がある。

プラスチック製容器の良い点、悪い点、そして問題点

世界では今、「家で一から料理をする」機会が減り、レトルト食品や冷凍食品、オンラインショッピング、レストランのデリバリーの利用が急速に広がっています。こうした“調理の外部化”は、日本でも顕著です。

1960〜70年代の高度経済成長期以降、共働き世帯の増加や都市化の進展とともにインスタント食品や冷凍食品が普及しました。近年はコンビニ弁当や総菜、宅配サービス、ミールキット市場が拡大し、家庭での調理時間は減少傾向にあります。

世界の調理済み食品市場は2025年に約1,900億ドル規模に達し、2030年には総量7,150万トンへ拡大すると予測されています。日本も主要市場の一角を占め、とりわけ冷凍食品や中食市場の成長が続いています。今後も都市化、単身世帯の増加、高齢化を背景に、簡便化ニーズはさらに高まるとみられています。

しかし、利便性の拡大と同時に見過ごせない問題が浮かび上がっています。

24本の最新論文の分析により、規制当局・企業・消費者のいずれにとっても無視できない事実が明らかになりました。プラスチック包装の食品を電子レンジで加熱すると、マイクロプラスチックおよび化学物質の放出リスクが大幅に高まり、それらが食品に移行する可能性があるという点です。

しかも、検出される量は微量ではありません。冷蔵・冷凍保存に使用されたポリスチレン容器を電子レンジで加熱した場合、10万~26万個のマイクロプラスチック粒子が放出されたとの報告があります。別の実験では、5分間の加熱で32万6千~53万4千個の粒子が食品へ移行する可能性が示されました。

問題は粒子だけにとどまりません。加熱によって放出される可能性のある化学物質も多岐にわたります。さまざまなプラスチックを合わせると、使用または含有される可能性のある化学物質は約16,000種類にのぼり、そのうち約4,200種類が有害と特定されています。一方で、多くの化学物質は有害性の評価すら行われていません。

さらに、食品に接触するプラスチック由来の化学物質1,396種類が人体から検出され、その一部では健康被害が確認されています。ただし、長期的影響については研究が不十分な物質も多数存在します。

電子レンジ加熱によって食品中へのマイクロプラスチックや化学物質の移行が増加することは、科学的に示されています。しかし、その長期的影響には不確実性が残り、既知の有害性と未知のリスクが併存している状況です。

プラスチック容器で食品を加熱すると、「電子レンジ対応」や「オーブン対応」と表示されたものでさえ、マイクロプラスチック、ナノプラスチック、有害化学物質が食事に放出される可能性があります。レトルト食品から残り物まで、PET、PP、PSなどの一般的なプラスチックは熱で分解し、私たちが毎日食べる食品を汚染します。この図解は、プラスチック包装が熱を隠れた曝露に変える仕組みを説明しています。
© William Morris-Julien / Greenpeace

「電子レンジ対応」は安全の保証か

写真: Shutterstock

「電子レンジ対応」や「オーブン対応」と表示された容器でも、マイクロプラスチックや化学物質が放出される可能性があります。

さらに、問題を複雑にするのがNIAS(非意図的添加物質)です。これは製造過程で副生成物として生じたり、加熱時に新たに生成されたりする化学物質を指します。ある研究では、紫外線安定剤として添加された物質が、電子レンジ加熱時に食品成分と反応し、未知の化学物質を生成することが示されました。

つまり、私たちは何に曝露(ばくろ)しているのか完全には把握できていないのです。

タバコ、アスベスト、鉛…私たちは同じ過ちを繰り返してきた

集められたタバコの吸い殻。グリーンピースは「ワールド・クリーンアップ・デー」に、パートナー団体、ボランティア等と協力し、清掃活動とプラスチック汚染企業の実態調査を実施。

プラスチックだけではなく、過ちを繰り返してきた前例があります。タバコ、アスベスト、鉛の事例では、現在目撃しているのと同様の展開が過去に繰り返されました。危険性を示す初期の研究があったにもかかわらず、産業界の利益が優先され、科学的な知見に疑念を投げかける動きが広まったのです。その結果、必要な対策は長い間先送りにされてきました。
その間、1950年から2000年にかけて、タバコだけで約6000万人が死亡しました。相関と因果関係を区別し、確かな証拠を見つけることは確かに重要ですが、より多くの被害者が出て初めて結論が確定するのを待つよりも、早期に予防措置を講じることも同様に重要です。

予防原則という考え方

ここで鍵となるのが「予防原則」です。これは、製品が有害であることを消費者が証明するのではなく、製造者が安全性を証明する責任を負うという考え方です。

EUのREACH規則*は「データがなければ市場に出さない」という原則を採用しています。しかし、プラスチックについては依然としてこの考え方が十分に適用されていません。さらに、一部の有害物質は「安全な低用量」とされる範囲で使用が認められていますが、低用量での長期影響が不明な物質も少なくありません。

※REACH(リーチ)規則とは、欧州連合(EU)が2007年に施行した、化学物質の「登録(Registration)」「評価(Evaluation)」「認可(Authorisation)」「制限(Restriction)」に関する包括的な規制。

前進するために必要なこと

政府は、私たちの健康を守るための行動を十分に迅速に行っていません。この状況を改善するためにできることは、数多くあります。

最も重要なのは、プラスチックの製造と消費を減らすことです。これは世界的な問題であり、2040年までに世界のプラスチック生産量を少なくとも75%削減し、有害なプラスチックと化学物質を排除する強力な「国際プラスチック条約」が必要です。そして今こそ、企業は消費者の健康に対するこの増大する脅威を真剣に受け止め、まずは食品包装や食品に接触する製品から改善を始めるべきです。

ここで、政策立案者と企業が実行できる具体的な行動、そして消費者向けの有益なヒントを以下に示します。

【政策立案者及び企業の行動】

  • 予防原則の実施:
    • 政策立案者向け – 本質的なリスクに基づいて有害なプラスチック及び化学物質の使用を停止すること。
    • 企業向け – 包装材からのマイクロプラスチック及び有害化学物質の食品への「ゼロ放出」を保証することを約束し、2035年までにこれを達成するための中間目標を定めた行動計画を策定すること。
  • 「電子レンジ対応」容器について消費者への誤った保証を停止すること
  • 使い捨てプラスチック包装の使用を停止し、リユース及び環境と健康に考慮した製品の普及を促進する政策とインセンティブを実施すること。

【消費者の行動】

  • 地元のスーパーや店舗に対し、可能な限りプラスチックの使用を控えるよう働きかけましょう
  • 食品の加熱・再加熱時にはプラスチック容器の使用を避けましょう
  • プラスチック以外の詰め替え用容器を使用しましょう

私たちができることとは?

グリーンピース・ジャパンが神奈川県大磯の海岸で実施した清掃活動。参加者は海岸で見つかったプラスチックの種類やブランドに関するデータも収集した。

プラスチックを完全に避けることは簡単ではありません。疲れてしまうのも当然です。

プラスチックに依存せざるを得ない環境の中で、私たちにできることには限界があります。プラスチックを作り汚染を続けている企業には、責任が問われなければならず、政府は人々の健康と地球を守るためより迅速に行動する必要があります。

私たちは今、世界各国のリーダーたちが脱プラスチックを加速させ、より健康的でリユースを基盤としたゼロ・ウェイストの未来へ導くことを強く求めます。プラスチック時代の終焉をもたらすこの「一世代に一度の機会」を、日本政府が無駄にしないよう見届けましょう。

そして、より安全で健康的な未来のために、今から少しずつあなたの行動を変えていきましょう。