当たり前になった猛暑、異常気象の頻発と激甚化。気候変動は、日本の主食である米にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。産地の気温の変化や品質への影響、米の価格が大きく揺れる仕組み、そして米と農家を守るために必要なことを、グリーンピース・ジャパンの報告書や国の統計などをもとに解説します。

今年の米の出来は? 新米に表れる猛暑の悪影響

新米が店頭に出回る季節になりました。実りの秋を楽しむこのタイミングは、その年の夏の暑さがバロメーターのように示される時期でもあります。特に、米は見た目や品質が、稲穂が出る「出穂(しゅっすい)」のあとの夏の気温に大きく左右されるからです。

米の栽培期間(暦図)
米の栽培期間(暦図)(出典:『秋の味覚が告げる気候変動の影響』グリーンピース・ジャパン)

今年の夏(6〜8月)の全国の平均気温は平年より1.02度高く、観測史上で5番目の暑さとなりました。

農林水産省によると、8月末時点の農産物検査において、2026年産米の「一等米比率(最も品質の高い「一等」に格付けされた米の割合)」は、全国平均で65.9パーセントと、2025年の同じ時期より0.6ポイント下げる結果となっています。

農水省は「例年並み」と評価していますが、一等落ちの主な要因は夏の高温による「白未熟粒」です。特に白未熟粒の出現が目立った西日本では、三重県で16.3パーセント、高知県で15.3パーセントという一等米比率も報告されました。

8月末時点の検査は早く収穫される「早場米」が中心で、収穫が進むにつれて比率が上がるのが通例です。ただし、今年は9月以降に長雨が発生し、その影響はまだ反映されていないため、反対に比率が悪化してしまう恐れもあると報じられています。

白未熟粒とは?

「白未熟粒」とは、白く濁ってしまった米粒で、出穂後20日間の平均気温が27度を超えるとリスクが急増するといわれています。

収穫した玄米の一部に見られる白未熟粒
収穫した玄米の一部に見られる白未熟粒。出穂後の期間に、高温などの影響でデンプンの蓄積が不十分となり、一部または全体が白く濁って見える白未熟粒が出現する。 Photo : Satoru Niwa / Greenpeace

農研機構などの研究グループは、白未熟粒を引き起こす高温の指標が2000年以降ほぼ全国で一貫して増えており、北海道以外では一等米比率が下がる重要な要因になっていると指摘しています。

気候変動で米の品質と収量はどう変わるのか

一等米比率は、夏が特に暑かった年に大きく落ち込むことがわかっています。出穂後の期間の暑さ指標が1度上がるだけで、一等米比率はおよそ15ポイント下がると推計されます。

実際に、記録的な猛暑となった2010年産(62パーセント)と2023年産(60.9パーセント)は、どちらも前年から15ポイント以上落ちていました*。

2001年からの全国の一等米比率の推移グラフ
2001年からの全国の一等米比率の推移。記録的な猛暑となった2010年と2023年に大きく落ち込んでいることがわかる(出典:農林水産省「水稲うるち玄米1等比率の推移」をもとにグリーンピース・ジャパン作成)

問題は、こうした「特に暑い夏」が当たり前になりつつあることです。グリーンピース・ジャパンの報告書『秋の味覚が告げる気候変動の影響』(2026年9月)では、全国で米の生産量が最も多い新潟県内の米どころに近い高田地方気象台における気温の推移を分析しました。

稲穂が出て実り始める8月の平均気温は、50年前(1966〜75年)の25.9度から、直近10年(2016〜25年)は27.4度に上がっています。白未熟粒が増えやすい27度を超える日は、8月の31日間のうち4日から22日に増えました(いずれも10年間の平均で比較)。

また、8月の日平均気温が26度を超えた分を「高温ストレス指標」として、約100年分の変化を分析したところ、指標は長期的に上がり続けており、特に2000年以降は上昇のペースが一段と速まっていることがわかりました。

新潟県上越市高田における8月の高温ストレス指標の推移(1926〜2025年)。グラフ
新潟県上越市高田における8月の高温ストレス指標の推移(1926〜2025年)。8月各日の平均気温が26度を超えた分を月平均した値で、大きいほど稲が強い高温にさらされたことを示す。赤い点線の枠は2000年以降(出典:グリーンピース・ジャパン『秋の味覚が告げる気候変動の影響』)

農研機構は、温暖化対策が進まず気温が大きく上がった場合には、全国の米に占める白未熟粒の割合は今世紀半ばに約2割、今世紀末には約4割に達し、収量も今世紀末には現在の約8割に減ると予測しています。

「令和のコメ騒動」はなぜ起きた? 米の価格変動のからくり

価格に目を移すと、話はさらに複雑になります。米の価格は、さまざまな要因が絡み合って動くからです。

世間を騒がせた2024年から25年にかけての値上がり、いわゆる「令和のコメ騒動」では、2025年5月の店頭価格が前年同月のおよそ2倍にまで跳ね上がりました。需要の見通し違いや流通の混乱が重なった結果ですが、要因の一つには、気候変動による猛暑の影響があります。

スーパーで販売される国産米
スーパーで販売される国産米。Photo : Ned Snowman / Shutterstock

農林水産省は、2023年の猛暑による高温障害などで精米したときに残る白米の割合が下がったことや、消費の増加を需給の見通しに十分反映できていなかったことを挙げています。生産量が需要に追いつかず、そこに流通実態の把握の甘さなどが拍車をかけるかたちとなりました。

米の価格は、需要と供給のバランス、そして政策にも大きく揺さぶられます。年に一度しか収穫できず、主食として国内生産を守るために輸入も限られているため、一度足りなくなると価格が大きく跳ね上がり、その影響は翌年以降まで尾を引きます。

豊作貧乏と米不足のはざまで──コメ騒動はまた起こるのか

「コメ騒動」を受けて、2026年の現在起きているのは状況の逆転です。6月末の米の民間在庫は過去最大の243万トンに達し、2027年6月末には最大283万トンと、適正水準とされる180万〜200万トンを大きく上回る見通しです。

米は在庫量が多くなりすぎても価格が下がる「豊作貧乏」をもたらし、農家を苦しめます。前年産の米が在庫として積み上がると、新米のほうが安く取引される「親不孝相場」も起こります。かといって、生産を絞ればよいわけではありません。

日本では、1970年代初めから半世紀近く、米の生産量を調整するための「減反政策*」が行われてきました。2018年産からは国が生産量の目標を配分する仕組み自体は廃止されましたが、その後も主食用米からほかの作物への転作を年間3,000億円近い補助金(水田活用の直接支払交付金)で後押ししています。

主食用米の作付面積は2018年の138.6万ヘクタールから、2023年には124.2万ヘクタールまで減りましたが、三菱総合研究所は、2024年から25年にかけての値上がりについて、「転作作物にシフトしすぎたことが要因の一つ」と分析しています。

*減反政策とは 過剰生産を避けて米の価格下落を防ぐため、農家に生産の抑制や転作を促す農業政策の通称

2023年の記録的猛暑を起点とした2024年から25年にかけての米の値上がり。年表
2023年の記録的猛暑を起点とした2024年から25年にかけての米の値上がり(出典:農林水産省資料を元にグリーンピース作成)

つまり、米の需給は「余ると農家を苦しめ、減らしすぎれば足りなくなる」という、余裕の少ない綱渡りの上にあるといえます。そして、そこに重なるのが気候変動です。

2023年の猛暑では、精米歩留まり(玄米を精米したときに残る白米の割合)が下がり、白米にしたときの供給が約10万トン減りました。そして、地球温暖化が進行する今、2023年から2026年までの直近4年は、すべての年が日本の夏季平均気温の観測史上(1898年以降)最も暑かった年5位以内を占めています。

猛暑と極端化する気候は、繊細な米の需給を狂わせる大きな要因です。今後、再び「米騒動」が発生するリスクはより高まっていると考えられるのです。

生産地のいまと農家の声

産地では、品種を変え、育て方を変え、働く時間を変え、あらゆる努力が尽くされています。しかし、その担い手は減り続けており、農林水産省によると、農業を主な仕事とする個人の農業従事者の数は、今年初めて100万人を下回りました。平均年齢は67.7歳、70歳以上が半数以上を占め、高齢化による離農が進んでいます。

こうした状況の中、グリーンピース・ジャパンのアンケートでは、生産者のほとんどが、過去5年間に高温や猛暑の影響を経験していることがわかりました。福島県の米農家は、「高温障害による外観品質低下(白未熟粒等)や登熟不良による収量低下が当地区全体でここ数年で増えている」と話します。

問題になっているのは「暑さ」だけにとどまりません。岐阜県白川町で有機栽培の米づくりを行う菊地さんは、「著しく収量が下がった」という2025年を、「雨がほとんど降らなかったため、水を引いている沢が枯れた」と振り返ります。

「この年はいい、この年は悪いっていうのが、本当にその年によって変わってしまう」。菊地さんがそう語るように、極端化する気候に、減り続け高齢化する人手で対応し続けることには限りがあります。

グリーンピースの取材に応じる菊地さん
グリーンピースの取材に応じる菊地さん。波田八反(はたはったん)とササニシキを育てている。岐阜県白川町(2026年8月25日)Photo : Satoru Niwa / Greenpeace

農作業の危険度も高まっています。菊地さんは、夏季はできるだけ日中を避けて、早朝に作業を行うようにしていますが、それでも「危ない」と感じる瞬間は多いといいます。実際に、農作業中の熱中症での死亡者数は、2024年に59人と、2021年の約2.5倍に増え、過去最多となりました。

米と農家を守るために──水田政策と再エネ転換の両輪で

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温暖化が進むほど「適応策」の効果は下がり、より多くの人間社会や自然が「適応の限界」に達すると警告しています。

岐阜県の白川町で、有機で米作りを行う菊地さんが手入れをする田んぼの様子
岐阜県の白川町で、有機で米作りを行う菊地さんが手入れをする田んぼの様子。標高約500メートル以上であるのにかかわらず、気温は35度を超えた(2026年8月25日)Photo : Satoru Niwa / Greenpeace

日本の米と農家を守るには、農家の努力だけに頼らない政策による後押しが必要です。米の需給と価格を安定させる水田政策や米政策、暑さと向き合う産地への支援はその柱となるものです。しかし、それだけでは夏の暑さや気象の極端化を止めることはできません。

農業を脅かす気候変動を根本から食い止めるには、すぐにでも温室効果ガスの排出を大幅に減らす必要があります。日本の温室効果ガス排出の9割近くは、石炭や石油、ガスを燃やしてエネルギーを得るときに出る二酸化炭素です。米と農家を守るためにも、脱炭素に向けたエネルギー転換が不可欠なのです。

農地を利用して発電するソーラーシェアリングには、生産者自身も期待を寄せています。神奈川県のサツマイモ農家からは「一番やりたいのはソーラーシェアリング」との声が寄せられました。

ソーラーシェアリングを採用した水田上の太陽光発電パネル
ソーラーシェアリングを採用した水田上の太陽光発電パネル。茨城県神栖市(2017年6月)Photo: Σ64/ CC BY 3.0

米の一粒一粒には、暑さや水不足と向き合いながら田を守る人たちの工夫が詰まっています。来年も10年後もその先も、おいしいごはんが食卓に並ぶよう、その努力を生産者だけに背負わせるのは終わりにしなければなりません。

私たち一人ひとりが「食の危機」を自分の問題としてとらえ、農業を支える政策と、早急なエネルギー転換を後押ししていく時です。

グリーンピースは、気候変動の加速を抑止するのみならず、日本において価格高騰や供給途絶の不安なく使えるエネルギーを増やすことにもつながる省エネ・再エネキャンペーンに取り組んでいます。