豪雨災害をもたらす線状降水帯は増える?気候変動との関係と私たちの対策
近年、線状降水帯による豪雨災害が全国各地で発生しています。線状降水帯の発生傾向についてはまだ研究途上ですが、気候変動の進行に伴いその発生頻度や強度が高まる可能性が示されるようになってきました。一方で、短時間に大量の雨が降る「極端な大雨」は、地球温暖化の進行により増加していることが明らかになっています。気温が上昇すると、大気中に含まれる水蒸気量が増え、より多くの雨を降らせるためです。
本記事では、線状降水帯のメカニズムや気候変動との関係、私たちに今できる備えと対策を、グリーンピースの視点で解説します。
この投稿を読むとわかること
線状降水帯とは何か?
「線状降水帯」とは、発達した積乱雲が同じ場所で発生し続けることで線状に並び、長時間にわたって強い雨を降らせる現象です。
通常の大雨と異なるのは「同じ場所で雨が降り続く」という点です。強い雨が数時間にわたって同じ地域に降り続くため、河川の氾濫や浸水、土砂災害などの危険性を急激に高めます。
線状降水帯が生まれるメカニズムは、大量の暖かく湿った空気が大気の下層に流れ込み、その空気が上昇することで、発達した積乱雲が次々に発生し、帯状に連なることで形成されます。ただし発生メカニズムは未解明な部分も多く、正確な予測は現在でも容易ではありません*。
気象庁は2020年に、線状降水帯について「長さ50〜300km程度、幅20〜50km程度の線状」などの検出基準を定めました。一般向けに情報の発表を開始したのは翌2021年のことで、一般的に知られるようになったのは比較的最近です*。
線状降水帯は増えているのか?

線状降水帯そのものが増えているかどうかは、まだ十分な観測データが蓄積されておらず、現時点では判断できていません。気象研究所の分析では2018年以降に多い傾向が見られますが、分析に用いられた約15年分のデータでは長期的な増加傾向あると断定できていません*。
一方で、線状降水帯などがもたらす豪雨については、増加傾向を示す研究結果が報告されています。
気象研究所によると、集中豪雨の発生頻度は過去45年間で約2.2倍に増加し、7月の発生頻度は3.8倍に達しました。梅雨期の集中豪雨の多くは線状降水帯によるものであるため、線状降水帯も増加している可能性が指摘されています *。
さらに気象庁気象研究所や京都大学などの研究チームによる気候シミュレーションでは、温暖化が進むほど大雨や線状降水帯の頻度・強度が増加すると予測されています *。
ただし、地球温暖化に伴う線状降水帯の変化に関する知見はまだ十分ではなく、更なる研究が必要であるともされています。
気候変動と豪雨の関係

豪雨とは「著しい災害が発生した顕著な大雨現象」のことで、こうした大雨と気候変動の関係は明確になってきています。
気象庁の観測データによると、1時間あたり80mm以上、3時間あたり150mm以上などの大雨の発生頻度は1980年頃と比べて約2倍に増加し、強い雨ほど発生頻度が増えています *。
1時間に80mm以上の雨は「猛烈な雨」とされ、滝のように激しく降り、視界が悪くなるほどの強さです *。
日本全体の年間降水量に大きな変化は見られないことから、「一度に降る雨がより激しくなっている」という変化が起きていることがわかります。
極端な大雨が増加している理由の一つが、 地球温暖化による大気中の水蒸気量の増加です。
気温が1℃上昇すると大気が保持できる水蒸気量は約7%増えるとされています *。 人間活動による温室効果ガス排出が気温を押し上げた結果、大気中の水蒸気が増え、一度に降る雨がより激しくなっているのです。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、人間活動による温暖化は「疑う余地がない」と結論づけており、豪雨を含む極端気象の頻度や強度が高まっていることも示しています*。
深刻化する日本の豪雨災害

近年、日本では毎年のように大規模な豪雨災害が発生しています。
2018年の西日本豪雨では、死者・行方不明者が232人*にのぼり、平成以降で最も深刻な水害となりました。2020年の熊本豪雨では球磨川の氾濫や土砂災害が発生し、65人*が犠牲となっています。
その後も、2023年には九州北部や秋田県で、2024年には能登半島で豪雨による洪水や土砂災害が発生するなど、各地で被害が続いています。
経済的な損失も深刻です。 過去10年間(2013〜2022年)の水害被害額の合計は約7.2兆円にものぼりました*。
気候変動が進むほどそのコストはさらに膨らんでいく可能性があります。
世界でも広がる豪雨被害

豪雨災害の深刻化は、日本だけの問題ではありません。
2024年10月、スペイン東部のバレンシア州ではわずか数時間で1年分に相当する雨が降り、死者は155人に達しました。気候変動分析機関(WWA)は、今回の豪雨は産業革命前と比べて強度が約12%増大し、起こり得る確率は2倍になったと分析しています*。
今年の5月には、中国の湖南省や湖北省、貴州省などで豪雨と洪水が発生し、少なくとも22人が死亡しました*。専門家は、豪雨が約1000キロ以上と異例の広範囲に広がったと指摘しました*。
2025年末には、東南アジア地域で豪雨による洪水や土砂崩れが相次ぎ、地域全体で約1000人が死亡したと報じられています*。
日本はその地形から豪雨災害を受けやすいとされていますが、世界でも豪雨災害が頻発し、深刻な被害をもたらしているのです。
豪雨から命を守るための備え

7月から10月にかけては、日本に接近する台風も多くなることから、土石流や河川の氾濫といった自然災害が発生しやすくなる時期です。
国土交通省のハザードマップポータルサイトなどを活用し、自宅や職場周辺にどのような災害リスクがあるのか確認しておきましょう。
また、避難場所や避難経路を家族で共有し、災害時に迷わず行動できるよう準備しておくことも大切です。
線状降水帯による災害は短時間で危険な状況に発展します。「まだ大丈夫」と考えず、早めの避難を心がけることが命を守る行動につながります。
豪雨災害を減らすために、今必要なこと

防災対策は重要ですが、それだけでは豪雨災害そのものを減らすことはできません。豪雨や線状降水帯のリスクを高めている気候変動の進行を食い止めることが、長期的には最も重要な対策です。
気候変動の主な原因は化石燃料の利用による温室効果ガスの排出であり、私たちの生活に大きく関係しています。そして、日本や世界各地では豪雨や洪水が頻発し気候変動の影響がすでに現れています。
豪雨災害から命や暮らしを守るためには、防災対策とともに、気候変動そのものへの対策を加速させる必要があります。
グリーンピースは、化石燃料への依存から脱却し、再生可能エネルギーへの公正な移行を進めることを求めています。特に太陽光発電は気候変動対策としてだけでなく、災害時のレジリエンスを強化することにも繋がります。
豪雨災害が当たり前にならない未来のために、今こそ気候変動対策を前に進めることが求められています。
