暑すぎる日が増えている理由|猛暑の背景にある気候変動とは
近年、暑すぎる日が増えていると感じている人は多いでしょう。年々、危険な暑さをともなう日が増える背景には、地球規模の気候変動と都市化の影響が密接に関係しています。本記事では、猛暑の定義から原因、社会への影響、そして私たちが取り組むべき対策までを詳しく解説します。
この投稿を読むとわかること
猛暑日は増え続けている

2023年と2024年の夏は、いずれも観測史上で最も暑い夏となり、2年連続で記録を更新しました。
猛暑日(日最高気温が35℃以上となる日)の地点数は2024年に1万箇所を超え、福岡県太宰府市では40日連続で猛暑日となるなど、各地で過去最多記録を更新。日本の猛暑日は年々増加しています*。
2025年の夏も気象庁によると、平年より気温が高くなると予測されており、残暑も厳しくなる見込みです。
猛暑とは? 夏日、真夏日との違い
猛暑日は、気象庁が2007年から正式に定義した気象用語で、1日の最高気温が35℃以上の日を指します*。これに対して、真夏日は最高気温が30℃以上、夏日は25℃以上の日を意味し、暑さの程度によって区別されています。

なお、夜間の最低気温が25℃以上の「熱帯夜」も夏の暑さを示す重要な指標です。昔は、都市部でも熱帯夜は数えるほどでした。それが今では、クーラー無しでは寝られないという方も多いのではないでしょうか。
猛暑日が増加している背景には、地球温暖化による気温上昇と都市部でのヒートアイランド現象が複合的に影響しており、特に都市部では日中だけでなく夜間も気温が下がりにくく、体感的な暑さが増しています。
猛暑になる原因とは?

地球温暖化は、化石燃料の大量消費による温室効果ガスの増加が大気中の熱を蓄積させ、全体的な気温上昇が引き起こされることで起こっています*。
猛暑が酷くなっている主な原因は地球温暖化ですが、その他に、都市部ではアスファルトやコンクリートの蓄熱、緑地の減少、エアコンの排熱などが重なり、夜間も気温が下がりにくいヒートアイランド現象が発生し、猛暑をさらに悪化させています*。
さらに、温暖化の影響で偏西風が大きく蛇行することが増え、夏には熱帯地方の暖気が流れ込みやすくなっています。また、高気圧が温暖な空気を地表近くに押し下げるヒートドーム現象も熱波の激化や長期化を引き起こします。こうした大気の流れによる一時的な気象条件や、エルニーニョ現象による海面水温の変化も猛暑の一因です。地球温暖化にこうした要因が重なり合うことで、近年の猛暑日増加に拍車をかけています*。
地球温暖化の影響

地球温暖化の進行に目を移すと、地球の平均気温は2024年には産業革命以前と比較してすでに1.55度上昇しました。
国立環境研究所などの研究によって、地球温暖化が進むことで、猛暑や熱波の発生頻度は今後さらに大幅に増加すると明らかになっています。具体的には、この先、産業革命以前と比較した気温上昇が2度に達すると、猛暑日の発生回数は現在の1.8倍になるといわれています。
猛暑日の増加をはじめ、極端な熱波は、日本だけではなく世界各地で観測されており、今後も温暖化が進行することでさらに悪化すると予測されています。
ヒートアイランド現象の影響

ヒートアイランド現象とは、都市部の気温が周辺の郊外よりも著しく高くなる現象です。
エアコンや自動車などの人工排熱が増え、緑地が減少してアスファルトやコンクリート面が増えたこと、さらに建物の密集による風通しの悪さなどが原因で引き起こされています。
気象庁によると、東京都心では過去100年間で平均気温が約3℃上昇し、郊外との気温差が拡大、また東京周辺で30℃以上となる時間数が、1980年代前半の年間200時間程度から20年前には約2倍に増加し、範囲も郊外へと広がりつつあります*。
ヒートアイランド現象は、都市部の猛暑日や熱帯夜の増加、ひいては熱中症リスクの上昇、エネルギー消費の増大など、生活や健康、経済活動にさまざまな悪影響を及ぼします。今後も都市化が進むことで、ヒートアイランド現象の影響は深刻化することが懸念されています。
猛暑がもたらす影響

猛暑は自然環境、健康、経済活動に深刻な影響を及ぼします。
自然面では、大雨、短時間強雨の発生が増加していることも報告されており、土砂災害や浸水などの気候災害を起こしやすくしています
健康面では、熱中症のリスクを高め、高齢者や子どもを中心に健康被害を引き起こしています。
さらに、経済や生活面では、農水産物の不作や品質低下、漁業資源への影響による価格高騰、電力需要の増大など、社会全体に大きな負担をもたらしています。
中でも、冷房需要の急増は電力供給を逼迫させ、「需給ひっ迫注意報」が発令されるなど電力不足が深刻化しています。2024年夏には関東地方で計画停電の可能性も浮上しました。
猛暑は、単に気温の上昇という気候の変化にとどまらず、そこから派生するいくつもの深刻な影響を私たちの暮らしに与えているのです。次に、分野ごとの具体的な影響を紹介していきます。
自然への影響
猛暑日の増加により、ゲリラ豪雨や集中豪雨の発生が増え、河川の氾濫や土砂災害、床上浸水などの被害が各地で多発しています。極端な降雨の増加は地上と上空の気温差が大きくなることで積乱雲が発達しやすくなるために起こっています。
また、厳しい暑さによる農作物への影響は著しく、2024年にはコメの民間在庫量が過去最少となったほか、高温障害による品質低下や収穫量の減少も深刻化しています*。
果実の品質低下や大幅な作物の収穫量の減少なども見られ、今後も気候変動の進行による被害拡大が懸念されています。
健康・体調へのリスク

猛暑の影響で、熱中症による救急搬送者や死亡者が増加しています。熱中症と聞くと炎天下の工事現場や運動場といった高温環境での発症をイメージしますが、近年は庭先を含む家庭での発生が半数を超える年も見られるようになっています*。
熱中症による死者数が1,000人を超える年が続き、2020年には死亡総数の87%を65歳以上の高齢者が占めています。今後も気温の上昇にともない、熱中症のリスクがいっそう高まると予測されています。
また、夜間の気温が高い熱帯夜の増加は睡眠不足を招き、体調不良や労働生産性の低下、うつ症状の悪化などの悪影響も懸念されています。
その他、気温が上がることで、感染症を媒介する蚊の生息域が拡大し、活動期間が長期化することがわかっており、温暖化の進行によってこれまで日本国内では発生していなかった感染症例が発生する可能性が危惧されています。
社会ですすむ猛暑への取り組み

現在、社会全体で猛暑対策が進められています。
猛暑対策として、屋上緑化などの施策も広く見られるようになりましたが、もっとも有効なのは、建物の断熱です。断熱材を使用すると、外気の熱が室内に伝わりにくくなり、冷房効率が向上、その結果、室内温度の上昇を抑えて快適な環境を維持できます。
日本では、住宅の性能表示の一つとして断熱の等級が設けられていますが、1999年に設けられた「等級4」以上の等級が存在しませんでした。しかし、2022年、市民の力強い後押しや住宅業界、環境団体などの要請によって、日本でも5〜7の断熱等級が新しく設けられ、2023年6月には建築物省エネ法の改正案が成立しました。
グリーンピース・ジャパンは、気候変動による猛暑から子どもたちを守るため、学校施設の断熱改修の必要性をひろく訴えています。市民や自治体が連携し、断熱ワークショップや署名活動を通じて学校環境の改善を目指しています。
猛暑が「当たり前」になる前に未来を変えるのは、今の私たち

酷い猛暑が夏の当たり前になりつつある今だからこそ、未来を変えるためには、個人と社会が両側からの行動が不可欠です。
日常生活では、冷房の設定温度を28℃前後に保ち、炎天下での外出を控えるなどの工夫も、できることのひとつです。さらに、再生可能エネルギーの利用拡大は、温室効果ガスの排出削減や大気汚染の抑制に直結し、地球温暖化の進行を防ぐ効果があります。
太陽光や風力などのクリーンエネルギーへの切り替えは、将来世代にも持続可能な環境を残す重要な選択肢です。自宅の電力を再生可能エネルギーへ替えることは、一人ひとりができる簡単で、しかも大きなインパクトのあるアクションです。加えて、自治体にゼロ・エミッションなどを推進する政策提言や地域の取り組みに参加することは、同じ思いを持った仲間に出会えて楽しみながら社会システムの転換を後押しできる行動です。
グリーンピースは、個人からの寄付だけを資金に、企業や政府の気候危機への対策を評価、課題や方針の提言を行い、透明性と持続可能性のある行動を促しています。55の地域・国にまたがるグリーンピースの国際的なネットワークを通じて市民の声を世界のリーダーに届け、変化を後押ししています。
気候危機という地球規模の課題に対し、社会全体の取り組みにあわせて、一人ひとりの意識改革が求められています。未来は、今の私たちの選択と行動で大きく変えることができるのです。