国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は11月22日、同月7日にトヨタ自動車(愛知県豊田市)に送付し公開していた「トヨタ自動車の気候変動対策に関する公開質問状」(注1)について、同社より受領した回答を公開しました。公開質問状では、同社の(1)温室効果ガス排出削減目標の根拠、(2) 電気自動車(EV)の販売目標と温室効果ガス排出削減の関係、(3)気候変動が脆弱な立場に置かれた人々へ及ぼす影響と途上国の資金ニーズ、の3点について、回答を求めており、期限としていた11月20日に同社から回答がありました。

<トヨタの回答の要点>

  • トヨタは2022年にSBTi(Science Based Targets initiative)の認定を受けたカーボンニュートラル目標を掲げており、各地域の人々への最適なカーボンニュートラルの実現を進めるべく努めている。
  • グリーンピースから受け取った質問内容については、最新のデータや取り組み内容を同社のサステナビリティデータブックに掲載している。
  • トヨタとグリーンピースのカーボンニュートラルに対する志は同一のものと考えている。

>>公開質問状に対するトヨタ自動車の回答全文はこちら https://www.greenpeace.org/japan/wp/wp-content/uploads/2024/11/20241120_open-letter.pdf

>>グリーンピースの公開質問状はこちら https://www.greenpeace.org/japan/wp/wp-content/uploads/2024/11/20241107-Open-letter.pdf


この回答についてのグリーンピース・ジャパンのコメントは以下の通りです。

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、塩畑真里子

「グリーンピースが送付した公開質問状に回答し、市民社会と向き合う姿勢を示したトヨタ自動車の関係者の皆様に感謝の意を表します。

公開質問状の質問は、トヨタが年2回発行するサステナビリティデータブックの内容を精査し、記載のない内容について照会したものでした。このため、同データブックに解答が記載されていないことは明らかであり、同社からの回答が、同データブックを参照するようにというものであったことは残念です。

温室効果ガス削減目標についての質問に対する回答では、トヨタが掲げるカーボンニュートラル目標が『2022年にSBTiの認定を受けた』とありますが、現行のSBTiで対象にされる削減目標の設定は限定的です。同社の排出量のうち、Scope 3(その他間接排出)について、全世界で販売される車両から排出される温室効果ガスは、『カテゴリー11販売した製品の使用』として算出、報告されますが、認定を受けているのは、販売される新車1台あたりの燃費を向上させることで排出削減が期待されるというものであり、排出量そのものではありません。また、大量の温室効果ガスを排出する鉄鋼など、サプライチェーンからの排出量削減については、認定の対象になっていません。

トヨタのサステナビリティデータブックのなかでは、ハイブリッド車普及実績による『CO2排出抑制効果』が述べられていますが、その一方でトヨタの実際の温室効果ガス排出の総量は増加の一途を辿っています。2021年に約4.6億トンであった二酸化炭素排出量が2023年には約5.9億トンに増加しています(注2)。また、バッテリー電気自動車(BEV)の販売割合の増加による排出量減少の予測も記述はありません。また、現在アゼルバイジャンで開催されているCOP29の重要な議題である気候資金に関しても明確な回答はありませんでした。

グリーンピースは、今回のトヨタの回答を受け、引き続き同社に対し、世界標準と整合性があり、野心的な温室効果ガス排出削減目標を早急に設定することを求めるとともに、実際の総排出量削減のために現実的かつ効果的な手段を講じることを働きかけていきます」


以上


(注1)2024年11月7日プレスリリース『トヨタに気候変動対策に関する公開質問状を送付 』https://www.greenpeace.org/japan/press-release/open-letter/
(注2)2024年10月トヨタ自動車『サステナビリティデータブック』、23ページおよび49ページ https://global.toyota/jp/sustainability/report/sdb/