毎年各地で大きな賑わいを見せるお花見シーズン。春の訪れを祝う楽しい季節行事ですが、花見の後に大量に残されるゴミが例年問題となっています。なかでもゴミの大部分を占める飲料カップや食事用の使い捨て容器などのゴミを減らそうと、中目黒のまちづくりに取り組む一般社団法人ナカメエリアマネジメントが、3月20日から4月6日までの期間、花見の名所の一つである東京・中目黒(東京都目黒区)で「ナカメサーキュラーチャレンジ」(注1)を実施しています。目黒川沿いにあるイベントスペース・フナイリバに設営されたフードコートで、循環型カップやリユース容器(4月5日限定)を提供するほか、回収ステーションで集めたプラスチックごみや割り箸をリサイクルして資源として循環させ、使い捨てゴミをゼロにすることが狙いです。会場を訪れた人々は、キッチンカーで購入した料理や飲み物をリユース容器や循環型カップで受け取り、ゴミの出ないお花見を楽しんでいました。

多くの人々が飲食を楽しんでいたアウトドアのフードコート

東京では3月30日に桜の満開日を迎えた後に寒い雨の日が続き、ようやくお花見日和の週末となったため、中目黒エリアは多くの花見客で賑わっていました。目黒川沿いでは混雑を緩和するため、歩きながら花見を楽しむことが推奨されており、道ゆく人々は片手に飲み物や食べ物を持ち、桜の木々を見上げながら歩いています。

フナイリバから目黒川沿いを彩る桜並木が見えた

今回のイベントでは、リユース容器貸し出しサービスの「Megloo(メグルー)」が、4月5日限定で食事用のリユース容器を提供しました。フナイリバに並んだ9台のキッチンカーのうち、タコス屋台とベトナムの麺料理フォーを出す屋台の2カ所が、リユース容器提供の取り組みに参加。タコスは早々に売り切れていたので、ココナッツヌードルを注文しました。通常Meglooのサービスを利用する際は公式LINEアカウントの登録が必要ですが、この日はイベントのためLINEを使わず容器の貸し借りができました。食べ終わった後、キッチンカーに返却された容器はMeglooが回収し、近隣の洗浄施設で洗浄され、また後日に再度利用できる仕組みです。Meglooの担当者によると、この日のために200個の容器を準備し、15時頃の時点で約半数が使用されていました。

主催団体・ナカメエリアマネジメント事務局の大塚さんは「2020年からカップの提供を始めましたが、今年は試験的にリユース容器の導入にも挑戦しました。お客さんには、リユース容器で食べる方が美味しいと言ってもらえましたよ。こうした取り組みも続けたいが、いずれはお客さんがマイカップや容器を持参して、ゴミを出さない楽しみ方が広がってほしい」と話します。

軽くて丈夫なプロピレン製の容器でフォーが提供された
リユース容器の返却を促すポスター

イベント終了後に出る大量のゴミ問題に取り組んでいるのは、お花見イベントだけではありません。日本三大祭として知られる京都の祇園祭や大阪の天神祭でも、数年前からリユース容器を導入して使い捨てゴミを減らす取り組みを行っており、祇園祭では取り組みを始めたことで2012年には60トンあった燃やすゴミを、2024年には約28トンにまで減らすことに成功しています(注2)。このほか近年では、スポーツの試合会場や音楽フェス、大阪万博でもリユース容器導入の取り組みが進んでおり、今後さらなる広がりが見込まれています。約20年前からリユース容器の普及に取り組んでいる地球・人間環境フォーラムの天野さんは、「今後のさらなる拡大のためには、十分な在庫の確保や洗浄施設の拡充、リユースの取り組みを後押しする政策が必要だ」といいます。

国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は昨年、リユース容器貸し出しサービスを利用できる店舗や事業者を検索することが可能なウェブサイト「グッバイ・ウェイスト」を公開し、リユース拡大の後押しをしています(注3)。フナイリバでリユース容器の案内をするなどのボランティア活動に参加したグリーンピース・ジャパン、コミュニティアウトリーチ担当の増山理人は「多くの来場者がゴミが出ないことを喜んでいたと思います。このようにリユース容器を使ったり資源が循環する仕組みを体験したりできる機会や場所が広がれば、使い捨て容器ごみをさらに減らすことができます。自治体や企業には、積極的にリユース容器を体験する機会を提供していくことを期待します」としています。

(注1)ナカメサーキュラーチャレンジ(2025年3月7日発表)

(注2)祇園祭ごみゼロ大作戦 公式サイト

(注3)グリーンピース・ジャパン プレスリリース「リユース容器貸し出しサービスが利用可能な店舗が検索できる!ーーごみを出さないお買い物マップ『グッバイ・ウェイスト』リニューアル」(2024年6月20日発表)