小学生の子供たちに身近なスポーツを通して気候変動の影響と解決策について考えてもらおうと、国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは8月9日、東京都千代田区の上智大学四谷キャンパスで開催されたイベント「サッカーができなくなる日!?ーーサッカーを通して地球温暖化を学ぼう」に協力団体として参加しました。本イベントは、上智大学公認学生団体「シャクル」が主催し、グリーンピースが協力。小学生と保護者ら23人が参加し、気候変動について、暑さ対策の実践ワークやサッカー体験を通じて理解を深めました。

気候変動の影響で年々夏の暑さは厳しさを増し、最高気温の記録更新が続いています。こうした中、スポーツへの影響も深刻化しています(注1)。気候変動の影響は、スポーツの試合や練習にも及んでいる現状があるとして、今年5月、Jリーグと日本財団が「サステナビリティ領域における連携協定」を締結するなど、スポーツ界でも課題意識が高まっています(注2)。グリーンピースは本イベントを通じて、猛暑がサッカーをはじめとするスポーツにどのような影響を及ぼしているのか、また、省エネや断熱といった解決策について子供たちと一緒に考えました。

イベント前半では、同大学の教室でグリーンピースが地球温暖化と解決策に関するレクチャーを実施。グリーンピースは地球温暖化による気候変動のメカニズムを解説し、 主な原因である大気中の二酸化炭素濃度が上昇している背景や、温暖化を止めるための再生可能エネルギーの活用や省エネの果たす役割について具体的な事例を交えながら説明しました。レクチャーの後は「理想の体育館」をテーマにしたワークショップを実施し、子供たちは自分の思い描く快適で安全な体育館について自由にアイデアを発表し、子供ならではの柔軟でユニークな発想が飛び交いました。子供たちからは「地球温暖化について勉強になった」「夏もサッカーがしたい」といった声が上がりました。

また、シャクルからは、プロサッカー選手が実践する暑さ対策や、スポーツ観戦時にできる温暖化対策、夏の体調管理についてのワークショップが行われ、子供たちは起床時間や朝食を記録していました。

その後、同キャンパスの体育館でサッカー大会が開催され、子供たちは汗を流しながらプレーを楽しんでいました。この日の外気温は31度で、冷房をつけた体育館でも、運動をすると汗がにじむほどの蒸し暑さでした。今回使用した体育館では冷房が稼働していましたが、全国には冷暖房が未設置の学校体育館が多く存在しています。さらに、冷房が設置されていても断熱対策が不十分な体育館では、エネルギー効率が低く、十分に暑さ対策が行えないという課題があります(注3)。

イベントに参加した小学4年生は「温暖化対策は大事だと思った。スポーツ選手の暑さ対策を試してみたい」と話していました。また小学生の保護者は「この暑さの中でも子供たちは外で練習している。子供たちのためにも環境問題について学ぶ機会を持ててよかった」と気候変動による子供への影響を危惧していました。

グリーンピース・ジャパン気候変動・エネルギー担当の豊田育生は「今年の夏も異常な暑さが続き、子供たちが安全に運動することさえ難しい日が増えています。今回のイベントは子供たちに気候変動の現状を伝える機会となりましたが、責任をとって行動するべきなのは、意思決定に関わる大人たちです。気候変動の影響が学校現場にも及んでおり、熱中症リスクの高まりや活動の制限が日常化しています。対策として、冷房の設置だけでなく、建物の断熱改修を早急にすすめることが必要です。また、気候変動を抑えるためには、化石燃料による発電を段階的に廃止し、再エネへの移行を進める必要があります」と話しています。

(注1)ウェザーニュース「スポーツ基本法に『気候の変動』初めて明記、スポーツ時の熱中症対策」(2025年7月26日)

(注2)朝日新聞「『温暖化はみんなの悩み』 Jリーグと日本財団が気候変動対策に本腰」(2025年5月11日)

(注3)東京新聞「暑くて運動どころじゃ…学校体育館へのエアコン設置に国がやる気を出した でも、それだけでは不十分なワケ」(2025年5月11日)