みなさんは普段、外出時にマイカップを持ち歩いていますか? コーヒーなどの手持ちの飲み物を買おうと思っても、マイカップが手元になく、使い捨てカップを使うしかなかったという経験はないでしょうか?

台湾では2022年、グリーンピースのキャンペーンと、キャンペーンに賛同する台湾市民の呼びかけに応え、最大手コンビニのひとつであるファミリーマートが、全店舗の10分の1にあたる400店舗で、返却式リユースカップの導入をスタートしました。また並行して、台湾の環境保護局も、使い捨てカップの使用制限に関する方針を正式に発表しました。 これは、スピーディにビジネスモデルを変えることができる企業への働きかけと、環境により良いビジネスモデルを制度化して社会に広めるための政府への働きかけが相乗効果を生んだ、成功事例です。

どうしたら日本でもこのようなポジティブな変化を起こすことができるでしょうか?

約100年前から使われてきたプラスチック。人類に便利さと発展をもたらしてきましたが、使い捨てプラスチックの氾濫で、海や川の生態系だけでなく、空気、塩、ミネラルウォーターなど、地球上のあらゆる場所でプラスチック汚染が広がっています。2022年3月に、新しい研究で初めて人間の血液からマイクロプラスチックが発見され、世界は衝撃を受けました*

近年、世界中で使い捨てプラスチックの規制が進み、2022年3月には生産・消費・廃棄の全ライフサイクルでプラスチックを規制する法的拘束力のある「プラスチック条約」を作ることが国連で採択され、審議が始まろうとしています*

使い捨ての象徴:コーヒーのテイクアウト

あらゆる使い捨てアイテムの中でも、コーヒーカップは近年、現代の使い捨て社会の象徴の一つになっています。

最大手のスターバックスだけでも、1年間に全世界で70億個もの使い捨てカップを使用しており、テイクアウトだけでなく店内で飲む場合にも使われるほど、使い捨てカップの使用は当たり前になっています。

グリーンピース・ジャパンは、日本のスターバックスに対して、コーヒー業界を牽引する大企業として、店内でのマグカップやグラスの利用を徹底し、返却式リユースカップの活用を全国で展開するように、働きかけています*

出社前のコーヒー、午後の休憩など、コーヒーは私たちにとって気分転換や癒しの重要なパートナーですが、使い捨てカップに頼りすぎて日本だけでも年間39億個の使い捨てカップが使用されています via.shutterstock

脱使い捨てカップへ進む台湾

台湾から、2022年4月末に素晴らしいニュースが届きました。

台湾の環境保護局が「使い捨て飲料用カップの使用制限と実施方法」を正式に発表し、スケジュールを前倒しして、使い捨てプラスチックカップの制限が進むことになったのです。

台湾も、日本と同じように使い捨てコーヒーカップが広く使われ、2020年には台湾だけで20億個近くの使い捨てカップが使用されました。

プラスチック製使い捨てカップを減らす台湾の計画の中身とは?

台湾のグリーンピースはここ数年、環境保護局と連携し、規制するプラスチック製品の範囲を拡大し、規制のスケジュールを前倒しするように働きかけてきましたが、2022年4月末、ようやく使い捨てカップから抜本的な改革を開始する、との回答を得ました。 

主な施策は以下の通りです:

  • 2022年7月1日から、台湾のすべての飲料チェーン、コンビニチェーン、ファストフードチェーン、スーパーマーケットチェーンは、容器を持参して飲料を購入した利用者に、最低5台湾ドル(約21円)の値引きを提供することが義務付けられる
  • 2023年1月1日から、コンビニチェーンとファーストフードチェーンは、返却式リユースカップのレンタルサービスを提供することが義務化される
  • 2024年12月31日までに、地方自治体は飲料店での使い捨てプラスチックカップの使用を制限するための行動計画を報告することが義務付けられる
使い捨てカップに換わる、洗って何度も使える返却式リユースカップなら、便利さを保ったままごみを減らすことができる(2020年8月)

このような決定は、利用者側にマイカップの持参を促すだけでなく、便利な返却式リユースカップを提供し、使い捨てプラスチックごみを大幅に削減できます。

「企業が変わる」 x 「政府が変わる」の相乗効果

台湾ではこれに先立って、グリーンピースの働きかけにより、最大手のコンビニのひとつであるファミリーマートが、コーヒーを買う利用者に、返却式リユースカップを無料で貸し出すサービスを開始しました。グリーンピースが台中市からも支援を受けて実施した小規模な実証実験への参加を経て、台湾全土の10%にあたる400店舗で、大規模に展開されます*

台湾のファミリーマートが導入した返却式リユースカップ。利用者は無料で借りることができ、飲み終わったら返却BOXや店舗に戻す(2021年8月)

今回の台湾でのファミリーマートの返却式リユースカップの導入と、それに続く台湾全土での使い捨てカップの規制は、市民による、企業への働きかけと政府への働きかけが、相乗効果を生んだ成功事例と言えます。

私たちグリーンピースは、企業と政府への働きかけに力を入れている環境NGOです。企業がスピーディに新しい試みを取り入れること、そうした試みを政府が制度化して社会全体がその取り組みを行うようになることで、環境により良いことが当たり前の社会へのシフトを加速させることができるからです。

台湾のグリーンピースは、アーティストのアーロン氏と協力して、返却式リユースカップの便利さや環境へのメリットを利用者に伝えるイベントも開催(2021年12月)

日本でもリユースを当たり前にするために

グリーンピース・ジャパンは2021年から、スターバックスと使い捨てカップを大幅に減らすための対話を重ねてきました。

  • 返却式リユースカップを取り入れること
  • 店内ではマグカップやグラスを徹底すること
  • テイクアウトカップを有料にしてマイカップや返却式リユースカップの利用を促進すること

など、海外で使い捨てカップの削減に効果のあった事例を情報共有したり、返却式リユースカップを求める市民の声を伝えたりしました。

その後、スターバックスは丸の内や渋谷など、東京都内でリユースカップの実証実験を開始し、限られた店舗ではあるものの店内で冷たい飲み物にリユースできるグラスを利用することを発表しました。しかし、今はまだ非常に限定的な範囲での取り組みで、大幅な削減を実現するには、厳しい状況です。

スターバックスが実証実験として一部店舗で導入した返却式リユースカップと使い捨てカップ(2022年5月)

現在は、サポーターに協力してもらい、実際に店内でどれくらいマグカップやグラスが活用されているのかを調べる市民参加型調査を行ったり、大規模にリユースカップ導入が進む台湾のグリーンピースと協力して、日本でもリユースを加速させるための東アジア地域ぐるみの活動を進めたりしています。

こうした活動は、すべてグリーンピースの企業や政府への働きかけのインパクトを信じ、共に活動してくださる寄付サポーターの力で支えられています

日本でも、調査や働きかけによって企業の行動を促し、社会のシステムを変えることを目指す活動を加速させるために、あなたも今日からグリーンピースの寄付サポーターになりませんか?