【住まいの断熱 Q&A】気密性・コスト・施工リスク・カビ対策まで専門家に聞いた6つの疑問
この投稿を読むとわかること

気候変動が深刻化するなか、日本のエネルギー消費の約3分の1を占める住宅、建物の省エネ化が急がれます。その要となるのが「断熱」です。断熱は単なる省エネ対策にとどまらず、快適な暮らし、居住者の健康、さらには災害時の備えとしても有効です。専門家に聞いた断熱にまつわる具体的な質問への回答をまとめました。
断熱で省エネ・快適・防災──建築家の竹内昌義さんに聞くQ&A
グリーンピース・ジャパンは、2026年3月17日(火)にグリーンピースが事務局を務める「ゼロエミッションを実現する会」と共催で、オンラインウェビナー「建築家の竹内昌義さんに聞く『断熱』の力〜省エネ・快適・そして防災も〜」を開催しました。
ウェビナーには167名の方が参加し、日本の住宅の断熱に詳しい建築家の竹内昌義さんに、約1時間にわたりお話いただきました。
断熱がもたらす多面的なメリットや、国際基準への遅れが指摘される日本の断熱事情、そして私たちがめざすべき住まいのあり方についてなどが、日常の言葉でわかりやすく展開された必聴の内容です。
ウェビナーの視聴を希望される方は、録画動画を無料公開していますので、以下のフォームよりお申し込みください。
質疑応答タイムには、参加者から多数の具体的な質問が寄せられました。この記事では、ウェビナーに寄せられた断熱に関する実践的な質問への竹内昌義さんの回答をQ&A形式でまとめてお届けします。
回答者
竹内昌義(たけうち まさよし)さん

1962年、神奈川県生まれ。建築家。『みかんぐみ』共同代表、エネルギーまちづくり社代表取締役、一般社団法人パッシブハウスジャパン理事。東京工業大学大学院理工学専攻科建築学専攻修士課程修了。建築設計を専門とし、エコ・リノベーションも含めた暮らしのあり方や、社会の仕組みを変える新しい住まい方を追求している。
断熱の基礎知識──基本的な仕組みを理解する

気密性と断熱性の違い
「気密性が高い=断熱性が高い」という理解で正しいですか? また、気密と断熱の関係性、および気密性向上の限界について教えてください。

「気密性と断熱性の違い」について
建築家の答え🔍
気密性は、住宅にどのくらいの隙間があるかを示す性能のことで、「C値(相当隙間面積)」を使って数値で表すことができます。
ポイント! 建築物の気密性を表す指標「C値」とは
「建物の隙間面積の合計(平方センチメートル)÷ 建物の延床面積(平方メートル)」で割り出され、cm²/m²(1平方メートルあたりの隙間の広さを平方センチメートルで示す)の単位で表されます。この数値が小さいほど隙間が少なく、気密性が高いことを意味します。
エコハウスの基準として広く使われているC値「1.0㎠/㎡」は、建物の床面積1平方メートルあたり、1平方センチメートルの隙間があることを表します。たとえば延床面積100平方メートルの家でC値が1.0㎠/㎡の場合、100平方センチメートル、つまり10センチ角の穴が開いているのと同等の隙間があることになりますが、これでも十分に小さい値です。
実際の測定は、ポンプで室内の空気を吸い出して圧力差を計算する方法(気密測定)で行い、C値はあくまで実測値です。理論上の限界はC値=0㎠/㎡ですが、慣れた工務店でC値=0.5㎠/㎡が出れば優秀といえます。
断熱性能は断熱材の厚さで決まるため、気密性と断熱性は直接イコールの関係ではありません。ただし、気密性が高いと隙間風がなくなり、結果として体感的・実質的な断熱性能が上がります。

気密性の確認方法
DIYで内窓を作った場合などの気密性はどのように確認すればいいですか?

「気密性の確認方法」について
建築家の答え🔍
隙間風を手のひらで感じる方法と同じように、手で窓の周囲から冷気(または熱気)が入ってこないかを確認するのがよいと思います。DIYの内窓の気密性を機械で正確に計測することは難しいため、まずは感覚的な確認が現実的です。

風通し VS 気密性
「風通しの良い家のほうが長持ちする」と聞いたことがありますが、きちんと断熱、結露対策をされた家であれば問題ないでしょうか?

「風通し VS 気密性」について
建築家の答え🔍
「風通し」には2種類あります。ひとつは窓を開けたときに室内を通る自然の風、もうひとつは壁の中を流れる空気「壁内通気(壁体内通気)」です。
前者については、空気がよく流れるように、2面以上、別の壁(向かい合いなど)に窓を設けることが大切です。後者の「壁内通気」は、室内の温かく湿った空気が断熱材に入り込まないよう気密層を設け、壁の外側には空気が流れる通気層を確保することが重要です。
ご質問の通り、きちんとした設計・施工がなされていれば問題ありません。
断熱の実践──設備、コスト、導入判断の知識

家庭用蓄電池の導入
太陽光発電と家庭用蓄電池の導入を検討しています。以前のお話で「家庭用蓄電池は時期尚早」とのことでしたが、もう少し待てばさらに性能が上がりますか?

「家庭用蓄電池の導入」について
建築家の答え🔍
はい、以前そのようにお伝えしました。蓄電池の性能自体はあまり変わっていませんが、価格は下がってきています。
※ 竹内さんが参考として紹介されたREPOストレージ株式会社は、蓄電池や太陽光の活用で、電力利用者が自ら電力を確保する安心と経済性の両立したサービスを提供しています。Instagramでは蓄電池を含むエネルギー自給に関する情報発信も。

二世帯住宅の断熱コスト
高性能住宅は建築費が高いイメージがありますが、二世帯住宅にすれば二世帯でコストを分担できて、経済的に有利でしょうか?

「二世帯住宅の断熱コスト」について
建築家の答え🔍
はい、その通りです。二世帯住宅やアパートなど、まとめて建てることができれば、一戸あたりのコストを下げられますので、コストパフォーマンスが高くなります。
断熱の品質管理──施工リスクや注意点

高性能住宅の施工リスク
「日経クロステック」などで、全館空調・熱交換換気システムのダクト内のカビ、夏型結露、基礎断熱した床下のカビといった、高性能住宅の施工事故の事例を目にします。高気密高断熱の設計・施工は、誰もが気軽にできるものではないのでしょうか?

「高性能住宅の施工リスク」について
建築家の答え🔍
それぞれの事故には、おおよそ次のような原因が考えられます。
全館空調・熱交換換気システムのダクト内のカビ:湿気を含んだ空気を給気してしまうこと、あるいは排気経路に著しく湿気を帯びたものがある場合に起こります。換気の基本的な設計知識が不足していることが主な原因です。
夏型結露:気密層の素材・位置の選定で防ぐことができます。また、冷房の冷気をどの経路で流すかという設計上の問題でもあります。結露のメカニズムへの理解が不十分な場合に生じやすい問題です。
基礎断熱した床下のカビ:ほとんどの場合、建て方(上棟)以降に木造の床材を雨などで濡らしてしまった、あるいは建物の乾燥工程を十分に行わなかったことが原因です。
いずれも、見よう見まねで基本を押さえずに施工すると事故のリスクがあることは確かです。ただ、基本をきちんと理解して施工すれば、それほど難しいものではありません。
断熱をよく知って、快適でエコな暮らしを実践しよう
断熱に関する技術的な疑問から、実践的なコストの考え方、施工上の注意点まで、幅広いテーマについて竹内さんに丁寧にお答えいただきました。
断熱は、省エネによって家計を助け、脱炭素に貢献するだけでなく、快適性、健康、防災という複数の課題を解決できる、豊かな暮らしの選択肢です。
グリーンピース・ジャパンでは、住まいと気候変動をつなぐ情報発信や学習機会の提供を行なっています。興味をお持ちいただけた方は、ぜひグリーンピースからの情報をメルマガでお楽しみください。