【全国意識調査】市民の多数は太陽光発電を拒否していない──普及の鍵は屋根置きと本質的価値の提供
この投稿を読むとわかること

グリーンピース・ジャパンが全国1,032人を対象に実施した太陽光発電に関する意識調査から、市民は太陽光を一律に拒否しているのではなく、開発の進め方に不安を持っているという現状が明らかになりました。調査からは、政策と情報環境の整備という2つの課題が明示され、市民の声がすでに普及の方向性を具体的に指し示していることがわかります。
太陽光発電への本音に迫る全国意識調査
グリーンピース・ジャパンは2026年5月12日、全国1,032人を対象とした太陽光発電に関する意識調査の結果を発表しました。調査では、回答者を「環境問題への関心の有無」と「再生可能エネルギー(以下、再エネ)を必要と思うか否か」という二軸で4つの層(グループ1〜4)に分類し、各層から均等にデータを収集、分析しています。
これによって、しばしば「賛成か反対か」の二項対立で語られがちである太陽光発電について、層ごとの懸念や許容条件の違いを精査することが可能となりました。

調査結果からは、太陽光発電をめぐる議論は決して「賛成か反対か」の単純な二項対立ではないということが示されています。この記事では『太陽光発電に関する意識調査』の結果から、太陽光普及のボトルネックを究明し、必要な対策を整理します。
日本における太陽光発電への不信の背景
日本での太陽光発電への意識形成には、FIT制度*導入以降に急増したメガソーラーをめぐり、山林伐採や景観破壊など開発の問題への強い批判が影響しています。
特に、2025年に紛糾した釧路湿原国立公園周辺で建設が進められていたメガソーラーのように、森林法等の法令違反や、住民への説明不足など問題がある一部の開発への危惧や批判が、太陽光発電そのものへの忌避感につながっている可能性が指摘されています**。
*FIT制度とは 固定価格買取制度(FIT)制度とは、電力会社が、再エネで発電した電気を国が定めた一定価格で一定期間買い取ることを保障するものです。電力会社が買い取る費用の一部は、賦課金として消費者によって支払われます。
しかし、再エネ普及の必要性と、現時点の制度設計が抱える問題とは切り離して考える必要があります。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、取り返しのつかない気候変動を避けるため、2050年代初頭には二酸化炭素排出を実質ゼロにする必要があり、化石燃料の大幅削減と再エネの拡大は不可欠と結論づけているように、再エネ移行は環境と社会を持続させるためにも必須です。現状の制度の問題から太陽光発電自体や再エネそのものを否定すれば、本末転倒になってしまいます。
市民は太陽光発電を拒絶していない
意識調査の結果が示すのは、市民もまた、太陽光発電を無条件に拒否しているのではないという事実です。
「太陽光パネルを置いても良い(置くべき)」と、納得できる場所をたずねたところ、全層で「公共施設」、「住宅」、「工場・倉庫」といった建造物の屋根への設置が支持の1位から3位までをを占めました。
再エネ反対派も屋根置きを許容
注目されるのは、再エネは不要と考える層(グループ2および4)でも、約4割〜5割が「公共施設の屋根」への設置を許容していた点です。「再エネ反対派」に分類される層にも、すでに開発済みの場所を有効活用するかたちでの設置であれば許容できると考える人が一定数いることがわかりました。
加えて、太陽光発電に親和的であると考えられるグループ1でも、「未利用地(耕作放棄地など)」への設置容認は12.4パーセントにとどまりました。
計画の不透明さと環境への影響に対する不安が太陽光発電への不信に大きく作用していると考えられます。
世界では屋根置きが太陽光発電普及の主役に
国際エネルギー機関(以下、IEA)は、屋根置きに代表される分散型太陽光(住宅や工場、店舗など消費地付近での小規模な発電)が、今後の太陽光発電普及の成長ドライバーになると位置づけています。IEAの予測では、2024〜2030年の新規太陽光設置量の約40パーセントを分散型が占める見通しです。
実際に、欧州や一部の新興国では、屋根置きが太陽光発電の主要な導入形態です。イタリアでは2024年の新規太陽光設置量の約80パーセントを分散型が占め、ドイツ、ブラジル、パキスタンでも屋根置きが普及を牽引しています。

分散型太陽光の普及は、すでに世界各地で実現しており、大規模開発に頼らずとも、太陽光発電を普及させる道筋は国際的にも実証されています。
太陽光発電への不安は「進め方」に集中
人々の不安の矛先を掘り下げてみると、どこに太陽光発電普及のボトルネックがあるのかが見えてきます。
自然環境への影響
太陽光発電についての「懸念点と課題」をたずねた設問では、再エネへの賛否を問わず、ほぼ全層で「自然環境への影響」が最多となり、特に「環境問題関心有×再エネ不要(グループ2)」では77.5パーセント、「環境問題関心有×再エネ必要(グループ1)」でも68.2パーセントと、第一の不安要因になっていることがわかります。
リサイクル体制
第二の不安は、リサイクル体制です。全層の約71〜93パーセントが廃棄パネルのリサイクル体制が必須、または考慮すべきと回答しました。「環境問題関心有×再エネ不要(グループ2)」層では非常に重要と考える人が75.6パーセントに上り、再エネに懐疑的な層ほどリサイクル体制の整備を強く求めていることがわかります。
※太陽光パネルのリサイクルに関する法案は、4月に閣議決定されており、7月17日までの今国会会期中に成立する見通しです。ただし、全面義務化ではないため、今後も強化が求められます。

家計負担の見えにくさ
続く第三の不安に、導入による家計負担の見えにくさがあがります。「日本で再エネ導入がスムーズに進まない理由」として、層を問わず約44〜46パーセントが「電気代などの家計負担増や不透明さ」と回答しました。再エネ導入が生活にどう影響するかが見えてこないことが普及の障壁となっています。
3つの不安に共通するのは、導入から廃棄・再資源化までのプロセスに起因しているという点です。これら不安の解消には情報の透明化を前提とした適切なルール整備が必要です。調査で示された市民の声は、すでに望ましい普及の方向性を具体的に示しています。
世界の動向が届かない日本の情報環境
こうした不安は法整備で解消されるはずのものです。それにもかかわらず、太陽光発電への漠然とした抵抗感が広がるのはどうしてなのでしょうか。ルール整備と並んで浮かび上がるのが、情報環境の問題です。
太陽光発電に関する情報について、環境問題に関心のある層では、「再エネを必要と考える(グループ1)」および「再エネを不要と考える(グループ2)」の両方が、それぞれ35.7パーセントの割合で「情報が多すぎて判断に迷う」と回答した一方、「環境問題関心無 × 再エネ必要(グループ3)」では47.3パーセントが「情報に触れる機会がほとんどない」と答えており、情報過多と情報不足が並立しています。
さらに、日常的に触れる太陽光発電の情報について、ネガティブな情報がポジティブな情報を大きく上回っている現実があります。再エネ不要層の約60〜71パーセントがネガティブな情報により多く接触しており、また、すべての層でポジティブな情報へより多く接触していると答えた割合は約1割と限定的でした。

ネガティブなニュースの入手先として、「再エネを不要と考える層(グループ2および4)」は、20〜28パーセントと他層と比べてより多い割合でYouTube等のSNSを選択しており、アルゴリズムの影響も危惧されます。
世界は「どう速くするか」日本は「必要かどうか」
2023年12月のCOP28では2030年までの再エネ3倍化が国際的に合意されました。IEAは2030年までに世界の電力供給の46パーセントを再エネが占める見通しを示しています。
実際に、EUに加盟する27カ国の再エネ発電比率は平均47.5パーセントに達しています(2024年時点)。より比率が高い国ではデンマークの88.4パーセント(主に風力)、オーストリアの86.7パーセント(主に水力)、ポルトガルの85.2パーセントと、主電源としての実力は実証済みです。
日本では、発電における再エネ比率は20.7パーセント(バイオマスのぞく)にとどまり、化石燃料による発電は65.2パーセントを占めています(ISEP)。

ホルムズショック後の世界のエネルギー動向
ホルムズ海峡危機を受けて、いまや世界的な議論の中心は「どのように再エネを加速させるか」という普及スピードの話へと移っています。
欧州委員会は化石燃料依存からの脱却を加速させるため、電気税・系統費用の引き下げや、再エネや水素、省エネ等の脱炭素エネルギープロジェクトにEU資金を再配分する戦略「アクセラレートEU(AccelerateEU)」を打ち出しました。スペインやギリシャなど再エネ比率の高い国では、ホルムズ海峡危機による電気料金への影響が相対的に小さかったことも指摘されています。
一方、日本では、周回遅れの「再エネが必要かどうか」という議論がメディアを賑わせるばかりか、「どのエネルギーを選ぶべきか」という選択肢のテーブルには脱落したはずの化石燃料が並んでいます。
情報環境の歪みがもたらす日本のガラパゴス化
多くの国がホルムズ海峡危機を再エネ加速の契機と捉えた一方、日本は対照的に2026年3月にガソリン補助金を再開し、2022年の開始以降累計9兆円以上**となる巨額の財源を投じてきました。IEAが提言する在宅勤務や公共交通機関の利用促進などの省エネルギー対策も行なっていません。

日本のエネルギー選択が国際スタンダードから大きくずれている現状は、意識調査が明らかにした情報環境の歪みと相互に助長しあっていることが考えられます。
ストラスクライド大学アカデミックビジターの安田陽氏は、日本と世界の間には再エネに関する「情報ギャップ」が存在すると指摘しています(『2050年再エネ9割の未来 脱炭素達成のシナリオと科学的根拠(山と溪谷社)』)。
安田陽氏は、不十分な翻訳や報道によって国際機関が示す科学的知見が届かない一方で、ネガティブ面が強調されるメディア傾向や、結論の出た問題を「賛否両論」として扱う報道姿勢などが主な要因となり、日本語の情報空間に、国際基準の科学的情報にアクセスしにくい状況が生まれていると警告します。
科学的な最新情報へのアクセスの困難さが、合意形成の障壁となり、エネルギー分野においても日本のガラパゴス化を引き起こしかねません。
声を政策へ 市民はすでに答えを示している
調査では、屋根置きへの広い支持や、自然環境への影響やリサイクル体制への懸念、そして公的ルール整備への要求が明らかとなりました。これらは、市民がすでに普及の方向性を具体的に示していることを意味しています。

しかし、こうした声を社会全体で共有するためには、科学的根拠に基づいた正確な情報が市民に届く情報環境の整備が不可欠であり、メディアによるセンセーショナリズムに頼らずエビデンスに基づいた情報発信が必要です。
世界がエネルギー転換を加速させる中、日本のエネルギー政策は取り残され、リスクを増しています。調査結果を踏まえ、グリーンピース・ジャパンは政府および企業に対して以下の4点を提言します。
屋根置きを普及の軸に
政策によって、新築住宅や公共施設など景観・自然環境を損なわない建物への設置を義務化し、初期費用ゼロの仕組みや税制優遇等で経済的なハードルを下げることで、市民が最も広く支持する形での普及が実現します。
問題のある開発を許さない仕組みを
野立て太陽光については環境アセスメントの厳格化、ゾーニングの徹底や住民合意を導入の前提条件とすれば、無秩序な開発への批判が太陽光全体への不信につながる悪循環を断ち切ることができます。
廃棄パネルのリサイクル
政府がパネルの再資源化を法律で義務付け、事業者との連携で広域リサイクルネットワークを構築することができれば、太陽光を「将来世代に負担を残さないエネルギー」として定着させることができます。
国際基準の科学的情報を市民に届ける
メディアや政府が電気代への影響や成功事例について科学的根拠に基づく情報を積極的に発信することで、日本の「情報ギャップ」が埋まり、合意形成が前進します。
グリーンピースは、日本において価格高騰や供給途絶の不安なく使えるエネルギーを増やすことにもつながる再エネ・省エネキャンペーンに取り組んでいます。
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