イラン攻撃後のエネルギーショックに各国はどう対応したか

米イスラエルによるイランへの大規模軍事攻撃が行われて以来、中東の情勢は混迷を極めています。停戦交渉は合意に至っておらず、ホルムズ海峡の通航への制限も継続し、世界規模のエネルギー危機が起きています。各国は原油高騰やエネルギー不足にどのような対応を取っているのか、また、日本の対応は各国の姿勢と比較し、どう位置付けられるのでしょうか。これまでに導入された対応策を分析しました。
ホルムズ海峡危機が浮き彫りにした化石燃料の大きすぎる弱点
2026年2月28日に始まった米・イスラエル政府によるイランへの軍事攻撃をきっかけに、中東に広がった戦火はすでに民間人を含む数千人の命を奪いました。4月7日には、米・イラン間で2週間の停戦が合意されましたが、イスラエルによるレバノンへの攻撃で新たな死傷者が発生したことで交渉は頓挫、ホルムズ海峡の通航制限も続いています。
世界の海上石油輸送の約25%を通していたホルムズ海峡は通航が制限され、石油・ガス施設の破壊や閉鎖も相次いだことで原油価格が急騰、エネルギー市場が世界的な混乱に陥りました。

国際エネルギー機関(IEA)は、この事態を石油市場における「史上最大の供給途絶」になると指摘しています。これまで何度も指摘されてきた中東地域の地政学リスクによる原油供給の停止という典型的なリスクシナリオが現実のものとなり、化石燃料に依存した経済のもろさが浮き彫りになりました。
瞬く間にエネルギー料金、輸送コスト、食料価格が跳ね上がり、ホルムズ海峡のような、戦略的封鎖が可能な海上輸送路を通る化石燃料に世界の経済が大きく依存していることを物語っています。
輸入化石燃料に強く依存する構造が立ち行かなくなり、脅かされているのは私たち市民の生活です。
各国はエネルギーショックにどう対応したか
グリーンピースはホルムズ海峡危機以降に取られた各国のエネルギー危機への対策を分析しました。
エネルギー危機を受けて各国が実施した対策

パキスタンやベトナムは、省エネ対策と、既存の再生可能エネルギーシステムの利用や拡大によって、コスト急騰による打撃を緩和しています。エジプトは、再エネプロジェクトの優先的な推進を表明しました。これらの国では、一時的な措置にとどまらず、将来を見据えたエネルギー対策が取られているといえます。
再エネ転換には至らずとも、タイ、デンマークのように、エネルギー節約に軸足を置く政策が取られた国が世界的に多く目立ちました。
国際エネルギー機関(IEA)によると、IEAが把握追跡した国のうち、30カ国(オーストラリア、アルゼンチン、バングラデシュ、ブルネイ、チリ、カンボジア、エジプト、エチオピア、インド、インドネシア、ヨルダン、韓国、ラオス、リトアニア、マレーシア、モルディブ、モーリシャス、ミャンマー、ネパール、パキスタン、ペルー、フィリピン、セネガル、シンガポール、スロバキア、スロベニア、スペイン、スリランカ、タイ、ベトナム)で、こうした省エネ推進による緊急的なエネルギー保全措置が講じられていました。省エネは、IEAが「第一の燃料」と表現するように、実質的に輸入燃料に代わる機能を果たします。
さらなる化石燃料依存を引き起こしかねない「ガソリン補助金」
一方、日本や韓国では、補助金や税制優遇、石炭火力発電の制限解除など、化石燃料依存を強めたり長引かせたりする恐れのある対策が取られています。日韓の両国とも、ホルムズ海峡経由の原油依存度が高かったため、事態が深刻化したことが指摘されています。
より詳しくみると、日本の原油のホルムズ海峡依存度(90パーセント)は韓国(68パーセント)を大きく上回ります。しかし、日本政府は、現在のところ経済を優先した莫大なガソリン補助金の拠出を行いながら、省エネの推進を呼びかけていません(4月13日現在)。
石油価格高騰を受けて政府がとるべき対応は?
エネルギー危機の対応でまず重要となるのは、多くの国で行われている「テレワークの奨励や義務化」、「公務員の勤務日削減」、「空調温度の制限」、「学校や公共施設の時短」、「公共交通の利用促進と車両利用の抑制」といったエネルギー需要の削減推進によるエネルギー不足から派生する差し迫った混乱への対処です。
ニュージーランドが行なっているように、低所得世帯への臨時支援も脆弱な層への影響を最小化する短期措置として有効です。
さらに必要なのが、将来的な危機に備え、影響を受けにくい再エネ中心システムへの移行を加速するという根本策です。石油やガスへの依存構造を変えない限り、世界情勢に大きく左右され、安定した社会や暮らしが脅かされ続けることになるからです。
ホルムズ海峡危機は、化石燃料を基盤とする社会経済に潜む格差構造をあぶり出しました。化石燃料企業のような大企業が巨額の利益を得る一方で、人々はその代償を、命や激化する異常気象、高騰する生活費で支払わされています。

戦争と化石燃料に費やされた1円は、公正で緑豊かな未来からかすめ取られた1円です。公的資金は破壊のためではなく、子どもたちに自然に満ちた地球を引き継ぐためにこそ使われるべきです。
再エネはなぜ有事に強いのか
「エネルギー危機の最中に再エネ投資などできない」。本当にそうでしょうか。再エネは初期費用が安く、大規模なインフラ投資も不要です。さらに、化石燃料プラントや原子力発電より、はるかに迅速な普及が可能です。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2024年には再生可能エネルギーが世界の新規発電設備増加量の92.5パーセントを占め、年間585ギガワット分が新たに追加されています。
太陽光単独でも過去最高となる453ギガワット分が加わりました。再生可能エネルギーは、すでに世界で新たに導入される発電設備の大半を占めているのです。

再エネの利点は、温室効果ガスの排出量削減だけではありません。風力と太陽光を基盤とした分散型のシステムは妨害工作が難しく、海上封鎖や輸送の混乱にも強く、有事の際には家庭、学校、病院など、重要施設の機能の維持に貢献します。
本当の安全保障は、軍事化や化石燃料システムに資金を注ぎ込むことでは達成されません。人々を本当に守るシステムである再エネ、医療、公共サービスへの投資から生まれるものです。
化石燃料への依存を断ち切り、再エネを中心としたエネルギーシステムを拡大する政策が必要です。これが実現されれば、災害に強いまちづくりが進み、家計に優しいエネルギーが手に入り、海外紛争に生活を左右されるリスクは低減します。
人と地球のために最善のエネルギー対策は、安全で安定した費用対効果の高い再エネシステムのいち早い実現、今この瞬間にこそ必要な変化です。
グリーンピース・ジャパンは2026年4月1日に、中東情勢の悪化によるエネルギー危機と関連製品の価格高騰について、日本政府に脱化石燃料依存のための早急なシステム転換を求める声明を発表しました。
▶︎声明はこちらからお読みいただけます
この記事は2026年4月1日に公開されたグリーンピース・インターナショナルのCamilo Sánchez & John Noëlによる記事 “How is your government responding to the war on Iran and the oil price shock?” を基に日本語訳および加筆編集されたものです。