タイパビリオンにて『御渡り/MIWATARI』を鑑賞する来場者ら(2024年11月18日 アゼルバイジャン、バクー)

アゼルバイジャンの首都バクーで開かれている国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)で11月18日、タイ政府主催のサイドイベントとして、気候変動の影響で存続の危機に立つ長野県・諏訪湖の伝統神事をテーマにした映像作品『御渡り/MIWATARI』(小野友資監督、注1)がダイジェスト上映されました。COP29会場のバクー・オリンピックスタジアム内に設置されたタイパビリオンで行われた上映会には、COPに参加している各国の関係者が足を運び、熱心に作品を鑑賞したり、その後のパネルディスカッションに耳を傾けるなどしていました。

本作は国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)が、昨年11月に開催した気候変動をテーマにした展示会で発表した約11分の映像作品で、昼夜の寒暖差によって諏訪湖の湖面に巨大な氷の筋が現れる自然現象・御渡り(神渡り、御神渡り)が、近年の気候変動でその出現が減少しているさまを映像に収めています。今年2月、バンコクで開催された気候変動をテーマにした国際映画祭「Changing Climate, Changing Lives Film Festival(CCCL)」(注2)で、ドキュメンタリー部門審査員大賞を受賞しており、今回タイ政府のサイドイベントの一環として上映されることになりました(注3)。

「気候変動アクションの促進:持続可能な未来に向けた若者のリーダーシップとストーリーテリング」と題して行われた上映会の会場には、現地時間午前10時の上映開始前から、各国の政府や企業、報道関係者が集まり、上映が始まると、会場では、自然がつくる美しい光景やその歴史の深さへの感嘆の声が上がったり、近年出現頻度が減少していることへの危機感にため息が漏れるなどしていました。

長野県諏訪市の金子ゆかり市長からの動画メッセージも紹介された

CCCLが選出した『御渡り/MIWATARI』を含む3つの映像作品の上映後は、パネルディスカッションが行われ、同映画祭アートディレクターのナコーン・シャイシー氏やグリーンピース・ジャパン、シニア政策渉外担当の小池宏隆らが登壇し、気候変動対策におけるユースの役割などについて意見を交換しました。また、諏訪市の金子ゆかり市長からの動画メッセージも紹介され、「諏訪の人々は、諏訪湖が結氷しないことに、自然環境への危機を感じています」と訴えるとともに、諏訪市ゼロカーボンシティ宣言などの取り組みについて話しました。

パネルディスカッションで議論する登壇者ら

グリーンピース・ジャパンの小池宏隆は今回の上映会開催について「郷土の歴史ある自然現象が、気候変動が及ぼす影響で消滅しかかっているという事実を映像によって伝えることで、気候変動の影響をこれまで実感しづらかった人たちにも危機感を感じてもらうことができます。本作品を通じて、一緒に社会を変えることに取り組む人が増えることを期待しています」と話しています。

『御渡り/MIWATARI』は、11月20日(水)午後7時より、長野県諏訪市でも上映会&トークイベントが開催される予定です(注4)。会場は、長野県諏訪市の上諏訪駅前交流テラス「すわっチャオ」フリースペース。上映後には御渡り神事を執り行う八劔神社の宮坂清宮司らが登壇するトークイベントも予定されています。

(注1)2023年11月にグリーンピース・ジャパンが東京で主催した気候変動をアートで感じる展覧会「HELP展」の展示作品として、クリエイティブユニットHAKUAが制作した映像作品。

(注2)グリーンピース・ジャパン「諏訪湖の神事と気候変動描く映像作品『御渡り』 タイの国際映画祭でドキュメンタリー部門審査員大賞を受賞」(2024年2月18日発表)

(注3)グリーンピース・ジャパン「【COP29】諏訪湖の伝統神事と気候変動描く映像作品『御渡り』、COP29のサイドイベントで上映決定」(2024年10月18日発表)

(注4)https://miwatari1120.peatix.com/view