国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は本日5月8日、東京都内で開催されたトヨタ自動車の2025年3月期決算説明会に合わせ、同社主催の記者会見場入口付近で、「トヨタさん、今すぐ総排出量を減らしてください」などと書かれたメッセージボードを掲げ、同社に、温室効果ガス(GHG)総排出量の削減を訴えました。

会場入り口付近でメッセージボードを掲げるグリーンピースのスタッフら © Masaya Noda / Greenpeace

トヨタは同日の決算説明会で、2025年3月期に4兆7650億円の純利益を計上したことを発表しました。この業績の背景にはアメリカ市場でのハイブリッド車の堅調な販売拡大などがあります。しかし、その一方で、同社は販売した製品から排出されるGHG総排出量を増やし続けています。2024年の世界での販売台数約1千万台のうち、バッテリー電気自動車(BEV)の割合はわずか1.39%にとどまり、98%以上が化石燃料を使うハイブリッドを含む内燃機関車でした(注1)。これは、同社が同年販売した大多数の車両が今後10年以上にわたって温室効果ガスを排出し続けることを意味します。

トヨタ自身の計算によると、2023年度に同社が世界で排出したGHG排出量は二酸化炭素換算で5億9,389万トンで、日本の総排出量(2023年)の64%に相当し、ドイツや英国など主要国の排出量を上回っています(図1参照)。また、近年これらの国が排出量を減少させているのとは対照的に、トヨタは世界での排出量を増加させています(図2参照)。

図1)日本を含む主要国の2023年の温室効果ガス排出量            図2)日本を含む主要国とトヨタの温室効果ガス
とトヨタが同年に世界で排出した温室効果ガス排出量(注2)            排出量推移(2020-2023年)(注3)

グリーンピース・ジャパン 気候変動・エネルギー担当、塩畑真里子

「トヨタは、昨年、認証不正問題を受けて製造の一部が停止するなどの問題に直面しましたが、その逆風にも関わらず多大な利益を記録しました。これだけの力がある企業だからこそ、気候変動により野心的に取り組む力と責任も有しているのではないでしょうか。現在、トヨタの販売した車からのGHG排出量削減目標は、原単位に基づいたもので、販売台数が増えるほど、総排出量も増えることになります。総排出量を削減する目標の設定はビジネス全体に影響することであり、そう簡単ではないことは理解できます。しかし、日本全体の半分以上に相当する温室効果ガスを排出する企業活動が、今後も上限を定めずに継続されることを看過することはできません。トヨタは気候変動対策により本腰を入れ、自動車一台あたりの原単位の削減目標に加え、1.5度目標と整合する総排出量の削減目標も明確に設定すべきです」

<参考資料>

グリーンピース・ジャパン 報告資料『日本の自動車企業の排出量の現状と課題』(2025年3月12日発表)

(注1)トヨタが2024年に世界で販売した乗用車10,159,336台のうち、BEVは139,892台であった。トヨタの「2024年度 販売・生産・輸出実績」ウェブサイト参照

(注2)(注3)日本含め4カ国の排出量は国際エネルギー機関(IEA)データに基づく。トヨタの排出量は、同社のサステナビリティ・データ・ブック参照