[2022年 年次報告書] 原発にも化石燃料にも頼らない、2050年ネットゼロへの道筋
この投稿を読むとわかること
▼この記事を読むとわかること > #DrivingChangeキャンペーン/a> >市民とともに地方自治体をカーボンニュートラルに! ゼロエミッション キャンペーン > 神宮外苑1000本の樹木を切らないで ーー都市の樹木の役割を気候変動の観点から考える > COP27-気候変動枠組条約締約国会議に参加 |
2022年はロシア軍によるウクライナ侵攻によって、化石燃料に依存したエネルギー安全保障や、有事の際の原子力発電所がいかに大きなリスクを抱えているかが浮き彫りとなりました。世界各地での気象災害も続き、東京では6月下旬の最高気温が過去147年間で最高を記録。グリーンピース・ジャパンは、時事ニュースに呼応する発信をタイムリーに行いながら、世界各地と連携して、世界のエネルギー起源CO2の23%を排出する運輸部門を代表する自動車メーカーへの働きかけを強め、気候変動対策を加速させています。また、グリーンピース・ジャパンが事務局を務める「ゼロエミッションを実現する会」が建物の断熱を義務化する建築物省エネ法の改正案成立に大きく貢献しました。7月にはグリーンピースの専門家チームが、ロシア軍が一時占領していたチョルノービリ(チェルノブイリ)原発周辺の放射線調査をウクライナ政府協力の下で実施、調査結果を世界に公表しました。
#DrivingChangeキャンペーン
交通機関の脱炭素化の必要性がますます高まる中、自動車産業では、炭素削減の鍵を握るバッテリー式電気自動車(BEV)は世界の全車両販売数の約10%を占め、2021年と比べ68%増加しました。日本では販売数の3%にとどまっていますが、日本市場への世界的な関心が高まっており、中国の電気自動車メーカーBYDと韓国最大の自動車メーカーヒョンデ(現代)が、日本でのEV戦略を推し進めています。グリーンピースは、日本国内、そして世界でEV車シフトへの転換、気候変動対策の加速を促してきました。
トヨタの年次株主総会への参加もグリーンピースの2022年の活動の一つです。株主の立場からも脱炭素を求めるため、最小単位でトヨタの株式を保有しているグリーンピースは、愛知県豊田市で開かれた総会に参加。また、集まった多数の報道関係者への取材対応を行いました。
また、日本政府に対しては、EV車補助金政策の延長を求めて、経済産業省と面談、報告書と署名を提出し、その必要性を訴えてきました。2022年の10月には岸田文雄首相が、環境対応車(電気自動車など)の購入補助の継続方針を発表しました。
グリーンピースは引き続き、日本最大の製造業である自動車産業全体を持続可能なものとするために、働きかけを続けていきます。
[報告書]
2022年9月:「自動車環境ガイド2022」
世界の自動車メーカー大手10社の気候変動対策についてまとめた報告書。
10社中最も気候対策が遅れていたトヨタ自動車は、2021年の調査結果に続き、2年連続で最下位に。また日産、ホンダがそれぞれ8位、9位へとランクダウンし、国内自動車メーカーがワースト3位を独占する結果となりました。多くの日本の自動車メーカーから、以前より先進的な発表(トヨタのBEV販売目標の改善、ホンダによるソニーとの新たなBEV開発計画など)がありましたが、販売とサプライチェーンの両輪において現在の日本メーカーの脱炭素化の取り組みが不十分であり、海外競合他社に大きく後れを取っていることが明らかとなりました。
2022年11月:『内燃機関車がもたらすカーボンバブル』
主要自動車メーカー4社(トヨタ、フォルクスワーゲン、ヒョンデ・起亜、ゼネラル・モーターズ)の内燃機関(ICE)車販売についての報告書。これは、グリーンピース・ドイツ、シドニー工科大学、ドイツ自動車管理センターが共同で、地球温暖化を1.5℃以内に抑えながら、今後どれだけのICE車を販売できるかを検証したものです。この調査の結果、世界の自動車メーカーは気温上昇を1.5℃までに抑えるための許容範囲から、推定4億台を超えるICE車を2050年までに販売すると予測されています。特にトヨタの超過分は6,300万台に上るとみられます。
市民とともに地方自治体をカーボンニュートラルに! ゼロエミッション キャンペーン
2020年9月にグリーンピース・ジャパンが立ち上げた、気候変動を抑えるために行動するコミュニティ「ゼロエミッションを実現する会」では、今年も様々な成果を残すことができました。省エネ、そして市民の健康にとって非常に重要な住宅の断熱義務化の未来を左右するのが「建築物省エネ法」です。2022年1月、この改正案の国会提出が見送られる可能性が高まり、断熱の大切さを訴えてきた「ゼロエミッションを実現する会」では、署名活動への協力を基軸に、メンバーが地元選出の国会議員との勉強会やメディア向けの勉強会を主催、その他にも専門家や事業者、他NGOとともにさまざまな活動を行いました。その結果、一転して改正案の国会提出が実現し、6月に同改正案が可決。2025年からすべての新築の建物の断熱が義務化されます。これは大きな前進ですが、日本の断熱基準は未だ欧州などに比べて著しく低いため、グリーンピースは引き続き市民とともに断熱性能の向上に取り組んでいます。
省エネとともに温室効果ガス削減に重要なのが再生可能エネルギーの利用拡大であり、自治体レベルでは屋根置きソーラーパネルの設置が特に効果的な対策です。2022年5月、東京都がハウスメーカーへの太陽光パネル設置義務化を含む条例改正案へのパブリックコメントの募集を始めた際、東京都自民党に関連業者などから反対の声が寄せられ、6月の東京都議会では「慎重な対応」を求める質問が相次ぎました。「ゼロエミッションを実現する会」では、「パブコメを書く会」などのワークショップを開催。太陽光パネル設置義務が気候危機回避に有効な施策であることの周知を努め、パブコメ提出を呼びかけました。その結果、賛成意見が反対意見を上回り、義務化を提案する東京都の背中を押すことができました。条例は2022年の12月に可決、成立しています。
神宮外苑1000本の樹木を切らないで ーー都市の樹木の役割を気候変動の観点から考える
日本全国で「再開発」の名のもとに街路樹の伐採が行われています。東京都の神宮外苑も銀杏並木などの都市遺産が巨大開発事業によって脅かされています。グリーンピースは、イギリスのエクセター大学内に独自に持っているリサーチユニットと協力し、神宮外苑の小さな森や街路樹のような樹冠の広い十分に育った木が、アスファルトの温度上昇を防ぐ働きがあることを改めて明らかにしました。調査結果を東京都立大学の三上岳彦名誉教授と、本件でキャンペーンを展開する経営コンサルタントのロッシェル・カップさんとともに記者会見を行い、ひろく発表しました。
「ゼロエミッションを実現する会」では、各自治体に参加希望者がひとりでもいれば、他の自治体の仲間がサポートすることでアクションを可能にしています。また、同じ自治体に仲間を見つけてチームをつくり、アクションに繋げるスキーム構築のため模索を続けています。パブコメや、議会への陳情、請願など、「住民参加」の枠組みは先人が獲得してくれた私たちの大事な権利です。十分に知られていなかったり、形骸化したりしているそれらの方法に息を吹き込み、効果的に活用することで、自治体行政に住民の意をしっかりと反映させ、気候危機の回避に繋げるために行動しています。
COP27-気候変動枠組条約締約国会議に参加
2022年は、グリーンピース・ジャパンが世界のグリーンピースとともに国際的に気候正義を求めた年でもあります。エジプトで開催された国連の気候変動対策の会議(COP27)には、世界のグリーンピースから参加したメンバーに加わり、久しぶりにグリーンピース・ジャパンからもスタッフが現地参加、交渉がより良い方向に向かうよう、期間中毎日、世界中の交渉官との意見交換や交渉に臨みました。洪水により壊滅的な被害を受けるパキスタンをはじめ、今まさに気候変動の被害を受けている国の人々の声を届け、日本政府に対しては、特に後ろ向きであった化石燃料の段階的廃止や、損失と被害に関する国際的な基金設立に賛同するよう強く求めてきました。
その他、日々会場内で開催される気候アクションに参加し、世界の市民と連帯して各国や地域の交渉官に対してより野心的な成果を求め、また日本からもCOPが私たちの未来に関わる身近なものと感じてもらえるよう会場の議論の様子をソーシャルメディアを通じてリアルタイムに発信、帰国後は対話型の報告会も開催しました。
ずさんな廃炉計画にストップを「原発汚染水、海に流すな!」
2021年4月、菅義偉首相(当時)が、東京電力福島第一原発の敷地内に貯留されている汚染水の海洋放出を決定、発表しました。グリーンピースは2011年の原発事故直後から継続して放射線調査を実施し、あらゆる側面から原発のリスクを科学的に証明、世界に発信し続けてきました。汚染水問題にとりくみ始めたのは2012年のことです。
政府や東電は汚染水を指して「トリチウム水」などと言いますが、トリチウムの他に基準値以上のセシウムやストロンチウム、プルトニウム、炭素14などが残留している汚染水は「トリチウム水」とはとうてい呼べません。専門家に分析を依頼した結果、廃炉計画も汚染水の海洋放出も、まったく現実的な解決策ではないことが明らかとなりました。これらの調査結果をもとに、市民団体や地元の方々と協力し、経済産業省や東電、福島県に対し、海洋放出計画の中止を求め、代替案を提示しています。また、各メディアへ向けた実情の報告も行っています。
グリーンピースは今後も、被害に遭われた方々への聞き取り、国際社会への働きかけなど、汚染水の海洋放出を止めるべく活動を続けていきます。