制裁を逃れて原油を輸出するロシアの「影の船団」の一隻で放置されたタンカーにグリーンピースの活動家たちが「NO GAS + OIL」とペイントした。
制裁を逃れて原油を輸出するロシアの「影の船団」。その一隻で放置されたタンカーにグリーンピースの活動家たちは「NO GAS + OIL」とペイント。石油やガスが戦争の資金源となり海の生態系を脅かしていることを訴えた。ブルガリア沖(2026年8月11日)

この夏、世界の海はこの時期において観測史上最も高い水温を記録し続けています。海は気候変動による余剰熱の9割以上を吸収し、私たちの暮らしを守ってきました。その海がいま、限界のサインを発しています。8月の環境ニュースは海や環境を守るため、変化を起こそうと立ち向かう市民たちのストーリーです。

南アフリカ:石油大手シェルとの戦いに勝利

南アフリカの憲法裁判所(同国の最上位裁判所)が2026年8月14日に、石油大手シェルなどに与えられていたワイルドコースト沖での石油・ガスの探査権を無効とする判決を下しました。沿岸部に暮らす地元住民たちとグリーンピース・アフリカを含む環境団体が、約5年にわたって闘ってきた訴訟に最終的な決着がつきました。

ワイルドコーストは、南アフリカ東ケープ州に広がる手つかずの海岸線です。シェルは2021年、この海域で石油やガスの探査のために、強力な音波を海底に発する地震探査の計画を発表しました。しかし、漁で生計を立て、海とともに暮らしてきた先住民を含む沿岸地域の住民たちが、「十分な協議がなされていない」と反対し、グリーンピースを含む環境団体とともに裁判所に探査実施の差し止めを申し立てました。

最高控訴裁判所でシェル社に対して抗議行動を行うワイルド・コースト地域の住民たち
最高控訴裁判所でシェル社に対して抗議行動を行うワイルド・コースト地域の住民たち。南アフリカ(2024年5月17日)

高等裁判所は2022年にシェルの探査権を無効と判断。2024年の最高控訴裁判所もこの判断を支持しましたが、協議の手続きをやり直すことで探査権を維持する道をシェル側に残していました。今回の憲法裁判所判決は、手続きのやり直しを認めず、住民への説明責任を軽んじた事実は後から埋め合わせることはできないという判決です。

イギリス:気候変動を語らない新首相に公開書簡

グリーンピースUKは、WWF、Friends of the Earth(FoE)などの環境団体とともに、7月に就任したばかりのアンディ・バーナム首相に対し、気候変動について発言するよう求める公開書簡を送りました。

イギリスでは今、国土の4分の3が干ばつに見舞われ、各地で山火事が発生しています。記録的な熱波は学校の閉鎖や交通の混乱を招き、ひっ迫する国民保健サービス(NHS)をさらに追い詰めています。しかし、バーナム首相が、猛暑対応を協議する緊急閣僚会議を終えて語ったのは、使い捨てバーベキューコンロの販売自粛要請。異常気象の根本原因である「気候変動」という言葉は一度も口にしませんでした。

グリーンピースUKが、大規模な山火事によって焼け焦げたウェールズの山の斜面に制作した巨大なランドアート
グリーンピースUKが、大規模な山火事によって焼け焦げたウェールズの山の斜面に制作した巨大なランドアート(環境に配慮した塗料を使用)。「アンディ、私たちの家は燃えている」というメッセージとイラストは、気候変動の影響に注意を払い、北海でのさらなる油田開発を認めないよう求めている。イギリス(2026年8月12日)

公開書簡では、気候危機の「本質や複雑さを正直に語るリーダーを国民は必要としている」と訴え、危機の深刻さを公に認め、その原因を明らかに語り、重大な脅威に対処するよう求めています。

政権交代の混乱の中でも、気候危機は待ってはくれません。市民社会が新しいリーダーに突きつけたのは、「まずはそこにある問題を口にする」というシンプルな要求です。

デンマーク:「死」を宣告されたフィヨルドに回復の兆し

デンマークのフィヨルドや沿岸海域では、工業型養豚や農業由来の窒素が海を汚染し、大きな問題となっています。2024年4月には、グリーンピース・デンマークとデンマーク・スポーツフィッシング連盟が、酸素欠乏で魚が姿を消したバイレ・フィヨルドの「葬儀」を執り行い、海の死を社会に突きつけました。

それから2年が経った今、グリーンピースとスポーツフィッシング連盟は酸素測定器を携えてフィヨルドに戻りました。測定の結果、バイレ・フィヨルドでは2カ所で深刻とされる水準に迫る酸素欠乏が確認され、スタッフらはその海域に赤い旗を立て、警告のアクションを行いました。測定のための遠征はデンマーク各地のフィヨルドで続いています。

イセ・フィヨルドでの窒素汚染による酸素欠乏の測定と警告アクション
イセ・フィヨルドでの窒素汚染による酸素欠乏の測定と警告アクション。グリーンピース・北欧は各地のフィヨルドでの測定と記録を続けている。デンマーク(2026年8月10日)

一方で、回復の兆しも確認されています。デンマーク最大の海洋再生プロジェクトが進むバイレ・フィヨルドでは、甘藻(アマモ)や貝の生息床が再生された区域で、生物多様性が改善していることが科学者によって報告されました。海は生き返ろうとしています。

スペイン:海の記録的高温に警告

グリーンピース・スペインは2026年8月11日に、スペインを囲む海の水温が記録的な高温に達しているとして、政府と自治体に緊急の気候対策を求めました。

グリーンピース活動家が、地球温暖化と、特に海洋の温暖化への警鐘を鳴らすため、ラ・マンガ沖で、目玉焼きが乗った巨大なフライパンを海上に浮かべた
グリーンピース活動家が、地球温暖化と、特に海洋の温暖化への警鐘を鳴らすため、ラ・マンガ沖で、目玉焼きが乗った巨大なフライパンを海上に浮かべた。スペイン(2019年7月10日)

世界の海面水温は7月、その月としての観測史上最高を記録し、2カ月連続の記録更新となりました(コペルニクス気候変動サービス)。なかでもイベリア半島を囲む海は、世界平均より67パーセントも速いペースで水温の上昇が進んでいます。

地中海のマヨルカ島沖では、初めて33度を超える水温を記録。スペイン北岸のカンタブリア海でも、ビルバオ沖で4月から毎月の記録を更新し続け、7月には25.2度を超えました。地中海の海洋熱波は、米海洋大気庁(NOAA)で最高度の「カテゴリー4(極端)」に分類されています。

限界を迎えた海からのメッセージ

海は、地球温暖化によって生じた熱の大半を引き受け、陸上の気温上昇を和らげる「盾」の役割を果たしてきました。しかし、今その盾に限界が近づいています。

海面水温の上昇は、大気により多くの水蒸気を含ませ、暴風雨や豪雨の激化の要因となります。魚たちはより冷たい海へと移動し、沿岸の小規模漁業を直撃します。移動できないサンゴや海草たちは、耐えられる水温の限界を超えればその多くが死んでしまいます。

変化は静かに目に見えないところで進みます。だからこそ、測定し、記録し、伝え、行動することが重要です。

グリーンピースは50年以上にわたり、寄付で支えられる独立性によって、科学的な調査に基づくファクトを用いて仕組みを変える活動を続けています。仲間が必要です。あなたの寄付で見えない事実に光をあて、危機的な状況を食い止める活動を応援してください。