2026年4月8日に行われた「平和憲法を守るための緊急アクション」国会議事堂正門前のようす
2026年4月8日に行われた「平和憲法を守るための緊急アクション」国会議事堂正門前のようす(Photo : Konoura Mitsutaka

公布80年という大きな節目を迎える今、改めて日本国憲法の原点に立ち返る必要があります。本記事では、憲法9条(平和主義)や25条(生存権)の観点から、なぜ憲法が私たちの暮らし、そして環境をも守る礎となっているのかを解説します。加速する改憲議論や武器輸出の解禁、矛盾を抱えるエネルギー政策──。こうした現代の課題を「立憲主義」の視点で紐解き、憲法が保障する「誰も切り捨てない持続可能な未来」について考えます。

公布から80年 日本国憲法をよく知ろう

1946年11月3日に公布された日本国憲法は、今年2026年に公布80年の大きな節目を迎えます。また、5月3日は憲法が施行された「憲法記念日」です(施行1947年5月3日)。しかし、憲法が何のためにどのような働きをするのか、よく知らないという人は30パーセント以上と、少なくないようです。

終戦後に使用された中学校1年生用社会科の教科書『あたらしい憲法のはなし』で「日本国憲法の三原則(左)」と「戦争放棄の原則(右)」を表した挿し絵
終戦後に使用された中学校1年生用社会科の教科書『あたらしい憲法のはなし』で「日本国憲法の三原則(左)」と「戦争放棄の原則(右)」を表した挿し絵。文部省(1947年8月2日当時), Public domain, via Wikimedia Commons

立憲主義とは? 憲法は市民ではなく権力を縛る

憲法とは、「国民主権」、「平和主義」、「基本的人権の尊重」の三原則を柱とし、個人の権利・自由を侵害しないよう国家権力を縛っている国の最高法規です。

意外と理解されていないのが「憲法を守らなければいけないのは誰なのか」という点です。憲法を守る義務を負っているのは、前述のとおり国家権力です。具体的には、天皇、摂政、国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員、つまり為政者など政治を動かす権力を持つ人たちを指しています(第九十九条)。憲法は市民から権力を委譲された代表者たちが、市民の人権を侵害することがないよう規制します。このように、権力を縛り、個人の人権保障に努めることを「立憲主義」といいます。

戦争放棄と平和的生存権

実際に憲法を読んでみましょう。自らに保障された権利を知っておくことは、自分と大切な人の暮らしを守る上で非常に重要です。以下は、平和的生存権と戦争放棄を規定する日本国憲法の前文と、第九条の条文です。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。

われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従うことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う前文)。

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する(第九条)。


憲法前文で謳われる平和的生存権は、個人の人権が守られ、未来まで続く平和な世界を日本から実現するという、日本だけでなく世界の平和にも目を向けた気高い目標です。そして、続く憲法9条が、日本からの世界平和実現という目標達成の具体策として「戦争放棄」、「戦力不保持」、「交戦権の否認」という3本の柱からなる平和主義を謳っています。

基本的人権──憲法が守る私たちの権利

憲法は、私たちが人種、信条、性別、社会的身分や門地(家柄や血統)により、政治的にも、経済的にも、社会的関係においても差別されないことを保障しています(第十四条)。私たちには、自由にものを考え(第十九条)、勉強し(第二十三条)、お互いに選んだ相手と結婚する(第二十四条)権利が約束されています。これらはすべて、私たちが生まれた時から持っている「人権」です。

国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる(第十一条)。

福島県飯舘村の新しい学校に通う子どもたち
福島県飯舘村の新しい学校に通う子どもたち(2018年10月16日)© Shaun Burnie / Greenpeace

人権は、義務を全うしている人だけに与えられているのではなく、日本に生きる一人ひとりがみな平等に持っているものです。

憲法と気候の関係「環境権」とは?

私たちは、生きていく中で、人間としての尊厳が保たれた生活を送り、個人として尊重され、幸せを求める権利を憲法によって保障されています。

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする第十三条)。

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。ー国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない(第二十五条)。


これらの権利が守られるには安定した気候が不可欠です。そのため、人間が健康で文化的な生活を営むのに必要な、安定した環境を享受する権利、環境権が憲法において認められているという考え方が世界的に主流になりつつあります。

台風およびモンスーンの影響で発生した首まで浸かるほどのひどい洪水。
台風およびモンスーンの影響で発生した首まで浸かるほどのひどい洪水。フィリピン、サンマテオ。温暖化による海水温の上昇により、「10年に一度」といわれるような極端な豪雨が頻発化している(2024年7月24日)© Noel Celis / Greenpeace

気候危機は基本的人権を脅かしており、不十分な気候対策には人権侵害性があるという視点です。実際に、憲法を根拠に気候対策が不十分であることの責任を問う訴訟は世界各地で多数起きており、日本でも16人の若者たちによる火力発電事業者10社に排出削減を求める気候訴訟が起きました。ドイツ韓国では、市民側が勝利を収めた事例もあります。

憲法の最大の敵は戦争

戦争は、生きる権利尊厳が保たれた生活、(第二十五条)、幸せを求める権利(第十三条)を一瞬で奪い去る最大の人権侵害です。深刻な人権侵害を大規模な範囲にもたらし、罪のない子ども、市民を犠牲にします。

戦争によって破壊されたウクライナの病院
戦争によって破壊された病院。ウクライナ、キエフ近郊。グリーンピースは、この後、ウクライナの環境保護NGOと協力し、ヒートポンプと太陽光発電設備を導入し、持続可能で環境に配慮した方法でこの病院を再建した(2023年1月25日)© Oleksandr Popenko / Greenpeace

さらに、戦争は最大の環境破壊でもあります。現在進行中のイランへの攻撃から始まった中東での軍事衝突では、約2週間で暫定500万トン以上の二酸化炭素が排出されたと推計されています。石油貯蔵施設への爆撃で発生した石油火災では、一酸化炭素や硫黄酸化物、窒素酸化物、揮発性有機化合物、ブラックカーボンなどの大気汚染物質や大量の有毒物質が拡散されたと考えられます(朝日新聞)。

ウクライナ侵攻湾岸戦争でも著しい環境破壊が起きていました。また、戦争中に脱炭素などの環境目標が後回しにされてしまうことも大きな問題です。

防衛費増大の陰で計上されない環境負荷

世界の軍事支出の増加が二酸化炭素の排出量を押し上げているという事実も見逃せません。

軍の排出量は国連(UNFCCC)への報告が義務づけられていないため、推計で、世界排出量全体の約5.5パーセントにあたる軍事排出が事実上気候会計に計上されていません。そのため、軍事支出比率が12パーセントを超えると、パリ協定の1.5℃目標の達成が不可能となり、24パーセントを超えると2℃目標の達成が不可能になってしまうことがわかっています(Nature)。

世界の軍事費比率と世界のCO2排出強度との関係
世界の軍事費比率と世界のCO2排出強度との関係(出典:
Dong, W., Ran, Q., Liu, F. et al. Rising military spending jeopardizes climate targets. Nat Commun 16, 4766 (2025). )

2024年の世界の軍事支出は前年比で9.4パーセント増、少なくとも冷戦終結以降で最大の年間増加率を記録しました。

日本もまた防衛費の支出を増加させ、防衛力の強化を進めています。また、2026年4月21日には、これまで非戦闘目的に限定していた「5類型」を撤廃し、殺傷能力のある武器輸出が可能となりました。

長らく平和憲法の基に禁じられてきた武器輸出ですが、2014年には安倍元首相による「武器輸出三原則」の撤廃、2023年には岸田元首相によるライセンス生産品に限った殺傷武器の完成品輸出の解禁と、徐々に禁止要件を緩和し、今回の全面解禁に至っています。

日本政府は緩和の度に「平和国家としての基本理念は変わらない」と表明していますが、他者の生命を奪う能力を持つ武器の輸出を経済成長の手段とすることは、平和国家としての積年の歩みと矛盾しないでしょうか。

エネルギーの選択は人権の問題

エネルギーに目を移してみましょう。2021年の4月、ドイツでは、連邦憲法裁判所が若者らによる「現行の気候対策の不十分さは、将来世代の自由の権利の侵害にあたる」とする訴えを認めました。ドイツ政府はそれから2週間足らずで温室効果ガスの排出削減目標をより野心的に見直す法改正を閣議決定しています。

ドイツの再エネのイメージ
ドイツは太陽光や風力といった再生可能エネルギーを意欲的に伸ばし、総発電量に占める比率は60パーセントを突破(2023年以降)、2023年時点で原発ゼロも実現している。(Photo : The Italian Institute for International Political Studies (ISPI)/ Original public domain image from Wikimedia Commons)

*一般に「天然ガス」と呼称されますが、グリーンピースでは表現が化石燃料という実体と乖離していると考え、この表記を使用していません

原子力もまた、東京電力福島第一原発事故が未収束である日本では特に課題と問題が多く残るエネルギーです。デブリが取り出せずに廃炉は未完了、福島県内には依然解除されていない帰還困難区域が残っています。電源としての効率も決して高くありません。定期点検、トラブル、不祥事、裁判、自然災害等で頻繁に稼働が停止するため、結局バックアップ電源として化石燃料エネルギーを必要とする点も本末転倒です。

2020年時点の福島第一原発1号機~4号機
2020年時点の福島第一原発1号機~4号機。廃炉作業は現在も完了していない。Photo : 資源エネルギー庁ウェブサイト, CC BY 4.0,

加えて、そもそも使用済み核燃料の処理方法すら未確立であり、計画から、稼働開始までに非常に長い時間がかかる原子力は、脱炭素エネルギーへの移行を大きく遅らせることになるでしょう。さらに、ロシアがウクライナ侵攻開始から約1カ月後にはザポリージャ原発を軍事制圧した例に見るように、戦時下において原発のリスクは爆発的に高くなってしまいます。

原子力は、一度事故が起きれば居住の自由(第二十二条)や財産権(第二十九条)を根こそぎ奪う、極めて人権侵害性の高いエネルギーです。

▶︎原発が温暖化対策にならない5つの理由

平和のためのエネルギーについて考える

しかし、日本はエネルギー基本計画として、現在も化石燃料と原子力の役割に大きな比重をとっています。米・イスラエル政権によるイラン攻撃以来、ホルムズ海峡の通行が制限され、世界は原油をめぐる混乱の中に突き落とされました。化石燃料が安全保障の観点からも、決して平和的なエネルギーとはいえないことはすでに明白です。

専門家は、平和な社会の構築には、再エネ、とりわけ太陽光と風力へのエネルギー移行が鍵になると指摘します。理由を見てみましょう(IRENA)。

  1. 再エネ資源は、特定の地域に集中する化石燃料と違い、ほとんどの国でそれぞれに適したかたちで得ることができる。
  2. ストック型である化石燃料と異なり、ほとんどがフロー型である再エネは、尽きることがなく中断しにくい。
  3. 再エネは基本的に導入規模を選ばないため、生産においても消費においても分散させやすい。分散型エネルギーは民主化効果を生み出す。
  4. 再エネ資源には発電するたびに追加でかかる費用がほとんどない。また太陽光や風力など一部のエネルギーでは、生産能力を倍増するごとに20パーセント近くのコスト削減が達成されている。

再エネには、安全保障の観点以外にも、「地域の活性化」「国内の技術力を高める」「災害に強い」「発電時に二酸化炭素を出さない」「健全な雇用を産む」「エネルギー自給率を上げる」「家計に優しい」といった強い利点があります。

再エネの利点
再エネの利点(グリーンピースのリーフレット「でんきのほんと でんきのこれから(2017年改訂版)」より)

未来のエネルギーとして再エネを選ぶことで、資源の奪い合いをなくすことができます。ピースフルなエネルギー、再エネへの転換は平和主義の実践です。

いま平和憲法を守るべき理由「不断の努力」とは

憲法は、私たちに自由や権利を保障する一方で、それを保ち続けるために努力する責任も定めています。

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。また、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う。(第十二条


不断の努力とは、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。

まず、自分がどんな権利を持っているのかをよく知ることが重要です。そして、その権利がしっかり守られているか、国家権力は私たちの権利を守る政治をしているかを見張らなければなければなりません。

さらに、主権者としての投票行動、デモ参加やパブリック・コメント制度の利用など、市民の声を届ける意思表明の活動も重要です。権利は守り続ける努力によって保持されています。

2026年4月8日に行われた「平和憲法を守るための緊急アクション」国会議事堂正門前のようす
2026年4月8日に行われた「平和憲法を守るための緊急アクション」国会議事堂正門前のようす(Photo : Konoura Mitsutaka

日本政府は自衛隊の明記や、緊急事態対応を含む内容の憲法改正に意欲を見せていますが、これは平和主義の柱である第九条の変更や、不要であるばかりか危険だと指摘される緊急事態条項の追記など、三原則に大きくかかわります。

AI技術の台頭といったデジタル進化や、ジェンダーへの理解の深まりなど、反映させるべき点の慎重な議論は必要です。しかし、現行の政策運用が三原則と緊張関係にあるといわざるを得ないこの局面で、根幹を揺るがすような改憲議論は、ほとんどの憲法学者が反対するほど危険なものです。

また、高市首相は過去に衆議院憲法委員会における憲法学者小林節氏との質疑で、憲法の規範に触れて「国家に新たな役割を担ってもらう授権規範的な要素もいくらかは必要」と答弁し、小林氏に「(規範についての)考えに根本的に誤解がある」と指摘されるも「誤用があるとは思っていない」と反論したことがあります(2006年)。現在も、憲法を指して「どのような国をつくり上げたいのか、その理想の姿を物語るもの」と語っており、改憲を推進する当事者の立憲主義への理解にも不安が残ります。

立憲主義を軽視するような改憲議論が行われる今、憲法の意義をもう一度認識する必要があります。誰も切り捨てず、環境を守りつつ日本から平和を実現する、そんな未来を選ぶためのコンパスはすでに私たちの手の中にあるのです。公布80年を迎える憲法を守り、活かしていくための不断の努力が今こそ求められています。

グリーンピースは、ピースフルエネルギーである再エネを推進し、エネルギー効率の向上を目指す省エネ・再エネキャンペーンを展開中です。また、紛争地域への支援活動も行なっています(現在、グリーンピースの船「アークティック・サンライズ」号が、パレスチナ、ガザ地区に課されたイスラエルによる違法な包囲を破ることを目指して海路からガザを目指す「グローバル・スムード船団」に参加し、海事専門知識や経験でサポートしています)。こうしたグリーンピースの活動情報をメールマガジンで配信中。ぜひメルマガに登録して平和や気候の最新情報をチェックしてください。