パネルのガラスをリサイクルして作った板ガラスは、学校などの窓に使用されている(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace

「太陽光発電」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー(以下、再エネ)は気候変動対策、エネルギー自給率の向上、エネルギー安全保障など様々な観点から重要である一方、自然環境への影響や地域社会との共生、使用済みパネルの廃棄問題など様々な課題もあるのが現状です。

グリーンピース・ジャパンでは「太陽光の現場を歩く視察シリーズ」を通して、太陽光発電の本質的価値を伝えるために関連施設を訪れ、わかりやすく発信していきます。今回はその第一弾です。

気候変動対策としての再エネ

今年5月、30℃以上の真夏日地点数はすでに300地点を超え、5月中旬としては統計開始以来最多となりました*。本格的な夏を前に不安に思っている方も少なくないのではないでしょうか。また今年3月、WMO(世界気象機関)が2015年から2025年が観測史上最も暑い11年間であったことを発表するなど*、気候変動対策は待ったなしの状況です。

この危機を救う切り札として期待を集めるのが、発電時に二酸化炭素をほとんど排出しない再エネです。特に太陽光発電は設備コストの低下や開発期間の短さから主力電源として極めて重要であるにもかかわらず、なぜもっと急速に広がらないのでしょうか?

意識調査から見えた廃棄への懸念

グリーンピース・ジャパンが実施した「太陽光発電に関する意識調査」で明らかになったのは、環境問題への関心の有無や再エネを必要と思うか否かを問わず、大多数が「リサイクル体制を重要もしくは考慮するべき」と回答しており、使用済みパネルのリサイクルについて多くの人が重要視しているという点です*

廃棄問題に関する懸念が再エネ全体や太陽光発電に対する考え方に影響している可能性も考えられます。したがって、今後さらなる太陽光発電の普及や市民からの支持拡大を目指すうえでは、使用済みパネルのリサイクルの実情を明らかにし、不安を取り除いていくことが極めて重要です。

グリーンピースが行った『太陽光発電に関する意識調査』の対象者分類。「環境問題への関心の有無」と「再エネを必要と思うか否か」という二軸で4つの層に分類しアンケートを行った。

中でも多くの不安の声が集まる使用済み太陽光パネルの廃棄問題。2026年5月には、「太陽光パネルリサイクル法((太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律))」が成立しましたが、2030年代半ばから使用済みパネルが急増し、年間最大50万トン程度まで達する見込みである大量廃棄時代を迎えます。そこで太陽光パネルリサイクルの実態を知るため、パネルのリユース・リサイクルに取り組む企業を訪れ、現在の取り組みや直面する課題について聞いてきました。

太陽光パネルのほとんどがリサイクル可能って本当?

普段はなかなか知ることができない太陽光パネルのリサイクルの実情。今回視察した株式会社ウム・ヴェルト・ジャパン(埼玉県大里郡)は、事業の一つとして太陽光パネルのリユース、リサイクルに取り組む会社です。

太陽光パネルは、実はそのほとんどがリサイクル可能です。アルミフレームはアルミホイールなどのアルミ製品に、表面ガラスは発泡ガラスなど様々な用途に生まれ変わります。工場見学では、パネルの裏側にあるジャンクションボックス(端子箱)を手で取り外すところから、バックシート(裏面の保護シート)からガラス部分を分離させるところまで実際に見ることができました。

会議室で会社説明を受け、リサイクル事業への理解を深める視察チーム(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace
パネルの裏側からジャンクボックスを取り外す作業場で働く従業員。取り外されたジャンクションボックスもリサイクルされる(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace

パネルのリサイクル方法5つの長所と短所

現在、パネルのリサイクル方法は5つあります。太陽光パネルを再びパネルの原材料に戻す「水平リサイクル」が資源循環において最も重要ですが、どの方式が適しているのでしょうか。

ウム・ヴェルト・ジャパンが採用する圧着ロール破砕方式の他に、ハンマー方式、ショットブラスト方式、ホットナイフ方式、加熱方式があります。

  • 圧着ロール破砕方式:的確な圧着と選別により、不純物を抑えつつ様々なサイズや状態のパネルを効率的に処理できる。
  • ハンマー方式:パネルを細かく砕いて分別する。破砕時に裏面の「バックシート」まで削ってしまい、ガラスに不純物が混ざりやすいため、高い純度が求められる水平リサイクルの基準を満たすのが難しい。
  • ショットブラスト方式:粒子を吹き付けて部材を削り落とす。素材に不純物が残りやすい上に、パネル1枚あたりの処理時間が長くかかってしまう。
  • ホットナイフ方式: 加熱したナイフを使い、ガラスとバックシートをきれいに分離できる。ナイフを水平に通す仕組みのため、災害などで割れたり折れ曲がったりした「破損パネル」には対応できない。
  • 加熱方式: 熱分解によって不純物のない純度の高い分離が可能。設備がまだパッケージ化(製品化)されておらず、高額な設備費用や処理時間の長さがネックとなっている。

ウム・ヴェルト・ジャパンが採用する圧着ロール破砕方式は、的確な圧着と選別によって不純物を抑えつつ様々なサイズ・状態のパネルを効率的に処理でき、現在あるリサイクル方法の中では実用面において極めて現実的な選択肢です。

使用済み太陽光パネルからアルミフレームを機械で取り外すリサイクルの工程(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace
フレームを取り外した後、圧着ロールによりガラスとバックシートを分離(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace

パネルに含まれる有害物質の行方は?

太陽光パネルも他の工業製品と同様に、適切にリサイクルされずに環境中へ流出した場合に有害性を持つ物質を含んでいます。例えば、パネルの中にはアンチモンという有害物質が含まれていますが、鉛や銅などの有害物質のほとんどはパネルのバックシートに含まれています。

工場ではバックシートをバラバラに分解し、その後は金属精錬会社に運びます。そこでバックシートを溶かし、鉛、銀、銅などの様々な物質に分け再資源化するのです。

再資源化以外の処理方法には、鉛をコンクリートの中に混ぜて閉じ込めるなどの無害化や、工業廃水の中でpH(水溶液中の水素イオンの濃度)を高め沈殿させ封じ込める方法もあります。このように、有害物質を含む素材も適切にリサイクル処理が行われています。

ただし、こうした工程が、時間や費用を要するため、埋め立て処理をする方が安価となり、リサイクルが選択されにくい状況になってしまっています。今後リサイクルを選択しやすい環境を整えることが急務です。

ガラスを分離した後のバックシート(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace

折れ曲がったパネルでもリサイクルできる

ウム・ヴェルト・ジャパンでは、住宅用から産業用まで様々な使用済みパネルを回収し、リサイクルしています。積雪などの自然災害で90度曲がったパネルもリサイクル可能で、関東を中心に幅広く受け入れています。圧着ロール破砕方式は様々なサイズや状態のパネルのリサイクルが可能であるため、加盟する太陽光パネルリユース・リサイクル協会の中でデータを集約、連携し、他の会社が受け入れることができないパネルのリサイクルを行うこともあります。

壊れた状態で運ばれてきた使用済みパネル。これらもウム・ヴェルト・ジャパンでリサイクルされる(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace

リサイクルにおける課題と今後の期待

太陽光パネルを再び同じパネルへと再資源化する「水平リサイクル」の実現には、技術面・コスト面ともに未だに多くの課題が残されています。太陽光パネルのほとんどの部分がリサイクルが可能な反面、より良いリサイクル方法を選ぶことも重要です。例えば、使えなくなったガラスを路盤材(道路の土台)に混ぜるリサイクル方法がありますが、見方によっては埋め立てとも捉えられ、これをリサイクルと呼ぶことができるのかという指摘もあります。

元の価値よりも価値が下がってしまうダウンサイクルではなく、水平リサイクルで再資源化していくことが重要です。現在は高い技術のもと、太陽光パネルのガラスを建築用のガラスに生まれ変わらせることは可能ですが、太陽光パネル用となるとそのための製造ラインが必要になるなど課題があります。

また、リサイクルについてはどうしても廃棄と比べて手間も費用もかかってしまうため、廃棄ではなくリサイクルを選択しやすいように、またリサイクル事業を安定させるための法整備や制度設計が必要です。

様々な質問に丁寧に答えてくださっている担当者(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace

実際に見て確かめることで太陽光パネルはゴミにならないことがわかった

今回の視察を通して参加者からは「漠然としたイメージではなく実際に自分の目で見て学ぶことができよかった」、「リサイクル技術が確立されており、企業の努力や工夫が印象的だった」といった感想がありました。実際にリサイクルに取り組む方から直接お話を聞けたことで、視察前に感じていたリサイクルに対する疑問が解消され、今後への期待も高まりました。

説明を熱心に聞く参加者(5月14日)©Chihiro Hashimoto / Greenpeace

先月国会では太陽光パネルリサイクル法が可決、成立しました。一方でリサイクル自体は努力義務に留まるなど今後の詳細設計においては課題があり*、社会的な信頼を構築するための実効性のあるリサイクル体制の構築を今後も強く要望していきます。

太陽光発電に関する否定的な意見の一部には「知らない」から引き起こされる不安もあります。

実際に前述の意識調査では太陽光発電に関する情報について、「情報が多すぎて、何が正しいのか判断に迷う」、「専門的で難しく、自分では判断しにくい」、「そもそも情報に触れる機会がほとんどない」を選ぶ割合が各層において多数あり、多くの人が情報取得の課題を抱えていることが明らかになりました。

私たちは視察シリーズを通して、太陽光発電の実態をより多くの人に知ってもらえるようこれからも発信を続けていきます。