太陽光パネルリサイクル法が成立! 今後の課題「拡大生産者責任(EPR)」とは?
この投稿を読むとわかること

5月29日、太陽光パネルリサイクル法が可決、成立しました。これには市民の後押しもありました。
東電福島原発事故発生以降の普及策(FIT制度)により急速に拡大した太陽光発電は、2030年代後半以降ピークで年間約50万トンの大量廃棄が試算されています。今回の新法は、多量の事業用パネル廃棄者に「廃棄実施計画」の届出を義務付けるもので、リサイクル自体は努力義務に留まりました。また、審議会で有識者らが求めた「拡大生産者責任(EPR)」は、費用負担ではなく「リサイクルしやすい製品設計」の責任などに限定されました。
今後の詳細設計で、実効性あるものにしていく必要があります。
太陽光パネルリサイクル法ができました
5月29日、太陽光パネルリサイクル法(「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」)が可決、成立しました。これには市民の後押しもありました。

東電福島原発事故発生以降の普及策(FIT制度)により急速に拡大した太陽光発電は、2030年代後半以降ピークで年間約50万トンの大量廃棄が試算されています。今回の新法は、多量の事業用パネル廃棄者に「廃棄実施計画」の届出を義務付けるもので、リサイクル自体は努力義務に留まりました。また、審議会で有識者らが求めた「拡大生産者責任(EPR)」は、費用負担ではなく「リサイクルしやすい製品設計」の責任などに限定されました。
今後の詳細設計で、実効性あるものにしていく必要があります。
太陽光パネルリサイクル法案の概要
太陽光パネルの大量廃棄に備え、多量の事業用太陽電池(太陽電池であって、収益事業において使用されているもの又は使用されていたものをいう。以下同じ)の廃棄をしようとする者(太陽光発電事業者等)に主務大臣が定める判断基準に基づくリサイクルの実施に向けた取組を義務付けるとともに、費用効率的なリサイクル事業の計画を主務大臣が認定する制度を創設し、都道府県ごとの廃棄物処理法の許可を不要とする等の措置を講ずることとします(経済産業省ウェブサイト 法律案の概要より)。
太陽光パネルリサイクル法成立までの経緯
太陽光パネルリサイクル法案については、2024年から、環境省と経済産業省の合同の審議会で、10回にわたって議論されてきました。審議会の委員は、学者・研究者、消費者からの代表、産業廃棄物・リサイクル業界団体からの代表、経済団体からの代表などで構成されています。また、太陽光発電の業界団体や、太陽光パネルのリユースやリサイクルの業界団体もオブザーバーとしての参加や、当事者としての発表の場がありました。
審議会では、どの程度の義務を課すべきか、誰にリユース・リサイクルの責任を課すべきか、などを巡り、さまざまな議論が交わされました。問題となったのは、「拡大生産者責任(EPR)」についてでした。
拡大生産者責任(EPR)とは?
拡大生産者責任(EPR:Extended Producer Responsibility)とは、製造、輸入を行なった「生産者」が製品の使用後、そして廃棄された後に至るまで責任を負うべきという考え方で、循環型の社会を築いくための鍵となる重要な概念です。

審議会では、とくにリサイクルコストの負担について、「生産者に負担させるべき」という意見と、「利用者(排出者)の負担にすべき」という意見がありました。 とくに複数の有識者や消費者からの代表が拡大生産者責任(EPR)の考え方を 取り入れるべきだ、という意見がだされ、2025年3月に出されたとりまとめでは、輸入業者や製造者がコストを負担する方向性で法案の審議が進められることになっていました。
そのとりまとめをもとに、2025年通常国会への法案提出を目指して、具体的な条文作りが始まりました。しかし、2025年5月13日、浅尾慶一郎環境大臣(当時)が今(2025年)国会への法案提出を見送る旨を記者会見で発表しました。政府内で法案を審査する内閣法制局から、「待った」がかかったというのです。浅尾氏によると、内閣法制局の指摘は、「太陽光パネルリサイクル法案が、既存のリサイクル法の考え方と整合しない」というもの。
「既存のパネルのリサイクル費用も生産者が負担する」という法案の設計が、「使った人が費用を負担する」という自動車や家電のリサイクル法の原則と考え方が異なるとして問題視されたということです。
また、2025年8月29日には、浅尾環境大臣(当時)が、「制度案の見直し」も視野にいれる、と正式な法案提出断念を発表しました。
リサイクル費用を負担するべきは誰なのか
本法案への拡大生産者責任(EPR)の導入が難航した背景には、大きく2つの課題がありました。
1つ目は費用負担の重複です。2022年7月から、FIT(固定価格買取制度)の認定を受けた事業用太陽光発電設備を対象に、将来の廃棄費用を売電収入から積み立てる制度が義務化されています。製造業者にも費用負担を求めると、所有者とメーカーの両方が負担することになり、二重払いの問題が生じます。
2つ目は実効性の問題です。日本市場では太陽光パネルの多くを海外メーカーが占めており、国内法によって、海外メーカーや、製品を日本に持ち込む輸入業者から確実に費用を徴収できるかという点が課題として残っていました。

しかし、同時に、この法案は、日本に「拡大生産者責任(EPR)」を導入するチャンスでもありました。欧州の廃電気電子機器指令(WEEE指令)は「生産者(メーカー)責任」の考え方をとり、太陽光パネルも回収、リサイクルシステムの構築および費用負担を生産者に義務付けています。
グリーンピースも参加しているNGOの国際ネットワーク組織、Climate Action Network(CAN)の日本拠点CAN-Japanは、8月29日、日本政府に対して太陽光パネルのリサイクル義務化を求める共同声明を出し、また、署名活動「太陽光パネルのリサイクル義務化を進めてください!」を開始しました。署名は1月までに41,050筆を集め、1月22日に環境省および経済産業省資源エネルギー庁に提出しました。

また、グリーンピース政策渉外担当の園田開が日経新聞に論考「太陽光パネル、再利用義務化急げ」を寄稿、速やかな義務化の実現と拡大生産者責任(EPR)の重要性を訴えました。
さらに4月1日には、オンライン署名サイトchange.orgを通じてCAN-Japanに寄せられた42,197筆の署名と、一般社団法人生活クラブエネルギー事業連合の同趣旨の署名57,443筆を合わせた 、99,640筆の署名が友納理緒環境大臣政務官および資源エネルギー庁に提出されました。
こうした署名活動や声明といった市民による働きかけを経て、2026年4月3日、太陽光パネルリサイクル法案が閣議決定され、その後国会提出に至り、5月29日、可決成立しました。太陽光パネルのリユース・リサイクルに向けた重要な一歩です。
今後解決すべき課題
一方で、法律の内容を詳しく見ると、今後の制度設計に委ねられている部分が少なくありません。どのような課題が残されているのかを整理します。

義務化の対象が限定的
現時点の太陽光パネルリサイクル法は、リサイクルの義務化ではなく「リサイクル計画の届出義務化」に留まっています。また対象も一部の事業者と限定的です。大規模発電事業者のような「多量排出者」に対してリサイクル計画の届出を義務付け、不適切な処理には勧告や公表を行うとしていますが、「多量」の定義はこれからです。「小規模事業者」や「住宅用パネル」はリサイクルの努力義務に留まっており、実効性には不透明な部分が残っています。
縮小された「拡大生産者責任(EPR)」
リサイクルコストを負担するのは利用者・排出者です。メーカーや輸入業者などの生産者の責任は、「分解しやすい設計にすること」や「有害物質の情報を開示すること」という「情報・設計の責任」だけになりました。今後、生産者の責任範囲を拡大させる必要があります。
埋め立てとリユース・リサイクルのコスト差をどう埋めるか
現状、リサイクルは埋め立て処分より費用がかかります。いま、埋め立てれば2,000円/キロワット程度ですむところ、リサイクルするとなると8,000円/キロワット以上の費用がかかってしまいます。このギャップを埋めていかないとリサイクルは進まないでしょう。技術開発の加速や補助制度の活用によってリサイクル費用を下げていくことが、制度の実効性を左右する鍵となります。
これらの課題を、今後の法律の詳細設計で解決していく必要があります。
わたしたちの後押しで、太陽光発電を普及させよう
課題は数々残っていますが、これ以上の気候危機を回避するため、また、エネルギー危機を解決するためにも、「屋根置き太陽光」など環境への負荷が低いかたちでの太陽光発電を普及させる必要があります。日本では、太陽光発電を使用している世帯の割合は全国でたった6.3パーセントと1割にも満たないのが現状です。戸建住宅では、約9割近くの屋根にまだ太陽光パネルが載っていません(2023年度時点)。

グリーンピースが実施した意識調査では、環境に関心がなく、再エネは不要と考えている層でも、約4割〜5割と決して少なくない人数が屋根置き太陽光なら許容できると考えていることがわかりました。
この法律をしっかり育てて、太陽光発電に対する不安を取り除き、発電時に二酸化炭素を出さない、国産のエネルギーであること、災害時の有効性など、本来の良さを社会に伝え、平和的なエネルギーをより広く活用できる社会を目指していきましょう。
グリーンピースは、エネルギー効率の向上と、自然環境に配慮した地域共生型の再生可能エネルギーへの移行を加速させるため、再エネ・省エネキャンペーンに取り組んでいます。
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