こんにちは。エネルギー担当の柏木です。
シリーズで伝えしてきたヨーロッパ自然エネルギー現地レポート。スペインからドイツと、自然エネルギーを巡る旅も、いよいよ終わりに近づいてきました。
最後に訪れたのは、南部バイエルン州の、レッテンバッハ村。近くには、有名なノイバイシュタイン城のある、アルプスを臨むとてもきれいな場所です。
人口900人の小さい村ですが、ドイツで「一番幸せな村」と有名になっているレッテンバッハ村。レッテンバッハ村を訪れてまず驚いたのは、屋根という屋根に、ソーラーパネルが見られること。
バスの車窓から撮影した村の風景
今では、若者が定着し、産業が活発になっているレッテンバッハ村。かつては過疎の道をたどりつつあったとのこと。その活性化のプロセスに、自然エネルギーが立役者となったようなのです。
これまでのヒストリーを、24年間、村長を務めたフィッシャーさんに伺ってきました。
フィッシャー元村長ご自身は、40年、有機農業を続ける酪農家
「ないない尽くし」から、自分たちでつくりあげる未来
戦後、村が財政難となってしまったレッテンバッハ村は、1978年に近隣の大きな自治体と合併します。合併のあと、学校や公共の施設を個別に持つ必要がなくなるので、すべて共有施設は売却したそうです。その結果、共有施設が揃う近隣の大きな自治体の地区へと人口が流出、若者が村を去ってしまいました。村の活気はますます落ち込むばかり。。
しかし、800人程度いた村民が、550人まで落ち込んでしまった1993年10月6日に、再び村として独立します。
独立した当初は、共有施設もない・未来の方向性も共有していない、と「ないない尽くし」。そこで、フィッシャーさん達は自分たちの生活に何が必要かを分析することからスタートします。
村の独立=エネルギーの独立へ
分析の結果、村の再建のひとつの柱は「エネルギーの独立」でした。レッテンバッハ村は、標高850mの、森林に囲まれた地域。木材に困ることはありません。また、太陽もふんだんに降り注ぎます。菜の花から菜種油をつくり、車のディーゼルにすることもできます。
「何もない」と思っていた村の人々は、「自分たちがもともと持っている価値」を見つけ出しました。そして、エネルギーを村の外に頼って、お金を流出させる必要はない、ということに気づきます。村の独立のプロジェクトは、エネルギーの独立のプロジェクトにつながっていくのです。
当時の村長だったフィッシャーさんは、まず最初に自分の酪農の畜舎にソーラーパネルを設置しました。そのあと、それに続いてやってみたいという人が現れ、次第に村中に広まることになります。
ドイツには自治体が約2200あるそうですが、その間で行われるソーラーコンテストでは、レッテンバッハ村は度々上位にランクインしているそう。当初、お金がかかって半信半疑だった村民も、村のことを誇りとし始めているそうです。
村で一番最初にソーラーパネルを設置したフィッシャーさんの畜舎
今では、住宅だけではなく、村役場、小学校、工場などなど、様々な建物の屋根という屋根にソーラーパネルが設置されていました。
町役場の屋根にもソーラーパネルが!
工場の屋根には、透明なソーラーパネルが!
「ブーム」の秘訣はビジネスにあり
レッテンバッハ村は、電気だけではなく、熱エネルギー自給の取り組みも進んでいます。もともと、酪農が盛んな地域。落ち葉や刈った草、牛糞を発酵させ、ガスを発生させています。このバイオガスは、発電に使われ、そのときに発生する熱も活用されています。
ふんだんにある木材も、暖房のために活用されています。木材をチップに加工する産業も村にうまれたとのこと。
ソーラー発電やバイオガスの取り組みがブームのように広まった理由は何でしょうか?
フィッシャー元村長にお聞きしたら、「産業になったから」とすぐに答えがきました。ソーラー発電の増加や、バイオマス、木材チップの加工は、今は立派に産業として育ち、村と外との新たなつながりを生み出しました。いまや、レッテンバッハ村は、ドイツの他の地域にノウハウを提供するリーダーとなっています。
元村長さんは、「小さい村の例でも、広がれば何千・何万人分ものエネルギーを確保でき、雇用もうまれます。巨大化したエネルギー産業に委ねなくても、小さい村単位でも作り出すことができます」と話してくれました。
エネルギー自立にとどまらず、地域通貨で経済も自立の道へ
実はレッテンバッハ村、独立しているのはエネルギーだけではありません。なんと独自の地域通貨もあるとのこと。地域で、コイン1つが5ユーロ(約660円)として流通しているそうです。お互いに取引できる通貨をつくることで、村の中にお金を留まるように、との目的でスタートしたそうです。
村のシンボルである教会が刻まれた通貨
レッテンバッハ村で発見した「グリーンピースエナジー」!
私たちが元村長のフィッシャーさんにお話を伺ったのは、村の中心部にあるカフェ。村に戻ってきた若い人が満足できる生活スタイルを送れるようにと、カフェとスーパーが一緒になった場所をつくったそうです。このお店は、地域のコミュニケーションを円滑にする潤滑油のような存在になっているそうです。
ここで、見つけたのが、「グリーンピースエナジー」のロゴマーク(「グリーンピースエナジーって何?」と思った方、ぜひこちらのブログを!)。
お店の電気は、100%自然エネルギーの電気を供給するグリーンピースエナジー社と契約しているとのこと。フィッシャーさんは、ウィンクしながら「グリーンピースエナジーの電気が一番クリーンだ!」と教えてくれました。
自分たちがお買い物するお店が、クリーンな電気を使っていると分かったら、なんだか気分がいいですよね。
ドイツのとある村と、福島県のとあるコミュニティの共通点
先ほどご紹介したレッテンバッハ村のお店でお買い物をしながら、福島県三春町で、有機農家の大河原夫婦がオープンしたコミュニティショップ「えすぺり」のことを思い出しました。えすぺりでは、地域の特産物を販売するほか、カフェスペースも併設、地域の方々が、ちょっと寄ってお茶をしたり、お喋りをしたりする場所になっています。
10月から、グリーンピースと大河原さんが一緒にスタートしたプロジェクト「ソラライズふくしま」(※)では、えすぺりに10kWのソーラーパネルを設置して、えすぺりが地域の方にとってのソーラー発電の「モデルハウス」のような存在になることを目指しています。
※ソラライズふくしまのクラウドファンディングは、目標を上回る123%のご支援を頂いて11月24日に終了しました。
レッテンバッハ村でソーラーブームが起こったように、福島県の三春町でも、えすぺりに設置されたソーラーパネルを見て「自分もやってみたい」という人が次々現れることを願って、大河原さんと一緒に取り組んでいます。
これでヨーロッパの旅は終わり
スペイン、ドイツでは、自然エネルギーへの取り組みによって、エネルギーを自分たちの手に取り戻そうとする取り組みをたくさん見てきました。
私たちが訪問した会社や地域が、今とっても輝いている共通点を考えてみると、「持続可能なビジネスがうまれていること」、「地域に利益が還元していること」の2点のように思います。
自然エネルギーは、人や環境への影響が少ないというだけではなく、地域に雇用を生み出し、新しいビジネスチャンスを創出させていました。だからこそ、取り組んでいる人の顔はみんな明るく、希望に満ちていました。
日本でも、来年4月から、わたしたち一般家庭でも電力会社の選べる電力自由化が始まります。
エネルギーはもっと私たちの身近なものに、なります。
エネルギーの選択肢はもっと多様に、なります。
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