こんにちは。エネルギーチームの柏木です。 

太陽光発電って、自然エネルギーって、ホントに環境にいいの?

自然に優しいと言われる太陽光発電や風力発電。

「それってホント?」という疑問の声、たくさん頂きます。

自然によかれと思ってたくさん設置した太陽光パネルや風力発電が、「環境に悪影響」となったら元も子もないですよね。皆さんの心配、とてもよく分かります。

かつて、原子力発電も「安全で二酸化炭素を出さない地球温暖化対策のための発電」とされ、推進されました。同じ道を進みたくない、進むべきではありません。

自然エネルギーにもリスクがあります。自然の中に人工物(発電設備)をつくりエネルギーを使う行為そのものが、環境に何らかの影響を与えます。だからこそ、まずは使用するエネルギー量をできるだけ減らすことが大切。その上で、必要なエネルギーについては、人にも環境にもできるだけ影響の少ない自然エネルギー100%を目指したい。それがグリーンピースの目指す世界です。

よく、「脱◯◯」と「◯◯推進」の議論は平行線と言われます。わたしたちが使う電気のエネルギー源によって、それぞれどのような影響・リスクが生じるのか、わたしたちはどのようなリスクだったら受け入れられるのか・費用を負担できるのか、といったことを、客観的なデータをもとに、様々な視点・立場から話し合う環境をつくることで、平行線の議論から抜け出し、具体的なアクションにつなげられるはず。

そのはじめの一歩として、今日は、自然エネルギーについてよく頂く質問について、お答えしていきたいと思います。

1.”自然エネルギー”とは?

石炭や、石油、天然ガス、ウランのように枯渇することなく、二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないエネルギーのこと。資源は無限にあり、太陽光も風力も日本中に豊富にあるので、エネルギー自給率向上にもつながります。

また、「再生可能エネルギー」とも言われますが、かつて原子力発電も、核燃料を”リサイクル”することによって「再生可能エネルギー」と呼ばれていたため、区別するためにもグリーンピースでは「自然エネルギー」と表記しています。

 

2. どんな自然エネルギーがある?

太陽光、風力、水力、地熱を利用したエネルギーは耳にしたことがあると思います。他にも、バイオマス、太陽熱、波力などがあります。

太陽光ではソーラーパネルで光を電気に直接変換しますが、多くの場合、風、蒸気、水などの力でタービンを回転させて、発電します。

 

3. 自然エネルギーはお天気任せで不安定?

太陽光発電は晴れの日の昼間のみ、風車は風が吹くときのみ、発電します。火力発電や原子力発電と違って、自然エネルギーでは発電する電気の量が「変動」します。

でも、「変動すること」と「不安定であること」は異なります。自然エネルギーの変動は、正確な天気予報があれば予測ができます。例えばドイツでは、気象データを元に、15分単位で風力発電所の発電量が予測されています。予測に応じて、風車の運転を調整したり、他の発電所から電気を融通する準備をしたりしています。精度の高い予測は、安定した電力供給に必要不可欠です。

また、広い範囲で考えれば考えるほど、この「変動」のギャップは小さくなります。これまで、北海道から沖縄までをカバーしてきた10の電力会社は、基本的に自らのエリアで電力を融通してきました。これを、日本全体で電気を融通しあえば、自然エネルギーの変動は吸収しやすくなります(東京が雨でも、大阪は快晴で太陽光で発電した電気が余っていたら、東京エリアに融通できますよね)。ヨーロッパでは、国をまたいで電力のやり取りを行なっており、技術的にも可能です。日本でも全国規模の電気の融通を目指して、電力会社・政府も取り組みを始めています。

変動を予測するとともに、変動をできるだけ少なくできるよう広域で電気を融通するためのネットワーク管理がカギなのです。

また、地熱や中小水力発電、バイオマス発電など、日本には天候による変動が少ない自然エネルギー源も豊富にあります。

 

4. 自然エネルギーは高い?

「電気の安い・高い」を、何で判断しますか?
「電気代でしょ!」と思った方、ちょっと立ちどまって、考えてみませんか?

自然エネルギー普及促進のために、自然エネルギーを一定の期間、きまった価格で電力会社が買い取る固定価格買取制度は、わたしたち電気の利用者が「再エネ賦課金」として負担しています。その額、標準家庭では月額474円(2015年度)。この額は、電気料金の請求書に分かりやすく示されています。

一方で、原子力や化石燃料による発電に使われる補助金やコストは、私たちが税金や電気料金で負担しているのに、その額は示されていません。しかも、化石燃料による二酸化炭素排出が引き起こす気候変動への対策費や、いまも収束しない福島第1原発事故の事故処理に必要なコストのすべてが電気料金に含まれている訳ではありません。また、原発で使われた使用済燃料の処分方法は決まっていないので、必要なコストは正確には誰も分かりません。

「電気の高い・安い」には、様々な見方があります。
いまだけではなく、将来の負担も考えたときに、経済的に合理的なのはどのようなエネルギーなのか、という視点も非常に重要ではないでしょうか。

自然エネルギーの導入が進む海外の例を見ると、自然エネルギーのコストは低下し続け、原発や化石燃料発電のコストは、建設工期の延長や安全対策、そして資源価格の上昇により、上昇傾向にあります。日本でも、政府の支援制度が始まった2009年以降、太陽光発電のコストは低下しています。家庭用の太陽光発電設備について、2008年度には1キロワットあたり72万円でしたが、2013年度末には41万円/kWと43%も低減しています。

 

5. 陸続きの国がなく、日本は電気が輸入できない?

「欧州で自然エネルギーの比率が高いのは、電気が他国から輸出入できて、自然エネルギーの変動が吸収できるから。島国の日本とは状況が違うのでは?」よく聞かれる、この質問。

例えば、ドイツでは、近隣の国から電気を輸入していますが、反対に電気の輸出も行っています。トータルで見ると、電力の輸出は輸入を上回っており、「自然エネルギーの比率が高い国は電気の輸入に頼る国」とは言えません。(注1)

スペインの例を見てみましょう。スペインはポルトガル・フランスに挟まれ、両国と電気のネットワークをつなぐ連系線があります。スペイン国内での使用電力量や、この連系線の規模は、東京電力とほぼ同じなのですが、スペインでは風力発電がなんと全発電量の24.5%を占めました。(2014年1〜5月、注2)

スペインの例を見ると、自然エネルギーの変動を事前に予測し、適切な管理を行えば、東京電力単体でも自然エネルギーの比率をもっと高めることは可能ということが分かります。

日本には、スペインよりも大きな容量の連系線があります。日本全国で自然エネルギーを融通することができれば、今以上に自然エネルギーを導入することは可能です。

 

6. 自然エネルギー発電の設置で自然破壊?

山の中に突然現れる、大規模な太陽光発電や、風力発電に驚いた、という声をよく聞きます。自然環境の中に人工的な建造物をつくるのですから、環境への影響は避けられません。

だからこそ、どのようなリスク(環境や住民への影響)があるのか、丁寧な説明が必要です。その上で恩恵とリスクを比較し、どのようなリスクであれば受け入れられるのか、しっかり地域の住民の方が主体となった合意形成、開かれた議論が必要です。

たとえば、ドイツでは、風力発電と住民の健康被害や自然環境をどのように両立するかが議論され、風車の設置にふさわしい地域とそうでない地域を、あらかじめ指定する制度(ゾーニング制度)がスタートしました。(注3)

日本でも、静岡県富士宮市で「富士宮市富士山景観等と再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例」が制定されたり、徳島県鳴門市では自治体がNGOとともに自然エネルギー発電設備の立地適性を検討するなど、取り組みが始まっています。(注4、5)

グリーンピースでも風力発電に賛成・反対、両方の考えの方にお話を伺っています(関連ブログはこちら)。

 

7. ソーラーパネルは有害?

日本で導入されているソーラーパネルのほとんどはシリコンを用いたソーラーパネルで、近年製造のパネルの約8割はガラスでできています。ソーラーパネルに含まれる化学物質は外部に排出されないように設計されているため、環境への排出は極めて小さいとされています。

ソーラーパネルの長寿命化が達成できるよう研究開発が進められていますが、現時点では25〜30年程度とされています。いま使われているソーラーパネルがその寿命を終え、大量に廃棄されるのは、2030年代。その点を見据えて、環境省を中心に政府がガイドラインの作成やリサイクルシステムの構築を開始しています。(注6)

また、実際に秋田県と北九州市は、パネルのリサイクル事業を開始しています。秋田県では、家電リサイクル等の経験やノウハウを活用して、2009年から太陽電池のリサイクルシステムの研究をスタート。北九州市では、産官学共同で、2017年ごろの実用化を目指して部品の95%をリサイクルできるような設備の研究開発を進めています。(注7)

欧州では、2011年12月に電化・電子製品の廃棄に関するWEEE指令に、ソーラーパネルの廃棄が定められました。同指令では、パネルのリサイクルの責任は製造者が負うこととし、エンドユーザーは追加料金を支払う必要がないとされています。(注8)

 

8. ソーラーパネルの製造には、パネルが発電する電気よりも多くの電気が必要?

ソーラーパネルは、製造に必要なエネルギー以上の電気を生み出すことができます。

ソーラーパネルの製造に必要なエネルギーを、製造したパネルが生み出すエネルギーによって回収する期間のことを、エネルギーペイバックタイム(EPT)といい、1.4〜3.4年との研究結果が出ています。(注9)

 

9. 風車に渡り鳥が衝突する?

風車の設置数の増加にともなって、風車に鳥が衝突するケースが報告されています。

日本野鳥の会がとりまとめているように、計画段階から周辺の鳥の状況から立地についてよく検討すること、野鳥をはじめとする生態系に影響のあると考えられる場所や渡り鳥の通り道に風車を建てないなど風車の配置を考慮すること、渡りの時期に風車を止めるなど、建設前も建設後も、環境への影響を十分に検討し、透明性の高い意思決定がされることが必要だと考えています。(注10)

 

10. 風車の騒音・低周波は住民の健康被害を引き起こす?

風車を設置する際には、地域の住民の方に早い段階から計画を相談すること、開かれた話し合いを丁寧に行うことが必要です。音については、風車からの距離が離れるほど、影響は小さくなります。開かれた話し合いのなかで、ルールをつくり、守ることが大切だとグリーンピースは考えています。

すでにご紹介していますが、ドイツでは、風力発電と住民の健康被害や自然環境との両立が問題化、風車の設置にふさわしい地域とそうでない地域を、あらかじめ指定する制度(ゾーニング制度)がスタートしました。日本でも、静岡県富士宮市で「富士宮市富士山景観等と再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例」が制定されたり、徳島県鳴門市では自治体がNGOとともに自然エネルギー発電設備の立地適性を検討するなど、取り組みが始まっています。


 


冒頭でもお話した通り、自然の中に人工物(発電設備)をつくりエネルギーを使う行為そのものが、環境に何らかの影響を与えます。だからこそ、まずは使用するエネルギー量をできるだけ減らすことが大切。

このブログを書きながら、人にも環境にもできるだけ影響の少ない自然エネルギー100%の日本をつくるためには、わたしたち市民の参加が必要不可欠だと改めて思いました。

エネレボEnergy Revoluiton Japanのメルマガでも、自然エネルギー100%の日本にするために、今わたしたちにできることをおしらせしています。ぜひメルマガ登録して、エネレボメンバーのお一人になってください。

今回は、10個のよくある質問にお答えしましたが、他にもご質問があれば、ぜひお知らせください。 


注1)http://www.agora-energiewende.de/fileadmin/downloads/publikationen/CountryProfiles/Agora_CP_Germany_web.pdf

注2)http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1406/20/news038.html

注3)http://jref.or.jp/images/pdf/20150925/JREF_Four_Reasons.pdf

注4)http://www.city.fujinomiya.shizuoka.jp/municipal_government/llti2b0000000w33.html

注5)http://www.wwf.or.jp/activities/2015/04/1259727.html

注6)http://www.env.go.jp/recycle/report/h25-03/01.pdf

注7)http://www.sangyo-times.jp/article.aspx?ID=1018

注8)http://www.solarwaste.eu/pv-waste-legislation/

注9)http://www.env.go.jp/recycle/report/h25-03/02.pdf

注10)https://www.wbsj.org/nature/hogo/others/fuuryoku/shiryo100927_08.pdf