国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都港区)は本日、リユースカップのライフサイクルアセスメント(LCA)を使い捨てカップと比較した報告書『リユースが拓く未来 ーー東アジアにおけるリユースカップシステムと使い捨てカップシステムの環境パフォーマンスに関するライフサイクル比較評価』を発表しました。本報告書では、東京、釜山、台北、香港でリユースカップ・サービスを提供する事業者計5社の実証実験データを分析し、16項目の環境影響項目を使い捨て飲料カップのシステムと比較しました。その結果、リユースカップシステムは低い使用頻度であっても、多くの影響項目において使い捨てカップシステムより優れていることがわかりました。

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<報告書の主なポイント>

  • 理論上の分析だけではなく、東アジアにおけるリユースサービス事業者より提供された実際のデータを元にして、より実践に近い分析ができた。
  • リユースシステムの環境性能は、低い使用頻度であっても、CO2排出を含むほとんどの影響項目において使い捨てカップシステムより優れている。
  • 使い捨てカップシステムのライフステージで最も環境負荷が大きいのは製造段階であるため、生産自体の抑制が環境と人間の健康に最も大きな利益をもたらす。
  • リユースカップシステムの環境影響は、洗浄工程の環境負荷が最も大きく、またリユースカップの輸送も大気質に大きな影響を与える。
  • より環境負荷の低いリユースシステムを実現するためには、環境負荷の低い洗剤の使用、物流のゼロエミッション化、そしてリユースカップの配送・回収ロットの効率性を最大化するなどの実施が不可欠である。

<提言>

政府・自治体に向けて

  • リユース目標のさらなる明確化
    • 「2030年までにプラスチック容器包装の60%をリユース・リサイクル(注1)」のリユース・リサイクルの内訳を明らかにし、3Rの優先順位にのっとった比率で目標設定する。
  • リユース推進のための各種施策を実施する
    • 財政支援などを通じて、企業のリユース導入への障壁を下げる
    • 容器の規格・洗浄プロセスなどリユースシステム全般に関して標準化を進める
    • リユース推進のために全国の自治体と連携協力を深める
    • 公共イベントなどでレンタルリユースのシステムを導入する
    • 民間の施設(コンサート会場など)を管理する企業とも連携協力をする

小売・消費財企業に向けて

  • 容器包装の排出量および削減状況を公表する
  • 使い捨て容器包装の総量削減を伴った「リユース目標」の設定とロードマップの公表
  • リユース推進を行いやすくするために、リユース企業連合を立ち上げるなどし、政府への積極的な働きかけを実施する

グリーンピース・ジャパン プラスチック担当、大館弘昌

「今回の調査で、東アジアにおいてもリユースカップシステムの方が使い捨てカップシステムよりも環境面で優れていることが明らかになりました。リユースシステムの推進はヨーロッパや、台湾などで特に進んでいますが、日本でも『プラスチック資源循環戦略』のマイルストーンの一つである『2030年までに容器包装の6割をリユース・リサイクル』を活用した取り組みを政府、各自治体が推進することで、リユースの普及拡大に向けた大きな機会となるはずです。それによって、企業がリユース事業に参入しやすい地盤を作ることもできます。現在世界で議論が進むプラスチック条約交渉において真のリーダーシップを発揮するためにも、日本の政府・自治体・企業には改めて本格的なリユース推進のための行動を求めます」

(注1)2019年に消費者庁・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省によって策定された「プラスチック資源循環戦略」で、「2030年までにプラスチック容器包装の60%をリユース・リサイクル」が目標の1つに掲げられた。

<参考資料>

・報告書:『日本のカフェ業界における使い捨てカップの現状』(2022年7月)

・報告書:『リユース革命 ~カフェ業界における脱・使い捨て容器 に向けたソリューション~ 使い捨てプラスチックの課題と先進事例から解決策を考える』(2021年8月)

以上