はじめに

6月半ば、グリーンピースのスタッフ2名は、トヨタのレンタカーサービスを利用し、bZ4XというEV(電気自動車)を静岡県から愛知県まで運転してみました。高速道路を使えば距離にして約150キロですが、せっかくなので一般道を走り、車の運転しやすさ、充電施設を試してみました。この記事ではこのEVの旅についてご報告します。

1. EVは運転しやすい?

皆さんはEVの運転とはどのようなものか想像されたことはありますか? 私は、道を歩いている際に後ろからEVが来るととても静かなことには気づいていましたが、それ以外についてはあまり違いについて実感がありませんでした。今回初めてEVを運転し、ガソリン車との違いや共通点を体験することができました。ちなみに私は自家用車は持っていません。

現在、トヨタのサービスでレンタルできるEVの車種はbZ4X(ビーズィーフォーエックス)のみです(より正確には現在日本国内で運転できるトヨタの唯一のEV)。これを東静岡駅前にあるトヨタのカーシェアサービス、TOYOTA SHARE(トヨタシェア)で借りました。予約も、解錠も、支払いもすべてスマホのアプリから行います。

アプリで解錠、施錠をします。
アプリで解錠、施錠をします。

最近はガソリン車でもスマートキーとプッシュボタンでエンジンをかけることが多くなっていますが、EVでも運転開始時と停止時には「オン/オフ」ボタンを押します。またオートマ車と同じく、「D(ドライブ)」「P(パーキング)」を選んで運転を始めたり停車したりします。運転を始めると、正直なところ、あまり通常の車と変わることはありません。もちろん、音はガソリン車と比べてとても静かです。また、坂をのぼる際にシフトチェンジはありませんし、加速はとてもスムーズです。

EVを運転している人は加速がなめらかなので、過度なスピードに気をつけるようにしている人も多い、と聞きます。ガソリン車に慣れた人が、EV車を運転する際には、優れた加速性能を念頭に置いて運転をするとよさそうです。

また、EVユーザーからは他のメリットとして、「オイル交換が不要」、「ブレーキパッドの交換周期が長い」、「回生ブレーキが搭載されているので、減速で発生するエネルギーを再利用することができる」ということを聞きます。私はこれまでの癖で、車を停めるたびに左手でサイドブレーキを探してしまいましたが、EVはモーターを使ってブレーキをきかせるため、サイドブレーキはありません。

ひとつ個人的に感じた難点はbZ4XはSUVでとても大きな車である、ということでした。現在、自動車メーカー各社が売り出すEVは、日産のリーフやサクラは例外として、大型のSUVであることが多いようです。これは従来のガソリン車でSUVの人気が世界的に高まっているためその延長線上にあることなのでしょうが、SUVは環境負荷が通常車よりも高いため、今後、トヨタをはじめ自動車メーカーにはより小型のEVの開発を期待したいところです。

2. 充電について

ガソリン車と同様、レンタルした時点では私たちが借りた車は満充電の状態でした。bZ4Xのバッテリー容量は71.4kWhあり、仕様では、一充電走行距離は最大で559キロとなっています。むろん、この距離は運転の仕方でだいぶ変わってきます。

bZ4Xが出回るようになってからユーザーから指摘されていた課題のひとつとして、運転席のメーターでバッテリー残量が%で表示されず、残りの航続距離のみしか見ることができない、という点がありました。EVならではのエネルギー消費節約という観点から、あと何キロ走れるかだけではなく、パソコンやスマホのように何%バッテリーが残っているのかが分かることは重要ではないか、と多くのユーザーが指摘したこともあり、トヨタは今年の4月にこれを改善することを発表し、5月から順次対応するとしていました。しかしながら、私たちが借りた車両ではその対応がまだなされていなかったようで、バッテリー残存量は表示されず、距離しかみることができませんでした。課題に対応することが決められたことは歓迎しますが、私たちはどうやらタイミングが悪かったようです。従って、私たちは残存距離を頼りに運転しました。

理論上はスタートから550キロ強運転できるはずですが、気温の高い日だったのでエアコンを使ったり、坂道をのぼったりしたので、この距離は短くなります。運転しながら、次第に距離が減っていくことがわかります。充電スポットは、車内のコネクティッドナビからでもGoogle マップからでも見つけることができます。

東静岡を午前10時過ぎに出発して、国道1号線を下り、お茶の産地である掛川市まで運転したところで、残存距離は300キロ弱。そこで休憩を取り、充電してみることにしました。道の駅掛川は、国道沿いにある大きな休憩所です。地元の名産品や近隣の農家が作る野菜の売り場があり、もちろん食事もできます。EV充電器は、道の駅と道路をはさんで位置する駐車場の片隅にありました。

道の駅掛川
道の駅掛川

備え付けられていたのは株式会社e-Mobility Powerの急速充電器「CHAdeMO」で、本来であれば、30〜40分でバッテリー全体の80%程度の充電が可能でしたが、半分以上残存していたため、15分程度の充電にとどめました。充電するにはレンタカーに付随しているe-Mobility Powerの充電カードを使います。これに充電量が記録され、車を返却した後に確認、最終支払額に加算される仕組みです。

道の駅掛川の駐車場に設置されている充電スポット
道の駅掛川の駐車場に設置されている充電スポット

一方で、最終目的地の豊田市のホテルの駐車場にあった充電器は、スマートフォンにトヨタの決済アプリ「トヨタウォレット」をレンタカーサービス用アプリとは別にインストールして、スマートフォン経由で認証、決済を行わなければなりませんでした。調べてみると、もともとは、e-Mobility Powerのカードで充電できたそうですが、2013年頃に設置された充電器は、これまで3G通信で認証されており、その後、4Gや5Gの台頭で利用者が減少、2022年3月から3Gが停波となったため、充電器単体での通信ができず、別途スマートフォンからの通信が必要になってしまったようです。そのため折り返し地点の豊田市では充電はしませんでした。

翌日、帰路は高速道路を利用し、立ち寄った岡崎パーキングエリアで休憩を取っている間に充電しました。充電器は2基あり、私たち以外にも、日産のEVユーザーが充電する姿を見かけました。

今回の私たちの充電経験はこのような感じでした。

今年の3月に高速道路各社が2025年までに急速充電器設置の増設数を発表しました。日本政府は、「車両の普及と充電インフラの整備は車の両輪としてバランスよく進めていく」として、2030年までに全国で15万基の公共充電器を設置するという目標を設定しています*1。現在までの設置数は約3万で、このうち急速充電器は8千基程度にとどまっています。

様々な調査で、EV購入をためらう理由として充電施設の不足が挙げられることがあります。実際には、すでに国内で3万の公共スポットがあるので、地図で調べて移動すれば、運転の途中で電気がなくなって立ち往生してしまうという状況は避けられると思います。

しかし、ノルウェーのようにEV普及率が8割程度になった国では、政府が充電器設置に尽力したという実績があるのも事実です。ですので、やはり、EVの利便性と環境負荷の観点から様々な方法で利用を促進しつつ、ユーザーが安心できるようなインフラの整備の両方を進める必要があるでしょう。公共充電器は数が多ければ多いほどよいということはなく、現在、EVへの移行という過渡期にあるなか、ユーザーがどのようにEVを使うか、今後より正確なデータが集まることによって最適な充電施設の設置が実現することと期待されます。

*1 経済産業省2023年6月23日「充電インフラ整備促進に関する検討会事務局資料」

3. 気になる費用について

2023年7月はじめ現在、リッターあたりのガソリン価格は、日本国内で160円から180円となっています。EVを充電するのは、高速道路などにある公共の充電器を使うか、自宅で充電するかで料金が異なります。
現在のところ、公共の充電施設を利用した場合、充電した量ではなく、充電した時間で料金を払う「時間課金方式」が普通です。つまり、出力が落ちて充電に時間がかかった場合でも、その分課金されるのが現状です。

公共充電器の利用にあたっては通常会員カードが必要です。今回私たちが利用したe-Mobility Powerの利用にあたっては、カード発行手数料や月額使用料がかかります。e-Mobility Power以外では、各自動車メーカーが発行するカードがあります。場合によっては普通充電の場合、無料で利用できるケースもあるようです。

折しも今年の6月、グリーンチャージというスタートアップ企業が静岡県浜松市で全国初の従量課金型の充電器を設置したところです。1kWhあたり100円、とのことですので、現在の通常の家庭で使用する電気代がkWhあたり30円から40円の間であることを考えるとやや高めですが、ユーザーの使用時間帯、充電時間などに関するデータが集まることで、今後より公平で透明性のある充電スタンドの設置に繋がることが期待されます。

トヨタbZ4X: 急速充電はフロントフェンダー左側で、普通充電は右側で
トヨタbZ4X: 急速充電はフロントフェンダー左側で、普通充電は右側で

EVの料金体系は、現状、やや複雑ですが、単純にガソリン車とEVの燃料にかかる費用を比較すると、自宅充電ができる場合は、EVが経済的であることは明らかです。

最後に

やはり実際にEV運転を体験して、実際の充電器の状況や課題について見えてきた点が多々あります。私たちキャンペーナーは、今後、自動車をはじめとする運輸部門の脱炭素化を推進していくために、皆さんのご質問や不明な点に答えていけるよう、より知見を深めていくようにしたいと思います。この記事についてのご意見を是非お寄せください。

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