プラスチック汚染への取り組みは世界・日本においても不十分な状態が続いています。現在年間最大で1,200万トンのプラスチックごみが海に流れ出していますが、このまま何もしなければ2040年までに流出量が3倍にまで増えると言われています。その上、仮に政府・企業が掲げているプラスチック対策がうまく達成されたとしても、流出は抑えられるどころか、2040年には、2016年と比較して2倍以上増えてしまうと報告されています。さらに、プラスチック汚染は海だけに限らず、ライフサイクル全体での深刻な影響が明らかになってきており、気候変動や陸上の汚染のほか、地域コミュニティの健康被害など、多岐に渡ります。

地球規模で起きているプラスチック汚染を解決するためには、プラスチックの生産そのものを大幅に減らす必要があり、そのために優先されるべきは「リユース(再利用)」の推進です。グリーンピースは、小売・消費財・飲食業界などが、使い捨てプラスチックの大量生産・消費によって資源を使い捨てるモデルから、資源を使い捨てないリユースの仕組みへ早急に移行するよう、働きかけています。

カフェキャンペーン

2021年2月にスターバックスコーヒージャパン社(以下、スターバックス)が使い捨てプラスチックカップを紙カップに全国的に切り替えると発表したことを受け、同月グリーンピースでは緊急キャンペーン「スターバックスさん、プラスチックでも紙でもない、新しいリユースの仕組みを待っています!」を開始しました。使い捨てカップを大幅削減するために、スターバックスに「リユース目標」の設定・リユースの仕組みの全国導入・店内でのリユース徹底などを呼びかけ、同社との対話を重ねてきました。

キャンペーンに賛同する市民の人数を伝えるだけではなく、賛同者から集まったメッセージを分析して提出しました。また、市民の声を伝えるための新しい方法として、大きな影響力を持つ古着ショップDEPTの経営者で気候アクティビストeriさんに、賛同者を代表して企業との対話に参加してもらうなど、企業へより早い行動を促すキャンペーンを目指しました。

8月にはカフェ業界にリユースの導入を求める報告書『リユース革命〜カフェ業界における脱・使い捨て容器に向けたソリューション〜』を発表しました。スターバックスは11月に丸の内(東京都)でリユースカップの実証実験を開始し、同社の水口CEOは「リユースの促進は重要な取り組みの一つです。誰もがカップを当たり前に再利用するスタイルが、新たなスタンダードになる未来を目指し、リユースの選択肢を広げる挑戦を続けます」と述べるなど、変化が現れています。グリーンピースではスターバックスにリユースカップの仕組みを全国レベルで展開することを引き続き求めていきます。

多様なステークホルダーとリユース革命を日本に

大手企業によるプラスチック対策がリサイクルと代替素材への変更に偏っている中、より優先されるべきリユースの動きを加速させるため、5月には地球人間環境フォーラム(GEF)と協力し、国内外からリユース企業・自治体・財団などをゲストとして招いた「シンポジウム/リユース革命!容器包装で始まるサーキュラー・イノベーション」を東京都環境局と京都府亀岡市の後援のもと開催しました。企業・メディア・シンクタンク・自治体・市民など、800名以上の参加申し込みがあり、注目を集めました。同日、GEFと共同で制作したリユースビジネスを説明したウェブサイトを立ち上げました。また、2021年はメディアへの直接の情報提供にも力を入れ、リユースに関するメディア向けの勉強会シリーズなども実施しました。

プラスチックと気候変動

プラスチックと気候変動の繋がりについての指摘がますます増える中、多くの市民が「気候変動対策の一環としてプラスチックに取り組むべき」と考えていることが、グリーンピースの意識調査からも分かりました。11月に発表した報告書『気候非常事態をひもとくー消費財メーカーはいかにして石油大手によるプラスチックの生産拡大を促進しているかー』では、世界的な消費財企業と石油大手の繋がりを、サプライチェーン調査によって明らかにしました。また、両業界がこれまで「リサイクル」を目くらましとして利用しながら、使い捨て容器包装に依存したビジネスモデルを拡大してきた経緯などについても指摘しています。

また、世界規模で起きているなプラスチック汚染についてより分かりやすく伝えるため、グリーンピース・ジャパンが2020年に日本語字幕を担当したドキュメンタリー映画『The Story of Plastic』のオンライン上映イベントを、2021年は11回開催(主催・共催・登壇含む)し、映画を通じてメディアなどを含めた約660名の方々に問題の緊急性を訴えました。

ごみを出さないお買いものマップ「グッバイ・ウェイスト」の公開

買い物時の使い捨ての容器包装や付属品に関する意識調査」の結果を発表し、使い捨ての袋や容器、付属品などについて「不要」「使いたくない」「選びたくない」と考える人が全体の4割を超えること、リユースサービスについて「使ってみたい」人が56.4%で過半数を占めたことを明らかにしました。

同時期に、使い捨ての容器や包装なしでお買い物ができるお店を探したり登録できるオンラインマップ「グッバイ・ウェイスト」を公開。これまでテレビやラジオ、雑誌など多数のメディアに掲載されました。マップには全国1,400店舗以上のスポットが登録されています(2022年2月時点)。

また、オンラインマップ「グッバイ・ウェイスト」の公開を記念したイベントを開催しました。

公開記念イベントでは、ボランティアメンバーが実際にマップを利用した感想などを参加者に共有しました。10月には、グッバイ・ウェイスト公式インスタグラムを開設、ボランティアメンバーが、マップに掲載されている全国のお店を写真付きで紹介しています。アカウント開設から4カ月で約400名フォロワーが増加しました。

大量生産・消費から脱却し生物多様性を守る

刺されると強い痛みが生じアナフィラキシーショックを引き起こすこともあるヒアリや、デング熱をはじめとする感染病を媒介するネッタイシマカなど、日本各地ではさまざまな危険生物の目撃が相次いでいます。外来生物や感染症のリスクを専門とする国立環境研究所の五箇公一氏は、その一因は、現代の大量生産・消費を支える行き過ぎたグローバル経済だと指摘します。五箇氏の監修の元、そうした身近に迫る危機を伝え、私たちのライフスタイルを循環型の地産地消へ近づけることを勧めるキャンペーンを展開しました。

消費の中心地ともなっている東京・渋谷では、過度なグローバル経済や温暖化によって、健康や社会生活に危害を及ぼす可能性のある生物が私たちの生活圏に入り込むようになっていることをユーモアを交えて伝えるために、「あなたたちのおかげで、日本でも暮らせるようになった」と、ヒアリが人間に感謝する、巨大な「感謝の手紙」を掲出しました。
10月:特設ウェブサイト「危険生物から感謝の手紙」公開


関連報告書

・2021年5月25日「買い物時の使い捨ての容器包装や付属品に関する意識調査

・2021年8月23日『リユース革命〜カフェ業界における脱・使い捨て容器に向けたソリューション〜』

・2021年11月09日『気候非常事態をひもとくー消費財メーカーはいかにして石油大手によるプラスチックの生産拡大を促進しているかー』