グリーンピースも参加したフィリピン・マニラで行われたプライドマーチ。2022年6月。
グリーンピースも参加したフィリピン・マニラで行われたプライドマーチ。2022年6月。

5月21日は「対話と発展のための世界文化多様性デー」です。
日本にはいま、300万人以上の外国人が暮らしています。
生まれ育った土地も、文化も、言語も、習慣もそれぞれに違う場所から日本にやってきた人もいれば、日本で生まれた人、日本で育った人もいます。
世界中の人々が隣同士で生きていく社会に、大事なことは何でしょうか。

▼この記事を読むとわかること

> グリーンピースの「多様性」
> 人口の2.5%は外国人
> 難民条約に反する入管制度
> 多様性の景色を見つけよう

グリーンピースの「多様性」

55の国と地域で活動しているグリーンピース。
東京のオフィスにも、筆者自身を含めさまざまな国や地域にルーツをもつスタッフがたくさんいます。年齢層も、20代から60代まで幅広い世代がいっしょに働いています。
そんな職場で重視されるのは、「違いを尊重しあうこと」
肌や目の色、髪の色や言語、性別や年齢だけでなく、考え方や習慣や文化、働き方や信条は人それぞれ違っていて当たり前です。

グリーンピース・ジャパンのスタッフたち。2022年7月。
グリーンピース・ジャパンのスタッフたち。2022年7月。

これは、各々がなるべくストレスなく十分なパフォーマンスを発揮することで組織力を向上させ、環境保護活動で最大の成果を上げることにも繋がっていますが、国際人権法に基づいた人権についての普遍的な約束ごとです。

人口の2.5%は外国人

現在、日本の人口は1億2330万人。*1昨年から230万人も減少しています。

2022年時点の日本総人口の推移(総務省統計局ウェブサイトより)
2022年時点の日本総人口の推移(総務省統計局ウェブサイト*2より)

一方、2022年末時点での日本で暮らす外国人は307万5,213人で、2021年末より31万人余り増加しています。*3
国籍別での人数の上位10カ国は中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ブラジル、ネパール、インドネシア、アメリカ、台湾、タイ。*3
日本の人口には外国人が含まれるので、*4全人口に占める外国人の割合はおよそ2.5%になります。この割合には、日本国籍を取得した人は入っていません。

地域的な偏りはあるにせよ、人が100人集まればそのうち2〜3人は外国籍の人がいる計算です。数字の受け止め方は人それぞれかもしれません。意外と少ない、と思う人もいれば、そんなにいるのか、という人もいるでしょう。

ここで、過去1週間の行動や生活を振り返ってみてください。

どこで、何回、何を買いましたか?
バスや電車や定期船や飛行機といった公共交通機関に何回乗りましたか?
自動車に給油しましたか?
何回外食しましたか?
あなたが着ている服、毎日使っているスマートフォン、日用品、家庭用電化製品や乗り物が、どこで誰にどうやってつくられ、あなたのもとに運ばれてきたかを知っていますか?

在留資格別外国人労働者数の推移(国際留学生協会ウェブサイト*5より)
在留資格別外国人労働者数の推移(国際留学生協会ウェブサイト*5より)

そこに、どんな人が関わっているかを想像してみてください。
あらゆる人やものが国境を渡って移動する現代、日本国内で日常生活を送っているだけでも、たくさんの国や地域の人々と関わっていることが見えてきませんか。

難民条約に反する入管制度

「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する法律案」(以下、入管法政府案)が国会で審議されていることを、報道で見かけた人もいると思います。
また、2021年には名古屋出入国在留管理局(名古屋入管、名古屋市港区)の収容施設でスリランカ出身の女性が亡くなった事件を耳にした人もいるでしょう。
入管での死亡事件はこれが初めてではありません。2007〜2022年の15年間に入管施設で亡くなった人は18人、うち6人が自殺でした。*6

今回の入管法政府案に対して、日本弁護士連合の小林元治会長は今年3月に反対声明を発表しています。*7
大まかにいえばこのような声明です。

  • 外国人の入管施設への収容について、人権侵害をなくすための実効的な制度の改善がしにくい。
  • 外国人の支援者や弁護士らのはたらきかけを阻害するような制度が新設されている。
  • 難民条約のノン・ルフールマン原則*に反するおそれがある難民申請者に対する強制送還がしやすくなる。

*ノン・ルフールマン原則:難民・難民申請者は、地位の判断がなされる前に、彼らが迫害の危険に直面する国へ送還・追放されてはならないとする難民条約の原則。*8

  • 必要性と相当性を欠く退去命令と罰則を新設するなど、多くの深刻な問題を含んでいる。

こうした日本の入国在留管理制度の問題点は、以前から「国際人権基準を満たしていない」として国連人権理事会の特別報告者らの指摘を受け、正式な書簡で改善を求められていますが、現在審議中の入管法政府案に対しても「改正法案の国際人権法違反について、前回(2021年)の国会提出時と変わっていない」と指摘した書簡も今年4月に届いています。
これに対し、斎藤健法務大臣は「国連や人権理事会としての見解ではない。わが国への法的拘束力もない」と述べています。*9

ハンガリー・ロシュケ村。グリーンピースは他の団体と協力して難民に太陽光発電とインターネット設備を提供する活動を実施した。2015年9月。
ハンガリー・ロシュケ村。グリーンピースは他の団体と協力して難民に太陽光発電とインターネット設備を提供する活動を実施した。2015年9月。

多様性の景色を見つけよう

在留資格がないのに国外に退去しないのは違法じゃないか。日本で暮らしたければ在留資格をとるべきだ。
と考える人もいるでしょう。でも、ことはそう簡単ではないのです。

2021年、日本で難民申請をした人は2,413人で認定数は74人。率にしてわずか0.7%。
難民が社会問題化しているヨーロッパにおける同年の認定率をみると、ドイツが25.9%、フランスは17.5%ですから、比較にもならない数字です。*10

壁になっているのは、「難民」の基準や、手続きが適正かどうかの基準が日本独自の解釈になってしまっている点です。たとえば難民申請をしても、迫害を迫害として認めるかどうか、証拠があるかどうかが重視され、申請した本人の人権は二の次になっています。申請が認められなければ、就労することもできません。

それでも生活のために収入は必要です。就労ビザがないまま働いていたことが発覚して、入管施設に収容され、強制送還される人がいます。
彼、彼女らには家族がいて、子どもがいることもあります。日本で育って日本で教育を受けた子どもたちは、もし強制送還になっても、親の母国の言葉がわからない、日本で受けていた教育を受けられなくなるかもしれないといった弊害もあります。

ギリシャ・レスボス島の難民キャンプ。2019年9月。
ギリシャ・レスボス島の難民キャンプ。2019年9月。

2020年にベトナム国籍の元技能実習生が周囲に隠して双子を出産し、亡くなってしまった遺体を埋葬せずに保管していたことが死体遺棄罪にあたるとして逮捕起訴された事件がありました。*11
昨年の調査では、外国人技能実習生の女性のおよそ4人に1人が「妊娠したら仕事を辞めてもらう」と告げられていたことがわかっています。*12

*11:1審2審では有罪とされたが、3月に最高裁で逆転無罪判決

仕事を失ったら、いまの生活まで奪われてしまう。家族がバラバラになるかもしれない。安全に子どもを産み育てることすら許されない。
そんな危機感を抱いて生きている人が、日本という国に、無数にいます。
彼らは、日本社会の一部です。
それぞれがどこかで繋がっている、世界のしくみの輪の中のひとりです。

5月21日の日曜日は、対話と発展のための世界文化多様性デーです。

深呼吸して、背中を伸ばして、ゆっくりと辺りを見渡して、生活の周りにどんな「多様性」があるのか、見つけてみませんか。
そしてそんなお話を、家族や友だちと、ちょっとしてみませんか。

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*1:世界人口白書2023
*2:総務省統計局
*3:出入国在留管理庁
*4:総務省統計局
*5:国際留学生協会
*6:2023年1月19日 Dialogue for People 
*7:日本弁護士連合会
*8:国連難民高等弁務官事務所
*9:2023年4月25日 東京新聞
*10:難民支援協会
*11:2023年3月24日 NHK
*12:2022年12月23日 NHK法務省調査結果