「私はこの日を70年以上待ち続けていました。ついにその時を迎えることができて、私は感無量です。」

今年7月、ニューヨーク国連本部で新たな核兵器禁止条約が採択されたことを受けて、広島原爆の被爆者、サーロー節子さんは力を込めて言いました。
「これは核の時代の、終わりのはじまりです。」
グリーンピース 平和の日 核兵器禁止条約
写真:広島原爆ドーム前で行なったアクション

 

国際法発効にむけ、次のステップへ

新たな条約の採択は、国際法としての発効に向けたスタートラインにすぎません。
今日9月20日をもって、各国政府は核兵器禁止条約への公式署名という次なる一歩を踏み出します。署名の後、国際法に適用するためには国内法として批准が必要です。50カ国以上の批准を得ることで、条約は国際法として発効します。
条約に署名・批准をした政府は、実際の義務が生じます。つまり、いかなる状況下においても、核兵器やその他の核爆発装置の開発、実験、生産、製造、その他の方法によって取得、保有、貯蔵すること、そして「使用するとの威嚇」を含めた使用の禁止を誓約しなければなりません。
条約では、各国の領土内における核兵器等の配置、設備、配備することも禁じています[1]。

すでに非常に多くの国々が核兵器禁止条約を支持しており、7月の時点で122カ国が支持を表明しています。今後の数週間そして数カ月の間にさらに多くの国が署名と批准を行うことが見込まれます。

グリーンピース 平和の日 核兵器禁止条約

核保有国は条約に反発、日本も不参加

好調な出だしではありますが、核廃絶への取り組みは道半ばです。悲しいほどに、核兵器の世界は極端に不公平です。
世界で核兵器を保持しているのはわずか9カ国しかなく、米国、中国、フランス、ロシア、英国、インド、北朝鮮、パキスタンそしてイスラエルです。さらに、ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダそしてトルコの5カ国は、北大西洋条約機構(NATO)の核兵器の共有政策の一環として、米国の核兵器を設置しています。
オランダを除くこれらの国々、および他のNATO加盟国は、新条約についての話し合いに参加しませんでした。オランダは参加しながらも反対票を投じました。日本は被爆国であり、核の脅威を知っているのにも関わらず、政府は署名をしない見通しと言われています。
どの国々も新条約への署名を頑なに拒んでおり、米国は他の国々が署名をしないよう相当な圧力を掛けてきました。
重要なことは、批准をしない限りはこの条約に縛られることはないということです。

グリーンピース 平和の日 核兵器禁止条約

写真:米・ワシントンDCで行われた核安全保障サミットへの抗議活動の様子、2016年4月

「反核」を国際基準に!

現実は厳しいものですが、絶望する時ではありません。今日という日は、新時代の幕開けであり、核兵器の時代を終わらせる希望の瞬間なのです。
この核兵器禁止条約に署名・批准する各国は、世界の政策に影響を与えることに貢献し、安全保障政策において、大量破壊兵器の役割を非合法なものにしていくでしょう。
それは、すぐに条約に署名しない国々の軍備にすら影響を与えうるものです。安全保障のために核兵器が合法かつ有用である、という主張はますます説明が難しくなります。そして、もっと早くすべきだった「反核」という国際基準が実現するのです。
ガンジーは言ったといいます。
「人々はあなたを無視するだろう。あざ笑うだろう。そして戦いを挑んでくるだろう。そのときあなたは勝つのだ。」
核兵器を禁止する条約が多数の国々に支持されて、わずか4週間という記録的な短期間で合意に向けた話し合いがもたれるとは、1年前ですら多くの人々が夢物語だと笑い飛ばしたことでしょう。
でも、それは叶ったのです。これまで世界の安全保障を議論する場で、末席に追いやられることの多かった国々が一致団結し、市民社会の支持があり実現までこぎつけたのです。
グリーンピース 平和の日 核兵器禁止条約
これまでのところ、多くの国々がこの条約を支持しており、今後の数週間から数カ月の内に署名をする予定です。それらの国々は、自国の市民および世界中の何百万人もの意思を明確に反映させようとしています。
少数の核保有国が世界の安全保障を決めることを私たちは許しません。核兵器は、平和と安全をもたらす手段ではありません。

日本政府にも条約への賛同を呼びかけよう

ある特定の地域で核戦争が再び現実味を帯びてきた今こそ、有害な兵器を放棄する、またとない機会です。
9月21日は国際平和デーです。核兵器禁止条約に賛同すること以上の平和貢献はありません。
私たちみんなで、政府に条約への支持を求めていきましょう。
一人ひとりに、できることがあります。
国連の日本政府代表や国会議員に、条約を支持するようあなたの声を伝えましょう。
国連の日本政府代表チームに、支持を促す署名も開始されています。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の署名はこちらです(英文)。

文章:グリーンピース・インターナショナル シニア・平和アドバイザー ジェン・ママン
グリーンピースは、1971年にアメリカの核実験に反対し核実験場に船を進めたことで始まりました。以降、一貫してどの国であっても、核兵器に反対し行動してきました。グリーンピースは、これからも、核兵器も原発もない世界をめざします。

参考資料

[1]条約の全文はこちらの暫定訳(PDFファイル)を参照。

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