国際環境NGOグリーンピース(東京都新宿区、以下グリーンピース)は、本日、ファッションと環境問題に関する報告書の日本語版2点『ファストファッションを、もっとスローに』『ファッションをデトックスーー有害化学物質ゼロを目指した7年間の歩み』を発表しました(注1)。これらは、グリーンピース・ドイツが2016年、2018年に発表した報告書の翻訳版です。近年日本でも、ファッションの環境負荷への関心や、業界のサステナビリティへの意識が高まる中、日本語版を期待する声が寄せられていました。

【報告書の要旨】

『ファストファッションを、もっとスローに』(原題:Timeout for Fast Fashion)
2000年以降爆発的な拡大を遂げたファストファッションにより、衣料品生産は倍増し、大量に消費・廃棄される時代に。有害化学物質の使用、温室効果ガスの排出、地球資源の消費や廃棄物問題、人権問題など、複合的で深刻な課題を概説。

『ファッションをデトックスーー有害化学物質ゼロを目指した7年間の歩み』(原題:Destination Zero – Seven Years of Detoxing the Clothing Industry)
衣料品の生産過程で使用される有害化学物質による汚染から河川や海洋を守るために、グリーンピースは2011年から大手衣料品ブランドに対して、2020年までに有害化学物質の使用・排出ゼロを目指す「デトックス・キャンペーン」を世界中で展開。衣料品業界に変革をもたらしたキャンペーンの7年間の軌跡をまとめた。

【グリーンピース・ジャパン  プログラム部長  高田久代】

「今年はデトックス・キャンペーンの目標年でした。2020年までに有害化学物質の使用・排出ゼロを目指す『デトックス宣言』を行った衣料品の企業・ブランドは、世界の衣料品生産の15%を占めます。最初はグリーンピースの働きかけで始まった取り組みが、多くの人々の支援により、次第に業界自らの自主的な取り組みに変化していき、衣料品業界に大きな変革が起こったことを非常に嬉しく思います。

デトックス・キャンペーンに日本から唯一参加したファーストリテイリング社は、グローバルなリーディング企業として、グリーンピースと積極的な対話を行い、2013年にデトックス宣言をしました。製造プロセスにおける有害化学物質の使用・排出の全廃に向けての努力や、業界への波及効果を高く評価します。

一方、衣料品業界による環境負荷はいまだ甚大で、大量生産・大量消費・大量廃棄の状況は続いています。コロナ禍を機に、『ものを大切にする』『必要かどうかよく考えて買うようになった』『衣服の購入が減った』といった生活者の意識変化も見られます(注2)。ファッション業界は、持続可能なビジネスのあり方をますます求められています」


【参考資料】

(注1)報告書リンク
『ファストファッションを、もっとスローに』
『ファッションをデトックスーー有害化学物質ゼロを目指した7年間の歩み』

(注2)「コロナ禍と暮らしや環境問題への意識に関する調査」(ファッション関連項目)

  • 新型コロナウイルス感染症の流行の前に比べて、環境問題や環境に配慮した持続可 能な暮らしに、より関心を持つようになった人は、「非常に当てはまる」「ある程 度当てはまる」を合わせて53.4%「前から関心があり、程度はあまり変わらな い」は23.9%。最も関心の高いテーマの3番目は、「ものを大切にすること」42.9%
  • コロナ禍を機に、買い物をする際の意識や行動は変わった人は、「非常に変わっ た」「ある程度変わった」を合わせると66.8%。どのように変わったかについて、 もっとも多かった回答の1位は「あまり買い物をしなくなった・必要かどうかよく考えて買うようになった」59.6%、3位「衣服の購入が減った」35.9%

※グリーンピースは、服のリメイクやアップサイクルなどを通じて、個人が楽しみながらファッションの環境負荷低減に取り組むMAKESMTHG(メイクサムシング)というプロジェクトを、この秋冬に実施予定です。