人が引き起こした災害で危機にさらされる命

きょう9月1日は防災の日1です。

7月に静岡県熱海市で起きた土砂災害や7〜8月に各地を襲った豪雨、東京オリンピックでも話題となった記録的な猛暑など、改めて自然災害の恐ろしさを実感された方も多いのではないでしょうか。

年々激しさを増す自然災害は、日本の豪雨や猛暑だけではありません。今年、世界各地で、大規模な森林火災が相次いでいます。

空気中の二酸化炭素を吸収し、地球の気温を保つ役割を担ってきた森が、いまや、逆に気候変動に悪影響を及ぼしかねないほどの壊滅状態に瀕しています。

森を守ること。それは、将来世代に向けた「防災」でもあります。

オーストラリアの森林火災で焼け出されたカンガルーの子ども

この夏、7月以降だけでもフィンランド、ロシア、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、トルコ、レバノン、アルジェリア、ブラジル、そしてアメリカ国内では80カ所以上、文字通り世界中の森が大規模な火災に見舞われました。
原因は気候変動による干ばつや熱波、そして土地開発者や地域紛争2による人為的な火災。

地球上の8割の生きものが、森林で暮らしています。いずれも人が引き起こした災害のために、罪のない生きものたちがすみかを奪われ、存続の危機に瀕しています。

生きものたちの未来を奪う森林火災

2019〜2020年にオーストラリアを襲い、世界中で報道された大規模な森林火災。
この火災の原因も、熱波と干ばつでした。焼失面積は1146万ヘクタール。3北海道の全面積のなんと約10倍にあたります。

当初この火災の犠牲になった野生動物は10億匹以上と推定されていましたが、その後の研究では、30億匹近くの脊椎動物が命を落としたり、生息地を追われたと報告されています。

私たちが愛してやまないコアラやカンガルーたちも、多くが命を落としました。

オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の森林火災現場で消火活動にあたる消防士

熱波と干ばつのリスクは、20世紀の間に4倍以上に膨れあがり、このまま産業革命前以降の地球の平均気温の上昇が2℃に達すると、8倍にもなります。
オーストラリアではもともと毎年森林火災が発生していますが、オーストラリア気象局の分析では、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州の南東部での発生時期が1950年代より3カ月も早くなっています。

こうした背景から、オーストラリアでは生物多様性が急速に失われ、世界で最も絶滅の割合が高い国のひとつになってしまいました。4

今年のような過去に例を見ないほどの世界的な森林火災が、いったいどれだけの生態系破壊に発展するのか。それが回復するのにどれだけの年月を要するのか、気が遠くなりそうです。

工業型農業が招く生物多様性の破壊

一部の森林火災の原因は、農場や牧場を開発する目的で人為的なものというのは前述の通りです。
森を切り拓いて新たに作物を栽培すれば、同じ植物なら森と同じように二酸化炭素を吸収するのだから気候変動に影響はないのでは?と考える人もいるかもしれません。

インドネシア・パプア州の森林を違法に伐採してつくられたアブラヤシ農園。画像の左上側が元の森林。こうした農園で生産されたパーム油がシャンプーや歯磨き粉、チョコレートやアイスクリームやポテトチップスといったありふれた消費材や加工食品の原材料として使用されている。

しかし最近の研究では、単一作物を大規模に栽培する工業型農業と比較して、天然林が40倍もの炭素を保持できることがわかってきました。5
また、こうした農園に元の森のような生物多様性が回復することはありません。森に住んでいたさまざまな生きものたちの食物連鎖のバランスが、商業的な収穫を目的とした単一栽培の農園で再現されることは決してないからです。

生きものたちの多様性のない工業型農業は害虫や病気の影響に弱く、殺虫剤や除草剤、合成肥料といった化学物質が広大な農園全体に使用されることもあります。畜産であれば、成長促進剤や抗生物質といった化学物質が家畜に与えられます。これらの化学物質で汚染された土壌や水が、地下水脈や河川を通じて、より広範囲に環境を汚染します。6

ブラジル・マトグロッソ州で森林を開拓してつくられた牧場。白く点々と見えるのが牛。

農作物は大量の水を必要とします。今年、森林火災が発生しているスペインでは、オリーブの高密度栽培などが原因で地中の水脈が使いつくされて土地が劣化、すでに国土の20%が砂漠化しています。7

二酸化炭素排出量の削減が世界中で叫ばれ、気候変動の元凶と目される大企業の多くが森林を回復するための植樹を始めていますが、このとりくみで単一栽培の植林地をつくってしまうと、在来種が育たなくなり生態系や水資源のバランスが崩れ、結果的に新たな環境破壊に繋がるおそれがあります。8
植樹された木が相当量の炭素を吸収するようになるまでには、10〜20年という長い歳月がかかります。9植林は、二酸化炭素排出量を増やしてもいい 、減らさなくてもいいという理由にはなりません。

数万頭が火災の被害に遭ったコアラ。救出されたコアラは森に帰るためのリハビリを受けている。

森と生きものたちの命を救うには

一刻も早く気候変動を抑え、干ばつや熱波などの異常気象の増大を防ぎ、乱開発による森林破壊から生きものたちの命をまもるために、わたしたちにできることはいろいろあります。

  • 森林破壊由来の原材料を使用していない製品を選ぶ。
  • 森林破壊由来の原材料を使用した製品の製造・使用・販売をやめるようにメーカーや流通企業・外食企業に意見を届ける(匿名でもできます)。
  • 利用している企業・金融機関の気候変動対策を調べ、より積極的な対策への改善を利用者の意見として伝える(匿名でもできます)。
  • 自然エネルギーからの調達を中心にする、またはその方針が明確な電力会社を利用する(こちらのウェブサイトで全国の電力会社の情報がチェックできます)。
  • 食生活を植物由来の食材中心へと見直す。
  • グリーンピースが発信している情報を、SNSなどを通じて周りの人たちとシェアする。

より実効的な気候変動対策を求めて、自治体にはたらきかけることもたいせつです。
グリーンピースは、地域の人たちとつながっていっしょに活動するための「ゼロエミッションを実現する会」を運営しています。

いま、世界中で、あらゆる国の政府と企業と市民団体が、気候変動をくいとめるための対策に奔走しています。
救えるはずの命たちを未来につなぐために、今日できることから、やってみませんか。

パプアニューギニア、インドネシア、オーストラリアのクイーンズランド州北部の低地や山地の熱帯雨林に生息するキノボリカンガルー。その名の通り、木の上で暮らす。生息数は減少傾向にある。

1: 1923年(大正12年)9月1日11時58分、相模湾沖を震源とする最大震度7の大地震が関東地方で発生しました。直後に各地で大規模な火災が起こり、10万5千人以上が死亡もしくは行方不明となりました。犠牲者のおよそ9割が焼死だったといわれています。
2: https://www.asahi.com/articles/ASP8T435KP8TUHBI00L.html
3, 4: https://www.theguardian.com/environment/2020/jul/28/almost-3-billion-animals-affected-by-australian-megafires-report-shows-aoe
5: https://www.greenpeace.org/static/planet4-taiwan-stateless/2020/03/1a570e70-planting-tree-farm-no-panacea-for-climate-crisis.pdf
6: https://sdg.iisd.org/news/report-identifies-agriculture-as-greatest-source-of-water-pollution/
7: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB250PJ0V20C21A8000000/?unlock=1
8: https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/06/8-53.php
9: https://www.greenpeace.org/static/planet4-taiwan-stateless/2020/03/1a570e70-planting-tree-farm-no-panacea-for-climate-crisis.pdf