ラウラ・ミラー博士
北極アドバイザー
グリーンピース・ノルディック、フィンランド

北極海の海氷の急速な減少を目の当たりにして胸の中に広がるのは、途方もない無力感です。
夢のように静かな流氷の間を航行していると、気候変動の危機を文字通り目前にしていることを忘れてしまいそうになります。

2020年の夏に北極を再訪しようと私たちが決意したころ、北極の海氷は記録的な最小値にまで減少すると予想されていました。北極の海氷は驚くべき速さで縮小しています。
信じられない光景が世界の頂点に広がっているのに、各国政府は実効性のある解決策に着手しようとしていません。

私たちがこの夏、北極圏を訪れた数少ない船だったため、私たちが目撃した事態は世界中で報道されました(ニューヨーク・タイムズ、アルジャジーラ、ナショナル・ジオグラフィック、TIME)。

アークティックサンライズ号の舳先に立つマイア・ローズ・クレイグ

私自身も希望を感じたことがあります。
若い活動家マイア・ローズ・クレイグが、北緯82度の流氷の上で最北端の気候変動のストライキを行ったとき、その映像はトルコからブラジル、ドイツ、カナダなど全世界でニュースになりました(ロイター、ワシントン・ポスト、CNN、BBC、その他多数)。
彼女の物語は、誰もが己が心の内にある勇気と希望と決意を思い出させてくれます。
現在、地球の平均気温は産業革命以前から1℃上昇していますが、それを1.5℃以下に抑えることができたら、今世紀末でも、北極が凍ったまま夏を迎えられる可能性が、99%にまで高まるのです。

幾度も話しあう中で、マイア・ローズは、「若者の運動は公的な議論の中で大きな影響力を持っているけれど、しばしば意思決定が行われる場へのアクセスがありません」と指摘しました。
そこでグリーンピースは、若い活動家のためのプラットフォームとして船を貸し出し、国連生物多様性サミットの前に開催された「Wake Up Call」で、彼らと各国政府代表との直接対話を進めようと考えました。

アメリカのトランプ大統領とブラジルのボルソナロ大統領の氷の彫像

サミットでは、カナダ、チリ、ベルギー、コロンビア、フランス、ルクセンブルグ、ナイジェリア、スペイン、スイス、イギリスなど、多くの政府が世界の海をまもることを約束しました。
さらに、30×30(2030年までに世界の海の30%を海洋保護区にする)の目標を推進しているグローバル・オーシャン・アライアンスには、現在30カ国の政府がメンバーとして参加しています。
もしあなたの国の政府が、世界海洋条約や30×30に言及していなかった場合は、圧力を高める方法を一緒に計画しましょう。

私たちは北極での旅の間、こんなこともしてきました。
・InstagramとDuoyinの2つのSNSのライブストリームで何十万人もの人々とつながりました。
・DNAの痕跡を見つけるために海水をサンプリングしました。海の生きものたちの暮らしを邪魔することなく、北極海の生態系を知るためです。
・ニューヨークで開かれた国連生物多様性サミットの会場近くで、アメリカのドナルド・トランプ大統領とブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領の氷の彫像を溶かして、彼らが環境破壊を促す政策の象徴であることを表現するアクションも実施しました。

北極海を航行するアークティックサンライズ号

ゴロゴロという轟音が聞こえます。
船の上から氷河を見るのは、雷雨を見るのに似ています。大きさが3階建ての家ほどもある氷が海に崩れ落ちていきます。
その氷は二度と海氷の一部になることはありませんし、誰にも元に戻すことはできません。その代わりにすべきことはわかっています。二酸化炭素排出量をゼロにし、健全な生態系が炭素を蓄えられるようにし、海を保護することです。

いま、私たちは多様な世界的な運動に参加し、産業の力による環境破壊をくいとめ、来年には強力な世界海洋条約を確実に採択させるというエキサイティングな計画を立てています。
当然ながら、グリーンピースの船はこれらの計画に不可欠な役割を果たしています。近いうちにまた新たな計画を立て、議論し、共有できることを楽しみにしています。

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