こんにちは。海洋生態系担当の小松原です。
毎日なにかと話題にのぼる東京オリンピック・パラリンピックですが、大会で提供する食べ物まわりもザワザワしております。

大会で調達する水産物の調達基準(案)が公開されたのですが、どんな魚もサステナブルだとみなしてもらえそうな、限りなくゆる〜い基準になっています。
このままだと、ロンドン五輪以降、開催国が築いてきたサステナブルなオリンピックの礎を水の泡にしてしまうかも。そんな黒歴史を日本が残したくはないですよね。
大会組織委員会は、調達基準を最終決定するために、この調達基準(案)で良いかどうか、27日の17時まで広く一般からコメントを募集しています。
そういうわけで、今日のブログは、いつもブログを読んでくださっている皆さまにパブコメ投稿のお誘いです。

オリパラでは、サステナブルな水産物があたりまえ

世界各国から多くの人が集まるオリパラも、環境に配慮したサステナブルな運営・開催を目指して変わってきています。水産物の調達でも新たなレガシーが築かれつつあります。
例えば、直近のリオ大会ロンドン大会では、FAO(国連食糧農業機関)が定める「責任ある漁業のための行動規範」(行動規範)に準拠したものであることや、水産物のエコラベルMSCやASCを扱うなど、オリパラをサステナブル・シーフード普及のチャンスと捉え、あえて高く掲げた目標に向かって、国をあげた取り組みをしたことで注目されました。
さて、日本はどうでしょうか?

ポイント1:調達基準ではなく、ただの努力目標

調達基準(案)の項目2が、調達基準の根幹となるものですが、例えば、
①漁獲又は生産が、漁業関係法令等に照らして、適切に行われていること。
②天然水産物にあっては、科学的な情報を踏まえ、計画的に水産資源の管理が行わ れ、生態系の保全に配慮されている漁業によって漁獲されていること。
などとあります。ですが、これでは何をしていたら「適切」とするのか、どういった漁業を生態系保全に「配慮している」とみなすのか曖昧で分かりませんよね。
判断した人によって結果が異なってしまうものは「基準」とは呼べません。

ポイント2:サステナブルでない水産物もOKになってしまう

項目3では、『MEL、MSC、AEL、ASC による認証を受けた水産物』を、項目2の条件を満たしたものとして認めています。
ここに書いてある認証ラベルが、すでに項目2の内容を満たしているのであれば、基準に入れることは納得できますよね。

例えば、ロンドンやリオで提供されたMSCは、FAOの行動規範などのグローバル・スタンダードに準拠しているもの、かつ、「絶滅危惧種を獲らない漁業」などの詳細に定められた原則や基準をクリアした漁業のみに与えられる認証です。

ところが、ここで真っ先に挙げられている日本の水産認証であるMELは、絶滅危惧種である太平洋クロマグロを「まき網」という環境負荷の高い漁法で獲っている漁業者にさえ認証を与えています。
つまり、サステナブルとは言えないものが大会ではサステナブルと謳われて提供される可能性があるのです。

国際的に誰もがサステナブルだと認めることができる基準のない認証に甘んじることは、サステナブルな東京オリパラを諦めると宣言したも同然ですし、今後の日本の市場への悪影響も心配です。
東京オリパラまでにMELやAELがグローバル・スタンダートに耐え得るものになれば歓迎しますが。。。。

ポイント3:結局どんな漁業者でも納品できてしまう

項目4は、項目3の認証以外でも条件をクリアしていれば良いとするもの。
その条件が問題で、『資源管理の目標を設定し…..(中略)……実施している』などとしていますが、どんな目標であるべきか明確にしていないので、極端な話ですが、何十年も先に資源を回復するような目標でも通ってしまうかもしれないのです。
いま基準に達するような漁業者がいないから基準を低く設定するのではなく、東京オリパラに向けて、サステナブルな漁業を目指して本気で取り組みをする漁業者が尊重され、サステナブル・シーフードを日本で当たり前にすることが大事です。

パブコメで東京オリパラをサステナブルに

上に挙げたポイントはほんの一部です。考えられる限りの修正案をグリーンピース・ジャパンとして提出します。
パブコメは市民の声を聞いてもらうチャンスです。もちろん個人でも大丈夫ですし、基準案の一部への意見でもOKです。
世界に誇れる東京オリパラに、そして、海にも人にも優しいサステナブル・シーフードが当たり前に買える日本にするために、あなたのアイディアをシェアしてみませんか?

【パブコメのやり方】

手順1)水産物の調達基準(案)を読む
手順2)提出用紙(エクセル)をダウンロードし、意見を書く
手順3)大会組織委員会宛にメールで提出する(12月27日17時まで)
詳しくは公式ホームページ

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