国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京都新宿区)は本日、東日本大震災及び東京電力福島第一原発事故発生から12年にあたり、以下の声明を発表しました。

グリーンピース・ジャパン事務局長、サム・アネスリー

「東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から、今日で12年が経ちました。亡くなられた方々に改めて哀悼の意を表すとともに、大切な方を亡くされた皆様、被災者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。この12年間、様々な関係者の努力により、被災地の復興は進んできました。しかし、今も故郷を離れ避難生活を続けざるを得ないなど、人々の生活が全て元通りになった訳ではありません。その中で、日本政府は再び、大規模な原子力発電の再開へ舵を切ろうとしています。

今年2月、日本政府はグリーントランスフォーメーション(GX)戦略を閣議決定しました。同戦略では、次世代革新炉の開発・建設、既存原子炉の再稼働、原発の運転延長のほか、プルトニウムの再処理、廃炉、廃棄物の最終処分の推進が掲げられています。その一方で、メルトダウンを起こした福島第一原発1、2、3号機の廃炉工程とその最終形は、いまだ見通しが立っていません(注1)。高い放射線量のため現場での作業は困難で、原子炉建屋から数百トンの核燃料デブリを取り除くための実現可能な計画もないままです。また、原発は現在も放射能を放出し続けており、2021年度には毎日130トンの放射能汚染水が発生しています(注2)。これらの問題点を踏まえると、原子力発電の推進は、今も続く福島第一原発事故の現実を無視し、この事故で被害を受け、今もなお苦しんでいる人々を完全に無視したものであると言えます。

日本政府は放射能汚染水の太平洋への放出を決定し、発電所を管理運営する東京電力は今年中に放射能汚染水の放出を開始する予定です。放出される水の安全基準が注目されていますが、問題は、汚染水の発生を制御できないことです。そして、放出期間は今後数十年に及ぶと予想されることから、環境中に放出される放射性物質の総量は膨大なものになります。

さらに、国内外からの反対を押し切って行われた意思決定も重大な問題です。住民、農業・漁業従事者、海洋科学者、太平洋諸島や東アジアを中心とする近隣諸国から強い反対意見や懸念が寄せられているにもかかわらず、日本政府と東京電力は、これらの意見をほとんど考慮に入れていません。

エネルギーの安定供給と脱炭素の推進は、世界的な急務です。しかし、それらを口実に原発回帰を進めることは、将来世代に過度の負担を強いることになります。福島県では、帰還困難区域の一部が徐々に解除されていますが、依然として高濃度に汚染された地域があり、人が住むには安全とは言えません。高レベル放射性廃棄物は、数万年にわたり生活圏から隔離する必要があります。復興の名の下に、政治とエネルギー産業は、十分なコンセンサスもないまま、計り知れないリスクを抱えようとしています。日本政府は、エネルギー需要や気候危機に対応できない原子力産業を蘇生させようとするのではなく、再生可能エネルギーによる持続可能な未来への移行を速やかに進めていくべきです」

以上

(注1)グリーンピース報告書『福島第一原子力発電所の廃炉計画に対する検証と提案』(2021年3月)

(注2)ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議(第5回)配付資料1