こんにちは。核・エネルギー担当の鈴木かずえです。

8月6日、17日、18日と、福島市内の保育園や高校で、放射線調査をしました。

—福島市内の高校—

© Noriko Hayashi / Greenpeace
高校では、表土の除去が済んでいて、もう、生徒さんたちが野球の練習をしていました。
表土の除去は「四角い部屋を丸く掃く」のようなやり方で、建物沿いやフェンス沿いは取り残されていました。
炎天下のもと、調査チームは夕方まで表土を剥いだグラウンドを方眼状に細かく測定をしていきました。

表土除去後のグラウンドは36か所の平均が毎時0.47マイクロシーベルト。
1年間ここにいると約4ミリシーベルトを浴びます。

1年間グラウンドにいないから大丈夫、とは言えません。
除染された学校から出れば、放射線管理区域(毎時0.6マイクロシーベルト)以上の環境だからです。

放射線管理区域での18歳未満の労働は禁止されています。
公衆の被ばく限度は年1ミリシーベルトです(1ミリシーベルト=1000マイクロシーベルト)。
そして、放射線には、これ以上安全という閾値はありません。

今回建物内は調査の対象にはしませんでしたが、たまたま測った建物内で毎時0.5マイクロシーベルトでした。

また、建物の入り口のところで毎時1.1マイクロシーベルト(地上1メートル)。
毎時1.5マイクロシーベルト(地上1メートル)、地上10センチでは毎時7.9マイクロシーベルトあったところも。 

先生たちは子どもを守るため、必死で除染しています。
高圧放水の機械を導入したり、地元の業者さんにきてもらったり。

今回もホットスポットを指摘すると「今日、除染します」と、すぐに他の先生と段取りをされました。

その他、
・コケはブラシでこすり落とすこと
・コンクリートのところも、週一回はデッキブラシをかけること
・高線量の場所には、生徒さんが近づかぬよう目印をする
などのアドバイスを真剣に聞いてくださいました。

あまりに高い線量に、調査に参加したイリーナ・ラブンスカ(放射線アドバイザー・ウクライナ出身)は、
「今日避難しなければいけない。今日でなければ明日。明日でなければ明後日」といいました。

除染は、避難の代替にはならないのです。
除染の間、子どもたちを疎開・避難させるべきです。
子どもたちには、線量の低い地域で教育を受ける権利があります。

—福島市の保育園—

翌日は、福島市の保育園へいきました。

ヘンな機械を持って突然やってきたガイコクのヒトを含む調査チームに、子どもたちは興味しんしん。
窓にお顔をくっつけて、ならんで見入ってる姿のかわいいこと。

この保育園には、0歳から6歳まで170人がいます。
乳幼児クラスの3分の1の保護者の方が「外遊びはさせないで」と要望しているそうです。
子どもたちが園庭で遊んだ形跡はほとんどありません。
滑り台にはテープが張られています。

園長先生は、行政がなかなか除染してくれないので、NPOに頼んだらすぐきてくれたと話してくださいました。
聞くと、そのNPOとは「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(以下、「子ども福島」)」でした。

「子ども福島」による除染が6月、行政からの業者さんがきたのは8月。

園庭は二つあり、ひとつは「子ども福島」が、ひとつは業者さんが除染したそうです。
「子ども福島」による除染には、お父さん、お母さんたちも参加して総勢100名ほどで2日間。
行政からの業者さんは4-5人くらいで8日間かかったそうです。

この保育園は、福島市の中では比較的線量の低い地域にあります。
木やコケむしているところなどホットスポットはありましたが、除染の効果もあって、毎時0.11から0.17マイクロシーベルト(地上1メートル)でした。
それでも通常の2-3倍です。
また、お隣さんとの境界の塀は、1.4マイクロシーベルト(地上10センチ)ありました。

この保育園の除染前(4月5日)の国による測定値は毎時1.6マイクロシーベルト(地上1メートル)でした。
比べるとずいぶん下がっています。
でも、園長先生はいいます。
「ひどかったから、今が低いと思っちゃうんですよね。それに気をつけないといけないんです」
「内部被ばくを防ぐためにも汚染食品を除去して与えていきたいと思います。
そして残念ですが、福島から離れるというお子様には、お元気で!と送り出してあげたいと思います」

—さいごに—

国は、園庭・校庭の四隅と中央を測ります。

でも、ホットスポットは、コケの生えた木の根元や塀にあります。
子どもたちはそのすぐ近くを歩きます。

そして、雨水や散水の水がたまるような、ちょっと低くなったところ。
子どもたちのお気に入りの場所です。

そうしたところを測らなければ、安全がどうかわかりません。

現場の先生たちやお父さん、お母さんたち、地域の方々の除染の努力には頭が下がります。尊いです。

でも、除染をしても、福島市や郡山市など、高線量の地域の、とくに赤ちゃんや小さいお子さんにとっては、安全なレベルになったとはいえなかったのです。

避難の代わりに除染、ではなく、除染のあいだは避難。

子どもたちを守るため、除染が日課となっている保育施設「こどものいえ そらまめ」
ここの園庭でも、1時間当たり0.82マイクロシーベルトを計測しました(地上1メートル)。

先生に、残念ながら、子どもにとっては安全な場所ではないと発表せざるをえないとお伝えすると
「避難者が増えると、存続の危機にさらされますが、子どもの健康より優先することはありません」
とのお返事がかえってきました。

そのお気持ちを胸に「除染が完了し、安全が確認されるまで、子どもたちを避難させること」を求めていきます。

● 2011年8月29日提出要請書
「福島の子どもたちを放射能から守るめに除染が終わるまで子どもを避難させ、福島の人々に『避難の権利を』」 >>

● 調査結果表 >>

● 2011年8月29日記者会見時プレゼンテーション資料 >>

 

グリーンピース・ジャパン

ライターについて

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グリーンピースは、環境保護と平和を願う市民の立場で活動する国際環境NGOです。世界中の300万人以上の人々からの寄付に支えられ、企業や政府、一般の人々により良い代替策を求める活動を行っています。ぜひ私たちと一緒に、行動してください。

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