加速度的に増大する森林火災

日本でも連日記録的な猛暑が続いているこの夏、世界中で森が燃えています。

ここ数週間だけでも、フィンランド、ロシア、ギリシャ、トルコ、レバノン、そしてアメリカ国内ではコロラド州・カリフォルニア州・オレゴン州など80カ所以上1で、大規模な森林火災が発生しています。
フィンランドで、今回のような規模の森林火災が発生するのは実に50年ぶりのことです。2

ブラジル・ラブレアの森林火災現場。2020年8月撮影。

EUのコペルニクス大気監視サービスによれば、今年7月の森林と草原の火災による炭素排出量は全世界合計で3億4300万トン。観測を始めた2003年以降最大値を記録しました。3
空気中の二酸化炭素を吸収し、地球の気温を保つ役割を担ってきた森が、いまや、逆に気候変動に悪影響を及ぼしかねないほどの壊滅状態に瀕しているのです。4

こうした大規模な森林火災の原因は、気候変動による熱波や干ばつです。これに加えて、乱開発のための人為的な火災も猛威をふるっています。
森を切り拓いて鉱物資源を採掘したり、大きな牧場や農場を建設しようとする人々の手で、森は燃やされているのです。
建設された農場で生産されるのは、安価な食肉や乳製品、家畜を育てるための飼料、そしてシャンプーや歯磨き粉、カレーやチョコレートやアイスクリームやポテトチップスといった、誰にとっても身近な消費材や加工食品の原材料になるパーム油です。

わたしたちが毎日のように手にする製品のために、森が失われ、気候変動が追い討ちをかけているのです。

今月9日に発表されたIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の最新の報告書では、今後、気候変動による森林火災はより増加していくと予測されています。5

森が失われることで悪影響を受けるのは、気候変動問題だけではありません。

ブラジル、違法鉱山開発者に破壊されたヤノマミ族の居住地。今年5月、最高裁が政府に先住民の保護を命じた。6

森に暮らす人々に迫る危機

現在、16億人の人が森の中もしくは森から5キロ圏内で暮らしています。7
その中には、森で住まいを建てる資材を調達し、森で食べ物を採り、水を汲み、狩りをして、身に着けるものや手工芸品をつくり、森でとれる天然の薬で怪我や病気を癒すといった自給自足生活を数百年にわたって続けてきた先住民の人たちもいます。

彼らにとって森林火災は、生命と健康を脅かされる災害であると同時に、世代をこえて受け継いできた歴史や文化や信仰といったアイデンティティさえもが、一方的に奪われる災厄です。
森林破壊はただ森を燃やしたり伐採するだけでは済まされません。そこで行われる資源採掘や工業型農業によって生物多様性が損なわれ、土壌や水が汚染されます。

自然の中で慎ましく暮らす先住民の生活から排出される温室効果ガスは微々たるものです。
彼らが暮らし、維持してきた森では、生態系を含む自然環境の劣化が緩やかであったこともわかっています。
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気候変動や森林破壊は、そんな人々の人権を侵害しているのです。

アマゾン川の支流・タパジョス川流域に暮らす先住民・ムンドゥルク族の人々。

先住民とグリーンピースの関わり

ブラジル、アマゾン川の支流・タパジョス川に巨大ダム建設計画が持ち上がったのは半世紀ほど前のこと。
ブラジルは電力の7割近くを水力発電に依存しており(2014年時点9)、経済発展とともに高まる電力需要を賄うために、大規模なダムが必要とされていました。

しかし計画通りにダムが建設されてしまうと、それまでほぼ手つかずだったタパジョス川流域の環境は激変することになります。
水没した森は大量のメタンガス(CO2の25倍の温室効果がある)を発生させ、豊かな生態系が破壊されます。
そして水没する地域には、長い間この森とともに生きてきた先住民・ムンドゥルク族の居住地が含まれていました。

ムンドゥルク族の人々とグリーンピースは連携して国際社会に事態を発信、ダム建設計画の中止を求めてブラジル政府へのはたらきかけを呼びかけました。
世界中から集めたオンライン署名は120万筆にも達し、2016年、ブラジル政府は建設計画の中止を決定したのです。
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皮肉なことに、今年はブラジルで干ばつが発生、川の水が減って電力不足が懸念されています。11

グリーンピースと先住民の関わりは、いまも続いています。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年、グリーンピースは他の市民団体と協力して「緊急の翼」というプロジェクトを立ち上げ、アマゾンの先住民の居住地に、医師や医療専門家を同行し、マスクや消毒用アルコール、手袋、酸素ボンベ、検査キットといった医療資材や食料を届けました。
5カ月の間、アマゾンの41地域に、63トンの資材を小型飛行機と船で運び続けたのです。
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「緊急の翼」プロジェクトで物資を運ぶスタッフ

森と人々をまもるには

いま、わたしたちにできることは、一刻も早く気候変動をくいとめることで、森林火災を含めた異常気象による自然災害の増加を抑え、環境破壊につながる乱開発をやめさせることです。

そのために一人ひとりにできることはたくさんあります。

  • 森林破壊由来の原材料を使用した製品を買わない。
  • そうした商品の製造・販売をやめるようにメーカーや流通企業に意見を届ける。
  • 自然エネルギーを積極的に導入している電力会社に乗り換える(こちらのウェブサイトで全国の電力会社の情報がチェックできます)。
  • 食生活を植物由来の食材中心へと見直す。
  • グリーンピースが発信している情報を、SNSなどを通じて周りの人たちとシェアする。

二酸化炭素排出実質ゼロ=ゼロエミッションを実現するために自治体や企業に対策をはたらきかけることも重要です。
グリーンピースは、地域の人たちとつながっていっしょに活動するための「ゼロエミッションを実現する会」13をたちあげました。

いま、世界中で、あらゆる国の政府と企業と市民団体が、気候変動をくいとめるための対策に奔走しています。
次の世代に、わたしたち自身が残したい未来を手渡すために、今日できることから、やってみませんか。

  1. https://www.cnn.co.jp/usa/35174091.html
  2. https://www.jiji.com/jc/article?k=2021073100476&g=int
  3. https://www.theguardian.com/world/2021/aug/06/last-month-worst-july-wildfires-since-2003
  4. https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/07/post-96715.php
  5. https://www.bbc.com/japanese/58142213
  6. https://news.yahoo.co.jp/articles/c61a14b1b00022c1b17871ba627e0e408aadf5d2
  7. https://www.sciencedaily.com/releases/2020/09/200918112140.htm
  8. https://www.greenpeace.org/static/planet4-taiwan-stateless/2020/03/1a570e70-planting-tree-farm-no-panacea-for-climate-crisis.pdf
  9. https://pps-net.org/glossary/54908
  10. https://www.greenpeace.org/japan/nature/story/2016/08/05/3249/
  11. https://www.reuters.com/article/brazil-economy-drought-idJPKCN2DJ0E9
  12. https://www.greenpeace.org/taiwan/update/22074/%E4%BB%BB%E5%8B%99%E5%AE%8C%E6%88%90%EF%BC%81%E5%B7%B4%E8%A5%BF%E3%80%8C%E7%B7%8A%E6%80%A5%E4%B9%8B%E7%BF%BC%E3%80%8D%E8%A8%88%E7%95%AB%EF%BC%8C16%E8%90%AC%E5%8E%9F%E4%BD%8F%E6%B0%91/
  13. https://zeroemi.org/