福島の除染作業の被ばくは正当化できるのか? 国連特別報告者からの問い

こんにちは。エネルギーチームの鈴木かずえです。

ジュネーブで開かれている第39回国連人権理事会で、同理事会が任命した「特別報告者」のバスクト・トゥンカックさんが福島の除染労働者について、日本政府は全力で被ばく労働者を守り、ICRP(国際放射線防護委員会)の正当化原則に基づいて労働者を被ばくさせ続ける政策を見直すべきだと発言しました。ビデオはこちら

つまり、帰還する住民が少ないのに、除染作業をする人間の健康をリスクにさらして除染しているけど、その代償を上回るメリットがあるのか?と日本政府に問いかけたのです。

福島の除染作業の被ばくは正当化できるのか? 国連特別報告者からの問い

低い帰還率

今、帰還困難区域内に「復興拠点」が設定され、避難指示解除をめざして除染が行われています。

しかし、高濃度に汚染された地域の帰還率はとても低くなっています。浪江町の旧避難指示区域帰還率は解除から1年で3.3%でした。

今後、より汚染された帰還困難区域の避難指示解除では、帰還率はより低くなる可能性もあります。

福島の除染作業の被ばくは正当化できるのか? 国連特別報告者からの問い

被ばく労働は正当化できるか

グリーンピースは、事故直後から「現在人が住んでいる場所の除染の優先を」と訴えてきました。(優先順位に問題あり。除染の効果は?福島の状況は?グリーンピース、福島放射線調査を実施)

今回、バスクトさんは、住民が帰還を選ばないであろうほど汚染された地域を、被ばく労働という犠牲をしいてまで除染することが許されるか、”検証”することを日本政府に求めました。

バスクトさんは、以下のように発言しています。(グリーンピースによる訳)

「日本は、労働者を被ばくさせ続ける政策を、ICRPの正当化原則に基づいて見直すべきです。正当化原則は、被ばくに関しては、その意思決定に住民からの意見の聴取という手続きをふむこと、社会的純便益の観点から正当化できることが重要であるとしています。汚染度のより高い地域では、(除染)労働者が非常に高いレベルの放射線にさらされるが、(除染して避難解除をしても)住民の帰還率が低いので、この点が重要となります」
Japan may wish to consider its policy of continuing to expose its workers to radiation based on the justification principle of the ICRP. The justification principle notes the importance for decisions that lead to radiation exposure to include a public consultation procedure, and to be justified with a net societal benefit. This seems particularly important in this situation because the return rates of populations with higher contamination areas, where workers will be exposed to higher levels of radiation, remain relatively low.

福島に心を寄せる特別報告者

バスクトさんは、「社会的純便益の観点から正当化」というふうに言ってますが、結局、除染で被ばくさせますが、そうやって除染して避難指示解除しても、人は帰ってこないなら、無駄な被ばくになってしまうのではないか?だから、被ばくのリスクとそれによるベネフィットをきちんと検証せよ、と言ってくれているのだと思います。

実は、バスクトさんは、8月16日に健康の権利、現代的奴隷についての特別報告者らと共同で、東京電力福島第一原発事故の除染作業で搾取され、被ばくしている数万人の労働者をまもるために日本政府は緊急に行動しなければならないとする声明を発表しています。

この声明に対し、日本政府は「今回の声明を受け、ジュネーブ国際機関日本政府代表部は「政府として真摯(しんし)に対応してきたにもかかわらず、特別報告者が一方的な情報に基づいて声明を出したことは遺憾だ」とするコメントを出したと報道されています。

バスクトさんは、有害廃棄物特別報告者。世界中に、放射能を含む有害物質にさらされている住民、労働者、子どもを含む兵士などがたくさんいる中で、福島の汚染労働者に心を寄せてくれていることを思えば、日本政府は「遺憾だ」などというコメントを出すよりも、むしろ感謝すべきではないでしょうか。

福島の除染作業の被ばくは正当化できるのか? 国連特別報告者からの問い

グリーンピースは、これまで28回、福島での放射能調査を実施し、その結果を日英で発信しています。2012年から、国連人権機関への情報提供も続けています。

現在、秋の放射能調査に向けて、クラウドファンディング挑戦中です。ぜひ、あなたのご寄付で8年目の調査を実現させてください。

参考:UNwebTV 第39回国連人権理事会

8年目の福島調査をクラウドファンディングで支援