環境に配慮したクルマといえば、電気自動車(以下EV)やハイブリッド、燃料電池などがあり、購入時には補助金や税制優遇なども用意されていますが、価格や走行距離、充電ポイントなど、これまでのクルマにはなかった課題も山積しています。環境に配慮したクルマは、脱炭素社会の実現に欠かせない存在で、世界的なEV化の動きも加速しています。しかし、私たちがよく耳にするのは政府や企業の声明やリリースばかりです。実際に最前線に立っている人たちはどう考えているでしょうか?

約550万人の雇用*1を支えている日本の自動車産業の完成車メーカーから部品メーカーまで、日本のクルマの未来を担う1,000人を対象に、気候変動とEVに関する10の設問に回答頂きました。

10の設問

気候変動に関する質問

Q. 気候変動について心配している

Q. 勤めている会社は十分な気候変動対策を実施している

Q. あなたの仕事は気候変動によって影響される

EVに関する質問

Q. 勤めている会社は十分に早いEV車への移行を進めている

Q. EVは日本の自動車産業に大きな影響を及ぼす

Q. エンジン車からEVへの移行が加速する海外では、エンジン車関連で働く人がスムーズにEV関連の仕事に移行できるようにするため、政府が技術訓練など必要な雇用保護のための施策を実施している。日本でも同じような施策があるべきだ

Q. 日本は世界の自動車産業をリードしている

Q. テスラなど、EVを販売するスタートアップ企業*2は、日本でも既存の大手自動車メーカーを追い越す

Q. 世界の市場において、日本の自動車メーカーはEVのシェア*3争いに負ける

Q. EVは日本でも人気*4が伸びる

気候変動に関する質問

気候変動を心配している人は「とても同意」「ある程度同意」が合わせて6割を超えており、個人の関心の高さが伺えます。対して、仕事への影響・会社の対策については意見が別れており、実感は未だ薄いようです。全体的には「気候変動は心配だが、会社は対策をとっていない。仕事に影響する」という傾向にあるようです。自動車業界内でも業務やサプライヤーによって差が出ていると思われます。

Q. 気候変動について心配している
Q. 勤めている会社は十分な気候変動対策を実施している
Q. 勤めている会社は十分な気候変動対策を実施している

EVに関する質問

EVの日本の自動車産業への影響について、75%以上の人が大きな影響を及ぼすことに「とても同意」「ある程度同意」と回答しました。エンジンが主要部品・技術の自動車産業にとって、エンジンが無くバッテリーとモーターで駆動するEVは、日本に限らず、世界的に大きな影響を及ぼすと考えられます。また、サプライヤーによっては会社存続に関わる深刻な影響が懸念されます。

しかし会社のEVへの対応については、業務やサプライヤーによって差がある為か、回答が別れています。

また政府による施策支援については、過半数が同意しています。

Q. 勤めている会社は十分早いEVへの移行を進めている
Q. EVは日本の自動車産業に大きな影響を及ぼす
Q. エンジン車からEVへの移行が加速する海外では、エンジン車関連で働く人がスムーズにEV関連の仕事に移行できるように政府が技術訓練などの雇用保護施策を実施している。日本でも同じような施策があるべきだ

販売台数世界トップ10に3社(グループ含)がランクインしているのは日本のみですが、EVの普及については他国から遅れをとっています。日本におけるEVの歴史は長く、購入支援制度も用意されていましたが、価格や性能などの理由から限定的な普及となっています。 

Q. 日本は世界の自動車産業をリードしている
Q. EVは日本でも人気が伸びる
Q. テスラなど、EVを販売するスタートアップ企業は日本でも既存の大手自動車メーカーを追い越す
Q. 世界の市場において、日本の自動車メーカーはEVのシェア争いに負ける

そのような背景から、今後のEV人気については4割程度の同意に留まりましたが、シェア争いについては賛成派が否定派を上回っています。欧州メーカーのEV化の勢いを販売現場や報道の多さから実感している結果でしょう。

これからに期待・・・

個人の気候変動への意識は高いものの、企業の方針や事業計画が追いついていない印象です。グローバルビジネスである自動車産業は常に世界のマーケット動向に注視せねばなりません。企業も早期退職などで人材入替えや人件費削減を推し進めていますが、これまでのエンジンを捨て、新しい動力にシフトするには莫大な投資が必要になります。欧州では企業のEV転換による雇用喪失の抑止として労働者サポートや新しい技術訓練などについて政府が支援がする国もあります。未来に向けて日本はどんな準備をするのでしょうか?今からEV化の波に追いつけるのか、慎重姿勢の事業計画で本当に550万人の雇用を守ることができるのか?まさに正念場、自動車産業セカンドステージはこれから始まります。

#DriveChangeキャンペーンに参加して、新しいモビリティの可能性を考え、自動車メーカーに伝えていきませんか?

注釈リンク

*1 : 一般社団法人 日本自動車工業会(略称:自工会/JAMA)https://www.jama.or.jp/index.html

 クルマを走らせる550万人 https://www.youtube.com/watch?v=cz3xzBG0pSo

*2:エコノミストオンライン「早い!安い!走る!」トヨタもビックリ?日本発EVベンチャーの世界も驚く突破力

https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210803/se1/00m/020/041000c

*3:M&Aオンライン日産、トヨタがベスト10「脱落」 EVメーカー世界ランキング

https://maonline.jp/articles/japanese_makers_finally_falls_from_the_top10_in_ev_phv_world_sales210208

*4:次世代自動車振興センター

http://www.cev-pc.or.jp/tokei/hanbai3.html