こんにちは、エネルギー担当の高田です。

また強い台風が東電福島原発に近づいています。
しかも、今度は2つ。

23日には、汚染水タンクを囲むせきの水から、ストロンチウム90などの放射性物質が1リットル当たり最大51万ベクレル検出されたと東京電力が発表。

ストロンチウム90の東電による暫定排出基準は10ベクレルですから、その5万倍になります…。
台風接近に備えて進められている準備が間に合うことを願うばかりです。

国際的な懸案事項にもなっている汚染水問題。
先週14日から18日まで、ロンドンで開催された「ロンドン条約」の第35回締約国会議でも、汚染水問題が議題に上りました。

ロンドン条約は、廃棄物の投棄から海洋環境を守るための国際条約で、放射性物質も規制の対象となっており、日本も批准しています。

「政府も全力で取り組む」「国際社会への情報提供をする」と繰り返している日本政府、さて、どのような発言をしたのでしょうか。

なおグリーンピースも国際環境NGOとして、ロンドン条約会議への出席と発言が認められています。
会議に出席したグリーンピース担当者から、以下の報告が届きました。

【グリーンピースの発言】
■ グリーンピースは17日、汚染水問題についての議論で、

1)状況と問題解決の目途について、締約国への現状共有を日本政府に求め、

2)締約国からの日本への国際的な支援と、海洋環境への長期的な影響調査を呼びかけました。

【日本政府代表の発言】
■ 日本政府代表は18日、これに対して、

1)汚染水の状況については、原子力規制委員会の英語版ウェブサイトに掲載されているので、関心があればそれを見てほしい

2)日本は汚染水問題への国際協力を呼び掛けるグリーンピースの提案に感謝する。しかし、汚染水問題は船からの投棄ではないので、ロンドン条約会議での検討事項には当てはまらないと日本は考える。もし、汚染水問題への支援を申し出る国があれば、それぞれの日本大使館に問い合わせてほしい、と回答しました。

議事時間がとても限られていたこともあり、その場でほかの参加国から日本政府発言へのコメントはありませんでしたが、グリーンピースの発言者のもとには、複数の参加国の代表から、汚染水問題についての追及を感謝する声が寄せられました。

【汚染水問題は国際的な懸案事項】
海の汚染を防ぐ目的のロンドン条約会議の場で、当事者である日本政府代表ができることは「ウェブサイトを参照してください」以外にもあるはず。

せっかく締約国が顔を合わせているわけですから、現状を直接説明するべきではないでしょうか。
(ちなみに政府代表が紹介したウェブサイトは、ファイルがずらっと並んでいますが、汚染水の広がりや、今後考えられる海洋汚染リスクについて、わかりやすく情報提供されていると言えるでしょうか。)

また、「汚染水問題は船からの投棄でないので、ロンドン条約会議で話す必要はない」との発言は、条約の条文のみをとらえたもので、そもそも条約がつくられた目的や精神を無視したものです。

なお、ロンドン条約設立の精神、目的は以下のように明記されています。
ーーーーー
(設立の精神)
この条約の締約国は、海洋環境及び海洋環境によつて維持される生物が人類にとつて極めて重要であること、並びにその質及び資源を害されないような海洋環境の管理の確保についてすべての人が関心を有していることを認め、廃棄物を同化しかつ無害にする海洋の受容力及び天然資源を再生産する海洋の能力が無限ではないことを認め…(以下略)

――――
(設立の目的)
第1条 締約国は、海洋環境を汚染するすべての原因を効果的に規制することを単独で及び共同して促進するものとし…(以下略)
ーーーー

【国際協力と、それを可能にする情報の透明性確保を】
ロンドン条約締約国会議に出席しているグリーンピース・インターナショナルのシニア・サイエンティスト デイビッド・サンティロは、

「東電福島原発からの放射能によるこれ以上の海洋汚染を防ぐために、締約国は実務的・財政的な支援を日本に申し出、海洋環境への放射性物質の拡散状況を長期的に調査すべきです。

かつてロシアは政治的に複雑な状況にもかかわらず、国際的な支援と放射能の実態調査を受け入れました。こうした国際協力と、それを可能にする情報の透明性があったからこそ、困難な問題への解決策に辿り着くことができたのです」

と締約国に呼びかけました。

ーーーーー
ロンドン条約は、1993年の改正によりすべての放射性廃棄物について船舶などからの海洋投棄を禁じています。

この改正は、旧ソ連(現ロシア)が日本海などに液体放射性廃棄物を秘密裏に投棄してきたことに対し、世界的な批判が高まったことがきっかけとなりました。当時、アメリカやノルウェーなどロンドン条約の締約国は、放射能汚染水の処理への財政的・実務的支援をロシアに申し出、なかでも日本が積極的に働きかけたことが、ロシアがこの問題を乗り越える上で重要な役割を果たしました

→詳細は、ブリーフィング・ペーパー『東京電力福島第一原発からの海洋への放射能汚染水流出――日本の国際的責任を考える』(2013年10月17日グリーンピース発行)をどうぞ

なおグリーンピースは、ロシアによる日本海への放射性廃棄物の投棄現場を1993年に世界に公表し、同年の改正に貢献しました。(詳しくはこちら)

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