こんばんは。海洋生態系担当の岡田です。
マニラで12月3日から7日(正確には8日早朝)まで開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合。1週間以上も前に閉幕したのに、今頃ブログアップでごめんなさい。実はどうやら最終日、会場でインフルエンザをもらってしまったようで、ブログを書くのが大幅に遅れてしまいました。

 【写真1】WCPFC第14回年次会合の様子

(気を取り直し)今回の年次会合のハイライトは、日本食には欠かせないカツオを含む熱帯マグロ(メバチマグロ・キハダマグロ・カツオ)の2018年以降の管理ルールをどうするか、でした。

3年に1度、定期的に見直されるこの管理ルール。日本政府は、日本沿岸のカツオの漁獲量が減っているのは、赤道付近の中西部太平洋で巻き網漁が獲りすぎているから、という見解を持っています。なんとか管理ルールを強化したい意向の日本。

最新の資源評価では、不確実性はあるものの(詳しくはこちら)、カツオ・マグロ類は乱獲状態でもなければ、過剰漁獲もされていません。規制を緩めたい他の加盟国が、日本と真っ向から対立する形で会議は始まりました。

【写真2】海ガメや他の混獲魚と一緒に網にかかるカツオ

休憩中に各国の代表者が交渉したり、連日連夜、予定を大幅に押して交渉が続きましたが、加盟国の総意がなければ何も決まらないのが、このWCPFC。なかなか総意出来るルールが決まりません。

ただ、何もルールのないまま来年まで持ち越しという状況だけは絶対に避けたいところ。これは議長をはじめ各国代表者ともに思いは同じだったようで、予定では午後2時頃に終了予定だった年次会合は、なんと翌日の朝3時頃まで続いたのです。

白熱した年次会合、管理ルールは強化されたの?

 【写真3】巻き網で引き上げられたカツオ

特に最後までもつれたのは、巻き網漁で使用するFADsと呼ばれる人工的に魚をおびき寄せる装置に関する管理ルールです。FADsの使用に関するルールは、漁獲する魚の量に直接影響を及ぼすので、各国それぞれの思惑とともに自国に有利になるように交渉しルールを決めたいと必死でした。

【写真4】インドネシア漁船による一本釣り
結局、2018年のみの暫定的な管理ルールとしてFADsに関しては下記のように決まり、来年の年次会合でもう一度、話し合うという事で落ち着きました。

  • 委員会が管轄する海域の北緯20度と南緯20度の間に位置するすべての排他的経済水域(EEZ)と公海において3ヵ月間(7-9月)FADsの使用禁止
  • 上記に加え、公海では更に2ヵ月間(4-5月か11-12月のどちらかの2ヵ月間)、FADsの使用禁止

2017年と比べると緩和されてしまった今回のルール。でも、もっと緩くなってしまう可能性が最後の最後まであったことを考えると、少し胸を撫でおろす結果となりました。ですが、どのマグロの資源も豊富なレベルまで回復しているわけではないのです。ここで予防策をとり資源回復に努め、持続可能な漁業を根付かせるという観念は残念ながらないようでした。

【写真5】太平洋に浮かぶ人工集魚装置(FADs)

太平洋クロマグロの管理ルールはどうなった?

こちらは、良くも悪くも、北小委員会で決まった内容が(詳細はこちら)、無事そのまま採択されました。ですが、日本の漁獲状況をみると定置網漁に充てがわれた四半期の枠を超えていたり、年間を通しても漁獲枠を超えてしまう可能性が高いです。

日本は国際会議で決まったルールを守れるのか、それとも2年連続で漁獲枠を超えてしまうのか。今年の北小委員会で決まった長期回復目標の採択は、初期資源の2.6%しか残っていない太平洋クロマグロを回復させるための最低限の取り組みでしかありません。各国が漁獲枠を超過してしまう事は、この最低限の資源回復の目標達成をも脅かすことになりかねません。

【写真6】太平洋クロマグロ
太平洋クロマグロの資源回復を確実にしていくため、グリーンピースは、米民間助成団体のピュー・チャリタブル・トラストとWWFジャパンと一緒に、漁獲枠を超過して漁獲したマグロはその加盟国の責任で必ず返済していくこと、また、加盟国が、漁獲した量を年次報告書か委員会事務局を通し公開し、強固な電子漁獲証明制度の構築と実施を推し進めることに全力をつくしてほしいと、委員会に訴えました。

国内では太平洋クロマグロの過剰漁獲に対し規制措置を取り入れ管理強化を試みていますが、国際的信用を無くさないためにも、しっかり太平洋クロマグロの漁獲枠を守ってほしいものです。

【参考文献】
[1] キリバス籍船がキリバスのEEZに隣接する公海で漁業をするときは、これに適さない。またフィリピン籍船が公海ポケット1(P30の地図参照:https://www.greenpeace.org/static/planet4-japan-stateless/2018/12/a279c368-a279c368-wcpfc14-2017-30a-tracked-version-of-draft-measure-for-tropical-tunas-chairs-draft.pdf)で操業するときもこの限りでない。
[2] http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2017110802000179.html
[3] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171212/k10011255931000.html

 

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