東京都港区で、草の根の活動が大きな変化を生み出そうとしています!有志メンバーによる「ゼロエミッション港を目指す会」の働きかけで、港区議会の委員会が2050年までにCO2の排出を実質ゼロ=ゼロエミッションにすることをめざす請願を採択しました!(12月4日更新:港区議会本会議でも、採択されました!)

多くの企業のオフィスを構える高層ビルやテレビ局、東京タワーや数々の美術館などが集まり、都内で最も温室効果ガスを出す区である港区がゼロエミッションをめざすことは、東京都全体にも大きな影響を与えることが期待できます。

どうしてこのような変化を起こすことができたのでしょうか?中心メンバーの一人である、江澤孝太朗さんにお話を伺いました。

自分の街の気候変動対策を進めたい

「ゼロエミッション港を目指す会」に参加しているのは、僕のように港区で仕事をしている人や、港区に住んでいる人です。

僕たちの目的は、草の根で自分たちの街の気候変動対策を加速させて、温室効果ガスの排出ゼロをめざすこと。そして、ボトムアップで都や国レベルでも温室効果ガスゼロに貢献することです。

区議員ほぼ全員に情報提供したり、区民としての思いを伝えたりする努力の甲斐もあって、港区は、2050年までに区のCO2排出を実質ゼロにすることを目指すと決め、そして、2030年までにCO2排出を2013年比で52%削減する目標に向けて議論を始めました。

港区の気候変動対策を加速させる基盤になると期待しています。

活動開始から3カ月で区がゼロエミッションを採択

「ゼロエミッション港を目指す会」が立ち上がったのは、今年の9月です。

Facebookグループやslackなどでオンラインで繋がって、定期的なチェックインやミーティングを行って連携し、さまざまなアプローチで活動をしています。

港区の環境課に区の気候変動対策についてヒアリングしたり、区議会議員に、世界や他の自治体の動きについて情報提供をしたり、風力発電所へ区議会議員と一緒に見学に行ったりしてきました。

風力発電所見学を企画し、SDGreenEnergy社を議員と視察した。(グリーンピース・スタッフ撮影)

そして、2050年までに区のCO2排出を実質ゼロにする=ゼロカーボンシティ宣言をすること、2030年までにCO2の排出を2013年比で52%削減し、具体的な施策を進めることを求める2つの請願書*を出しました。

請願書が採択された港区の文教委員会の様子(ゼロエミッション港を目指す会撮影)

*2030年までにCO2を52%削減する請願は、採択されずに、継続審議となりました。

社会の見方の解像度が上がっていく

僕たちの活動は、誰かがはじめに計画していたわけではありません。

チームで話し合って、メンバーがいま自分たちに何ができそうかアイデアを持ち寄って、それぞれの時間の許す範囲で協力し合って、進めてきました。

僕も最初は、自治体レベルでどうやって意思決定がされているのかもわからなかったし、自分がどう動くべきかもイメージが湧きませんでしたが、今では、港区での意思決定にどういう人が関わって、どんなプロセスで、どんなタイミングで決められるのか、わかるようになってきました。

活動を続けることで、社会の見方の解像度が上がっていくような感覚です。そうすると、自分がどこでどんなことをすればいいか見えてくるんです。

仕事とは別軸で環境問題にアプローチしてみたかった

もともと気候変動には関心があり、危機感を持っていました。

仕事では、地球にとっていいことをビジネスで挑戦したくて、森と共存して生態系の力を借りる”アグロフォレストリ”で作った、フェアトレードのチョコレートをつくって販売しています。チョコレートというおいしいものを通して、環境のメッセージをお客さんに伝えられるのは、僕の強みの一つだと思っています。

でも、それだけだと変らない、一番大きなところを変えないと間に合わない、という気持ちが大きくなってきました。

そんな時に、ボランティアとして参加しているグリーンピースの呼びかけで始めたのが、「ゼロエミッション東京を実現する会」でした。

尊敬できる仲間と自分たちの街で変化を起こせる

チームをリードしてくれる人がいたり、入ったばっかりだけどたくさん勉強して自分で議員に電話するなどチャレンジしている人がいたり、新しいメンバーが話について来れるようにうまく場をまとめてくれる人がいたり、チームは、とても熱くて尊敬できる人が揃っています。

そんな仲間と、自分たちが暮らしている街で、草の根で活動するというのは、まさに僕がやりたいと思っていた活動でした。

署名やデモも確かにとても大切ですが、変わる実感を持てる活動をしたいと思っていたからです。

提出した請願書についての趣旨説明と質疑応答を終え、請願書が正式に委員会採択された後、ホッと一息つく「ゼロエミッション港を目指す会」のメンバー。右が江澤さん。

区は都へ、都は国へつながっていく

僕は、気候変動を止めたいと思っている人は全員、「ゼロエミッション東京を実現する会」のようなローカルの活動に参加したほうがいい!と思っています。

菅首相が2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指すと発表したいまこそ、各自治体で「ゼロエミッション」に向けて動くように働きかけるべきだと思います。

区で活動していて面白いのは、議員や区から、ちゃんとフィードバックをもらえるということです。区政は規模も小さいので、一人ひとりの区民や有権者からの声により耳をかたむけてくれるんです。

区の変化は、都に繋がっていくし、都の変化は、国の変化につながっていきます。そして最終的には、世界全体が変わっていくことにもなると思っています。

1つの地域が変わることのパワーは、とても大きいんです。

僕は、「ゼロエミッション港を目指す会」の活動は、市民が社会を作っていくという市民活動の一つのモデルケースにもなるんじゃないかと思っています。

江澤さんは港区のほか、住んでいる中野区でも活動している。写真は、中野区長と面会する「中野・ゼロエミッション2050」のメンバー。左が江澤さん。

誰かに任せるんじゃなくて、みんなで街をつくる

2050年までに温室効果ガス排出ゼロを目指すのは、気候変動を止めるためには当たり前のことなので、港区の委員会が僕たちの請願書に応えて温室効果ガス排出ゼロを採択したのも、ある意味当たり前だと思っています。僕たちは、次にできることに向かって、たんたんと進むだけです。

12月20日に行われるゼロエミッションシンポジウムでは、僕たちも港区での活動を紹介させていただきます。他にも、中野区、新宿区、調布市での草の根の活動も報告されるようです。

誰かに任せるのではなくて、みんなで考えていい街を作っていくのが、僕の理想です。自分たちの社会に興味を持って、一緒にやろうよ、と呼びかけたいと思っています。

このシンポジウムに参加して、ぜひみなさんにも始められることを、見つけて欲しいと思います。

【オンライン】ゼロエミッション東京シンポジウム

日時:12月20日(日)14:00~16:00

開催方法:オンライン開催ZOOM

詳細・お申込みはイベントページをご覧ください。