スターバックスのアメリカ本社が、使い捨てカップの削減に向けて方針を打ち出しました。プラスチックや紙の使い捨てカップから、使い捨てないリユースカップへの大転換となるのでしょうか?いまだにリユースへの転換を打ち出していない日本のスターバックスへの影響はあるのでしょうか?

使い捨ての「象徴」がなくなる日は来るのか?

ギリシャ人が15分ごとに消費する1万個の使い捨てプラスチックコーヒーカップを並べる様子(2017年7月)

使い捨ての象徴となっているコーヒーカップの削減に向け、3月15日、スターバックスコーヒーのアメリカ本社が、繰り返し使えるリユースカップを推奨する方針を打ち出しました*

スターバックスの担当者は、こう語っています。*

「(使い捨てカップは)世界中でスターバックスの象徴であり、もしこの廃棄物の象徴、使い捨てカップをリユース可能なものに置き換えることができれば、私たちは人々の意識を完全に変えることになる。そしてスターバックにおいては、(他の企業に対して)模範となり、業界全体を変えることができます」

大企業として、業界全体の変革へリーダーシップを発揮していくことを目指した意欲的な発言です。

しかし、現状97%以上のカップを使い捨てに依存しているビジネスモデル*を、どれくらい転換していくのかについては、具体的には触れられていません。現時点でわかる範囲で、今回の発表の中身を見ていきたいと思います。

肝心の内容は?

米スターバックス本社のこの発表は、2020年に発表した、2030年までに廃棄物を50%削減するという目標を含んだ「Resource Positive Future」*の達成に向けたもので、

2025年までに、リユースカップの文化的な流行(Clutural movement)を生み出すことを目指し、すべての顧客に対して、マイカップの持ち込みを推奨、もしくはお店がテイクアウト用リユースカップを提供するという内容です。

アメリカとカナダでは、2023年末までに店内での飲食やテイクアウト時だけでなく、ドライブスルー、そしてモバイルオーダー利用の際にも、顧客がタンブラーなどリユース可能なものを利用できるようにするそうです。

また、リユースカップを世界規模で広めていくために、例えば以下ようなモデルをテストしているとのことです。

・Borrow A Cup: 店側が、マイカップを持っていない顧客にリユースカップを貸し出すモデル。シンガポール、英ロンドン、東京・丸の内エリアのスターバックスなどで、すでに行われている。

・使い捨てカップを全て排除するモデル。上記のリユースカップ貸し出しモデルに加え、店内でのマグカップ利用やマイカップ持ち込みを徹底する。韓国では16店舗のスターバックスですでに展開している。

上記のモデルなどを試験的に進めるのに加え、アメリカでは、使い捨てカップへの課金やマイカップの持ち込み割引のテストを、全国的に行っていくそうです。すでにイギリスとドイツでは、使い捨てカップへの課金が行われています。

また、持ち込みを推奨する一環として、ドリンク購入前に顧客のマイカップを店内で洗浄できるスペースを、アリゾナ州立大学やオアフ(ハワイ)でトライアルしていくとのことです。

ほぼ「使い捨て」のスターバックス

毎年、世界で約70億個の使い捨てカップを排出する世界最大のコーヒーチェーン、スターバックス。

スターバックスが全世界の主要マーケットで販売する全飲料のうち、97%以上がプラスチックやプラスチック加工がされた紙などの使い捨てカップで販売されています。テイクアウトだけでなく、店内の飲料販売においてもほとんどが使い捨てカップとなっているのです。

アメリカ本社の方針では、使い捨て削減をめざす方向性が語られていることは一定の評価ができますが、実際に使い捨てから脱却できる取り組みになるかどうかは、この発表内容だけではわかりません。

先日、年間1,200億本のペットボトルを世界に流通しているコカコーラは大手ブランドとしては世界で初めて「リユース目標」を発表しました*スターバックスにも2025年や2030年までの目標を数値で発表することが求められます。

このような取り組みをいかに素早く世界中の店舗へ拡大し、現在排出されている使い捨てカップを全体として「いつまでに、どのくらい」の削減に繋げていくか、目標と共にロードマップの策定も必要です。

日本のスターバックスは?

こうした状況は日本も例外ではなく、スターバックスコーヒージャパンが販売する飲料のほとんども使い捨てカップであると考えられます。

私やグリーンピーススタッフの体験では、昨年頃から、一部の店舗では店内飲食時にマグカップを利用するかどうか尋ねられる機会が増えてきたようにも感じていますが、こうした取り組みは環境意識の高い一部の店舗パートナー(従業員)による努力に任せてしまっているようです。一部でリユースカップの実証実験などのポジティブな動きも見られますが、日本支社として「使い捨てからリユースへの転換」は具体的に打ち出せておらず、依然として使い捨てカップ依存からの脱却に向けた変化は見られません。

グリーンピース・ジャパンは、昨年から日本のスターバックスに対して使い捨てカップからの脱却を求めるキャンペーンを展開してきました。店内でも、テイクアウトでも、リユースを徹底することで使い捨てカップの大幅削減を実現してほしいというものです。

私たちが日本のスターバックスへ求めていることは、主にこの4つです*

・2025年までの使い捨てカップ大幅削減に向けた目標を発表すること

・テイクアウト用の返却式リユースカップの仕組みを全国的に導入すること

・店内でのマグカップ利用を徹底すること

・マイタンブラーの持ち込み率を大幅アップさせるために、使い捨てカップへの課金や持ち込み割引の増加を検討すること

きっかけは、スターバックスがプラスチック削減のためにプラスチックカップから紙製のカップへ全国的に移行を進めるというニュースでした*。しかし、紙カップはプラスチック加工がされ、フタはプラスチックを引き続き使用するため、従来のプラカップに比べてプラスチック使用量がゼロになるわけではありません。また、プラスチックや紙などの資源を使い捨てるシステム自体は変わりません。

返却式リユースカップの導入を求める8,000以上のサポーターの署名とともに、グリーンピースはスターバックスと対話を重ねてきました*。2021年11月より、スターバックスは、東京の丸の内エリアで返却式リユースカップの実証実験を開始していますが、全国的な展開については、まだ言及されていません。

業界のリーダーであるスターバックスが日本でリユースを大幅に拡大することで飲食業界全体だけでなく、消費財・小売業界などでもリユースを当たり前にする大きなきっかけとなると期待してます。

*フラペチーノは対象外

日本のスタバに早急に求められていること

1,500店舗以上を展開する韓国や、約4,000店舗を展開するヨーロッパ・中東アフリカ地域のスターバックスでは、本社に先駆けて、2025年までの使い捨てカップの大幅削減に向けた方針を2021年に発表しました**。韓国やヨーロッパのような大都市のスターバックスでも、返却式リユースカップの導入で、使い捨てカップを大幅削減することが可能であるということが、明らかになりました。

今回、スターバックスのアメリカ本社により、リユースカップを推奨する方向性が明確に示されたことは、日本でも使い捨てカップの大幅削減に向けて取り組む必要性がさらに高まったことも意味します。日本のスターバックスは、すでに1,700店舗を展開し、2024年までに2,000店舗に拡大することを目指しています。このままでは、スターバックスの使い捨てカップ排出は大きく減るどころか、増えてしまうのではないでしょうか。

今後、今回のスターバックスアメリカ本社の発表を受け、日本のスターバックスがどういう対応をしていくのか注視しながら、スターバックスとの対話と働きかけを続けていきます。

日本のスターバックスでも、返却式リユースカップの仕組みが導入されるように、ぜひあなたも私たちと一緒に、声を届けてください!